で、こっからさらに深みにはまる。
伯母から聞きたかった話は、母親からは聞けない話。
わかりやすく言うと、伯母と母は9歳ちがうので。
祖母階層、伯母とか母の叔父伯母階層、
の話も、より解像度高く(←最近のビジネス用語で最も反吐が出るやつ)聞けるんではないか。
という、期待期待。
*
たとえばですね。
伯母と母の決定的な違いは。
伯母には戦争の記憶があるってことで。
戦局の悪化にともなって、
田舎オブ浜松でもわりと中心に近いとこに住んでた一家は。
もっと田舎な、祖母の実家に疎開することになった。
(後年知った話だけど)
(浜松って工業地帯で軍需工場もあったから)
(空襲のターゲットにされやすかったらしいじゃん?)
(当時のことをつまびらかに知らないとしても)
(浜松発祥の企業ってけっこうあって)
(ホンダ、ヤマハ、スズキ、カワサキは有名じゃん?)
(ぜんぶなんらか、エンジン?動力?にかかわってたり)
(あとは、これも後に知ったことなんだけど)
(本土空襲がはじまってから)
(南方から発進するB29はとりあえず)
(日本本土に着いためじるしが)
(浜名湖だったらしいのね)
(東京と大阪のちょうど真ん中なので)
(B29は、そこから東に行ったり西に行ったりすればいいと)
(で、退却するときも)
(めじるしとして一度浜名湖に戻って)
(そっからサイパンなり何なりの空母に戻るって図式で)
(要するに、もし空襲であまった爆弾があったら)
(重いし、浜松市街で落としてから帰れば身軽じゃん?的な)
(そんなんわけで、浜松の中心部はやばかったらしいんだが)
(そんなんわけで、一家は中心部から疎開したわけだが)
*
祖母の実家は浜名湖からそんなに遠くない。
「庄内」ていう農村で。
祖父は兵隊に行ってて不在だったものの。
長兄と伯母と、その次の伯母で祖母の実家に疎開したと。
*
で、そこは祖母の実家だし、関係性も良好だから。
快く受け入れてくれたんだが。
ほとんど誰も知らないぐらい遠い親戚の、
ダンナさんが出征して小さい子どもをかかえた、
若い女性が飛び込んできたらしくって。
初対面であろう、そういう間柄では、
関係性を築くのはむずかしかったんであろう。
あんど、ちょっとシャイなひとでなかなか溶け込めないうちに。
どんどん孤立感を深め(抱え込ん)でったようで。
*
ある夜、当時、4歳ぐらいだった伯母が
トイレに行きたくなって、はなれの厠にいって。
(むかしの農家って、はなれの納屋にトイレがあるつくりじゃん?)
(子ども心には、夜にいちいちすげえおっかねえやつ)
伯母が用を足して戻ろうとしたら。
その若い女性とちょうど入れ替わりになって。
しかしして、翌朝。
納屋で悲しい姿になってるその女性が発見されたと。。。
そういうのは、ある意味。
時代背景とかいろいろあるから、いまの尺度では解釈しようのないこともあるんだろうが。
出征はロンのモチ、幸い、空襲にも遭ったことない(記憶がないだけかも)な少女だった伯母にとっては、それも戦争のリアル。
しかも、伯母が知ってるかぎりでも。
そういうのって「いくつかあった」んだってな。
悲しいだけでは表現しきれない出来事。
*
。。。
*
なんつっていいかわかんないが。
確実にいえるのはおれだったら、その幼時体験はすさまじすぎて、甥っ子(キクチ)には話したくねくって。
ばかりか。
記憶の底に封じ込めて、思い出さないようにして。
確実に墓場まで持ってくな。
ってことで。
*
そういうのをコウ。
話せちゃう伯母って。
いままでどんな修羅場をくぐりぬけてきたんだろう?
このエピソードすら、薄めて話してるかもしんないとか。
ほかにもっと悲しい、ガチで話せないことがあるのかもなとか。
「そういうことはいくつかあった」って
当時といまじゃ価値観とかいろいろ違うにしても。
やっぱり異常すぎることであるのは間違いないし。
そんなん経験を幼いときにしたら。
こういう言い方は適切じゃないかもだが。
以後の人生に何が起きても、たいがいラクショーだろうな。
*
。。。
*
戦争の話はつらすぎるし、
実はもう少し訊いたけど措く。
ちょっと、ヒトサマにさらすにはギリアウトな話だろうし。
あと、(伯母が知ってれば)
どうしても訊いておきたいことがあったし。
*
それは、祖母の弟の話である。
伝説的には冠婚葬祭でたびたび話に出てくる夭逝した大伯父なんだが。
母はリアルタイムではあまり知らない。
ここから「タキシタヒストリー」のはずなのに。
祖母の実家「イシヅカヒストリー」に転訛?転化?してゆく。
してゆくづら。