朝起きたら、何の前触れもなくチャリの前輪がパンクしておった。
夏季は暑いので。
超絶豪邸から超絶地元駅まで1.5kあるいたら、もうその時点で汗だくになっちゃうので。
「チャリが使えない」ということは死活問題である。
デッド・オア・デッド。
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きょうはクソ珍しく在宅勤務にした日で。
唯一のタスクが午後に「たぶん不毛に帰結するであろうオンライン会議」だけだったので。
いろいろ詰め込んでみた。
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っていう各々はクソどうでもいいとしても。
なんだか内なるキクチが盛り上がっちゃって。
ホームセンターの開店と同時に駆け込み。
「チャリパンク修理キット」を買い込み。
前輪を解決して、あわよくばジョギングし、午後の会議を迎えようという源氏物語絵巻。
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けっきょく。
図工2だったてめえではパンクの修理は手に負えなくてw
(「ホイールからタイヤを外してチューブを取り出す」って時点で1時間以上かかって)
それから、「穴を見つける→補修する→チューブをタイヤの内側に戻す」ってのはムリゲーだなと悟り、10何年もお世話になってる地元の自転車屋に駆け込んだ。
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いかにもむかしながらの自転車屋さん
みたいなそのお店は。
キクチが飛び込んだとき、ご主人が不在で。
でいて、その奥さんがものすんげえ手つきでキクチの自転車の前輪を直してゆく。
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。。。
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キクチが図工2なくせにホームセンターでキットを買って、じぶんで何とかしてみようっておもったのは2つの理由がある。
1つは、自転車屋さん。
トラブルが起きたときにはいつも家族ぐるみでお世話になってるんだが。
親世代ぐらいの夫婦でいつまでも寄りかかってはいられないので、近未来にその自転車屋さんがなくなってもてめえでどうにかできるようにしとこうということ。
もう1つは。
そういう、じぶんが最も苦手なことをそこそこできるようにすれば、新たな地平が拓けるんじゃないかっていう下心満載。
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そしてそんな安い下心は瞬時に打ち砕かれたわけですが。
そんでもって、「技術を盗もう」っていう下心を携え、自転車屋さんに駆け込み、その一挙一動をガン見してたわけですが。
「どうやってチューブを取り出す?」
「取り出したチューブから破損箇所を見つけ出す?」
的な。
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で。
奥さんのお手並みが職人そのもので見惚れつつ。
どういう手順でやるんだろう?とか。
ここの手並みがコツなのね!
ってのをガン見してたんだが。
いつの間にか。
お手並みに見惚れる100になっちった。
(もうそれがね)
(ふだんはご主人が前面に立ってて)
(奥さんはサポート的な立場なんだけど)
(門前の小僧うんたらってレベルじゃないのよ!)
職人のお手前、すげえな!
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工事?修理?の終わりごろに旦那さんが帰ってきた。
そうすっと、奥さんは一歩引いて。
そこまでつないでた?バトンを渡す。
全とっかえしたタイヤと、
その内側に仕込んだチューブを。
車輪をコウ回しながら、片目で凝視してるご主人。
「ここまでうまくできたとはおもうんだけどね」
ちょっと不安そうに、ご主人のチェックを眺める奥さん。
「うん、問題ない!」
外した前輪を、チャリに嵌め込む。
胴体?からつながってる鉄筋?と、
前輪から支える鉄筋?を、
いい具合に車輪の中央で接続する。
車輪の中央で接続しながら、
車輪のカバーとか前輪のこっち側にある骨組みとか、
ライトとかブレーキとのバランスを確認しつつ、
キュッキュって手際よくネジ?ボルト?を締めてく。
そうするご主人を、
過不足なく、奥さんがフォローする。
たとえば、持ち上げるべきとこでいいタイミングでチャリを持ち上げたり。
かたむけたり。
クドいくらいに平衡を確認す。
錆びやすいところに油を打ったり。
ブレーキのききぐあいを確認したり。
ほかにどこか変なとこがないか確かめたり。
今回は関係ねえ後輪のタイヤのぐあいをみたり。
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奥さんの挙動にフォーカスしがちになっちったが。
そういう、ザ・職人的なことにたまらなくあこがれねえ?
この道一本でやってたからこそ、的な。
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いや、よしんば。
奥さんはたまたまチャリンコ屋さんに嫁にきただけかもしんないが。
50年くらい門前の小僧してて。
職人はだしの技術が身についてるわけですよ。
こまけえ微妙なとこわかんないけど。
いろんな手際は見事なわけなんすよ。
それをもってキクチは、
「おれはやっぱ職人になりてえ!」
つおくおもった。
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50手前のおじいさんが何言ってんの?
かもしれない。
が、それを見て。
「職人かっけえ!」「職人になりてえ!」
心底おもった。
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。。。
*
いや、キクチごときでも。
いまの仕事で身につけてきたことは(たぶん)山ほどある。
どちらかというと専門職?なので。
そのノウハウも技術もある程度はわかってるつもりだ。
そんなことはやんないケド、仮に「シロートにカマしてドヤす」
的なことを仕事を通して見せつける?としたら。
どうやったら「いかにもなモノホンっぽさ」を演出できるか。
ってのも、何となくわかってる。
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ただ、たぶんじぶんは指向として。
本来的に「マエストロ」になりたいんだろうね。
みんなと調和することが重要な仕事ながら。
そこでどうじぶんの職能を活かせるか、みたいな。
言ってることわかりづれえ?
職人として、ここからこっちは指一本触れさせねえ。
的な、確固たる技術も理論ももった存在。
そういう矜持をもてる技術と理論と存在。
言ってることわかりづれえ?
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なので。
「おれはあの自転車屋さんの奥さんみてえになりてえ!」おもったし。
「自転車屋さんの旦那さんみてえになりてえ!」おもった。
「おれは職人をめざしてきたけどまだまだだな」ともおもった。
なんというか。それにはまだまだ。
見てきた現場の数とか、人の想いの数とか。
なにより、じぶんはコウしたい!
みたいなことが、ぜんぜん足りない。
いままでじぶんなりに精一杯がんばってきたつもりだったけど、もう、ぜんぜん足りないって気づいちゃった。
「職人」ってすげえな。
キクチはちゃんとした職人になりてえな。
ちゃんとしたホンモノになりてえな。
ってことを、ものすげえおもう。
ぽえむ。
道のりはまだまだぜんぜんある。