何にも言わない。っていうハナシ。
日曜。
午後、にょうぼうが用事あるってんで
ムスメと2人でサイクリングをした。
*
最初は父親の墓に行こうとおもったが
「坂を上るのはやだ」ってツルの一声で、却下。
多摩川沿いの平地にあるわが家。
坂しばりをくらった日にゃ同時に
北(成城・用賀)にも南(多摩丘陵)にも行けねえ。
*
そんなわけで
「多摩川の下流のほうへ」というざっくりとした指針だけ示す。
「朝、多摩川ジョギングしたのに、また多摩川?」
なんてギモン、じぶんがじぶんに抱いた時点で、負けだ!
ともあれ、にょうぼう抜きのムスメとのランデブー。
すげえwktk(ワクテカって読む)した。
そのwktkは「にょうぼう抜きにwktk」なのか
「ムスメがまだオレとサイクリングしてくれることに、wktk」なのかは、知らん。
世間には深く考えるひつようねえ、そりゃ野暮ってもんだってことが、ある。
藪の中なまんま、でいい。
*
だいいち、前日からムスメがwktkしてたので
にょうぼうにも筒抜けだ。
すくなくとも「秘めごと」、ではない。
*
きのうは、暑かった。
きょうも暑かったが、きのうもそれなりに、暑かった。
そこで「道すがら、スーパーを見つけたら寄って涼んでアイスを食う」
ということを、サイクリングの目的のひとつにした。
ムスメのチャリは、おれのチャリのすぐあとをついてくる。
無邪気に。
おれが恐るべき陰謀を抱いてるなんてゆめゆめ、知るよしもなく。
*
自宅を出て、多摩川の橋を渡り、登戸から川崎側へ。
そこから予告どおり、多摩川を下流へと進む。
多摩川といっても、サイクリングコースを走るわけでは、ない。
川に何となく沿った一般道を走る。
川沿いの道にはスーパーがない。
それじゃ、永遠に涼めないでしょ、アイス食えないでしょ、ゆえ。
5kmホド進むうちスーパーを2、3軒見つけ
涼み、さらに下流方向へと、進む。
*
おれは、中1の夏まで、川崎の久地というところに住んでた。
多摩川をジョグするひとなら、だいたいわかるとおもうが。
「二子橋からちょっと上流に行くと、支流との合流があるでしょ。駒大のちょうど、対岸ぐらい。支流は平瀬川ってんだけどね。で、そこらへんからゴルフの打ちっぱなしのミドリなネットが見えるじゃん」
ゴルフの練習場から歩いて30秒ぐらいのとこに、住んでた。
*
そうなんである。
じぶんが生まれ育ったとこらへんを訪ねる。
というのが、きのうのおれの陰謀。
フッフッフ。
*
引っ越してからもう、四半世紀以上、経つ。
以来、ほとんど訪れたことは、ない。
風の噂で、住んでいた借家はとっくに壊されたが
隣近所の風景は、ほぼ変わってないという。
それだけでも、おれはチョーwktkだ。
そんなおれにとってはwktkな場所。
テッカテカな場所。
なんだが、たぶんムスメにとっては
マチガイなく、どーーっでもいい。
おれが
「ここがパパが子どものころ住んでたとこ」だの
「この床屋でいつも髪を切ってた」だの
胸を熱くすればするほど、ムスメは引いてくだろう。
たとえ反抗期前で、まだパパーって喜んでついてくるムスメで、さえ。
*
ということで、ムスメには何も言わない。
おれの、かんぜんなる、秘めごと。
とする。
ことにした。
*
当初、生家の近所を歩きまわろうとおもい
向かってったものの。
数100m手前で、パッとひらめいた。
「そうだ、小学校のときの通学路をたどってみよう」と。
急なおもいつき。
トーシローにゃぜったいわからない、ショートカットの小道に入る。
「えー、ここ曲がんのー? パパ、道、わかってんのー?」
ムスメがいぶかしむ。
「いや、ちょっとこっちのほう、行ってみようとおもってさあ」
ココを抜けて、通りに出れば、
子どものころ、魚屋だの八百屋だの、肉屋だの花屋だのが密集してた一角に出る。
たしかスーパーもあったので、ムスメへのアリバイもなりたつ。
完全犯罪、だ。
フッフッフ。
*
おれがさんざん子どものころ歩きまわった路地は
舗装されてたり建物が「ナウ」くなってたり
畑がなくなってたりしてたが、ルートはそのまま。
いいぞキクチ。いいぞいいぞ。
カンペキな道をたどり、みせやの密集地点に出る。
が、魚屋はかろうじて看板はあったものの
八百屋も肉屋も花屋も、ない。
スーパーだったところは、不動産屋の事務所になってた。
「あれ、おかしいなあ」
とひとりごちながら、道を進んで国道246に出る。
*
冒頭の写真は、小学校のころまいんち渡ってた歩道橋。
国道246を横浜から東京方面に進むと、
府中街道との立体交差がある。
そのたもとの歩道橋。
ほぼ、当時のまんま。
もし、モノ好きなひとがいたらのために。
この歩道橋がらみのエピソードをどうぞ!
酔っぱらってツイートしたtwilogのコノページにある。
去年の12月15日。
コレ(↓)以下の連投。
キクチヒロシ@kikuchiroshiプシュ、しながら、初恋のエピソードなぞ。40がらみのオッサンのそんなもん、キョーミねえだろうし、どーでもいーだろーし、汚らしいかもしんないが、つづける。
2013/12/15 00:09:07
*
歩道橋のちょい先に
四半世紀前にはなかったスーパーができてる。
うおお。
さすがに疑り深くなりはじめたムスメに
これでやっと帳尻、合わせられるぞ。
パピコを買い、はんぶんずつ、食べる。
*
パピコを食い終わり、歩道橋を渡って
高津小学校まで向かう。
かつてさんざん通った抜け道を駆使して。
高津小学校は何年も前に校舎を建て直し
おれが通ってたころのおもかげはもう、ビタ一文ない。
知ってた。
それでも、いい。
小学校を、ムスメに気取られないようにクールに通過し、こんどは二子橋へと向かう。
おれがちょうどムスメぐらいの齢のころ
さんざん通った抜け道を駆使して。
「えー、ここ曲がんのー? パパ、道、わかってんのー?」
「こっちのほうが近そうじゃん、何となくだけど」
(いやいや、わかってますって!)
抜け道にガンガン入ってく。
通ってたソロバン塾も、
同級生がいっぱい住んでた運送会社の社宅も
もうない。
ちょっと寂しい気もするケド
それでも、いいのだ。
*
帰宅して。にょうぼうがムスメに訊く。
「ななちゃん、サイクリング、楽しかった?」
「パパ、こっち行ってみようってヘンな道ばっか入ってくんだもーん。楽しかったー」
コーフンして、疲れたらしい。
いつも23時すぎまで起きてるムスメが
その夜はあっという間に寝ちゃった。
よかったよかった。
*
だがな。ムスメ。
てめえの100倍、楽しませてもらったぞ。
もちろん、ムスメとサイクリングしたことじたい、おれは一生忘れないだろう。
ただもひとつ、とびっきりおもしろいことがあったぜ。ナイショ、だがな。
おれ、チョー、wktkしたぞ。
フッフッフ。