「(一般推薦)と、いうことで」
という担任の先生の言葉から始まった11月の三者面談は、空気が最初から激重だった。
○○大学の推薦入試を間近に控え。
手順を追うだけの事務作業、的な。
「先日、推薦でと申し出があったとおりです」
「親御さんとしてもそれでいいんですよね?」
「はい」
「1次の学科は倍率が高いですが、もし通ったら」
「まあたぶん、通るとおもうんですが」
「2次の面接対策は」
「ちょうどおととい、ぼくと模擬面接をやりましたし」
「2次の前にもう一度、進路主任と模擬面接をやっておきます」
「お願いします!」
「親御さんからなにか、疑問点やお話ししたいことはありますか?」
「ありません」
「ありません」
「わかりました」
すっげえビミョーな空気だ。
*
その「すっげえビミョーな空気」ってのは。
なんつうか、学校的なつごうじゃなく。
担任の先生の、ムスメっこに対するいろんな想いが伝わってくるような感じでちょっとつらかった。
こちとらとしても。
ムスメっこが積極的にえらんだ道で。
あまつさえ、それによってムスメっこ自身が生き返ったっていうか、目の光をふたたび宿せた的なことがあるから、それ以上は親の意見を差し挟むことはでけない。
「でけない」っていうか。
それはムスメっこの意思とは異なる、親がこうあってほしいムスメっこの押しつけにしかならないから、総トータルに超絶ムダでしかない。
しっかし。
進路っていうそもそもすげえ希望に満ちた話なのに、何で空気がこんなに重たくなんなくちゃいけないんだろうな? とか考えちゃったりしてね。
*
とはいえ、出願が決まれば事実上決定な指定校とは違って。
あくまで「受験します」ってだけの一般推薦だ。
倍率もそれなりだし、受ける人は当然そこを第一志望にしてる人が集結するわけだから甘いもんではない。
*
とまあ、それは名目上のことで。
ムスメっこが提出する学校の書類。評定は5.0だし。
学力的にも、本番は水物だし何が起きるかはわからないとはいえ、やらかすことはちょっと考えづらい。
「あああ、きょうマジでこのままベルトコンベア式に決まっちゃうのかなあ」
って、事務的手続き的な話を聴きながら、おもった。
夏休み前の「ホーネッツやパルーカスもイケるよ! トライデンツも視野に入れてもいいかもね!」がキョライし、むなしく脳内に響く。
*
そのまま、三者面談はすんなり終わろうとしていた。
「では最後に、親御さんからご質問などありましたら?」
「ありません」
そうとしか言いようがないじゃねーか。
「わかりました。1次試験がんばろうな」
*
「いろいろご面倒おかけしましたが、今後ともぜひひとつ!」
ご挨拶して、腰を浮かそうとすると。
「いちおう、○○大学の一次が終わった後も勉強つづけとけよ!」
「もし。もし万が一ですが」
「推薦試験がおもうようにいかなかったら」
「すぐいっしょにユニコーンズの一般対策はじめような!」
担任の先生が立場上できる、最大限の意思表示。
あじてーしょん?
想いはよおくわかった。
(おれとおんなじだ)
この先生に2年間お世話になれて、ほんとうによかったとおもった。
*
逆にそこで、キクチはちょっと吹っ切れてこうなれた(↓)。
あと1回だけつづく。