おしごとが終わって
おうちまでジョグしてるとき。
「ぬーん(股関節痛い)」が金切り声あげた。
「もう、ムリムリムリムリムリ!」
環七と国道246の交叉点。
超絶豪邸までは、まだ9k弱ある。
*
「ぬーん」とは相変わらずマブダチだが
ゆっくりなら、走れなくはない。
何度も走って熟知してるコース。
「これから、おうちに着くまでに
あすことあすことあすこを通るのかあ」
想像しただけで、ぬーんが再度主張する。
「もう、ムリムリムリムリムリ!」
*
とりあえず、いつものコースをやめ。
国道246沿いに進むことにした。
とりあえず進んでみて
ほんとうにムリッポだったら
246の地下を走る田園都市線に乗っちゃえばいい。
という保険をかけて。
*
しかしして。
350m進んだところで駅。
「ほんとうにムリッポ」ハズ・カム!
ムリッポの降臨、早すぎw
*
地下鉄の入口。
交叉点のガードレールに腰掛けながら
どうしたものか、考える。
「考える」ったって、アレだ。
電車に乗る気は100。
なぜなら、おうちまでのジョグの目的。
きょうのぶんのお百度は、
だいぶ手前に果てしてるゆえ。
*
電車に乗る気100
ってのに、もはや揺るぎはないんだが
じゃっかんのもんだいがある。
Tシャツが汗でべちゃべちゃすぎ。
いくら夜とはいえ。ここまで
梅雨の晴れ間に14k走ってきたのだ。
*
ヒトサマのブログを拝見してると
「通勤で途中まで走って、
残りは公共交通機関つかっちゃう」
的な記述は、わりとよく見かける。
ありふれた風景。
なんだが、おれには未体験ゾーン。
正確にいうと。
むかし腸脛靭帯炎になったとき
「走って痛くなったらすぐやめて電車乗る」
を織り込み済みでカマしたことはある。
が、それは
着替えなりデオドラントシートなり
ハナから電車に乗る準備をして臨んだんだし
そもそも真冬だから、そんなに汗かかない。
ので、参考にならない。
*
今回はアウトオブ計算外。
着替えはないし、
タオルもここまでそれなりに汗拭いて
それなりにべちゃべちゃ。
Tシャツは上記のとおり、べちゃべちゃ。
*
交叉点のガードレールに腰掛けてたら
いい感じでそよ風が吹いてるので
しばらく「この風でシャツ乾け」
の念力とともに、佇む。
が、そよ風が気持ちよすぎて
シャツが乾きもしねえうちに
汗冷えがさむくなってきた。
とりあえず、地下鉄のホームにいってみる。
そこならあるていど暖かいし
よしんば汗が乾くまで待っててもいい。
ただ、新たな強敵。
オイニー。
45のじじいの汗は
45のじじいなりの加齢臭がある。
*
あまつさえ、ホームに佇んでて
その駅を通過する急行電車。
の窓に映った45のじじい。
短え半ズボンじゃねーか!
あまつさえあまつさえ。
シャツがびちゃびちゃの副産物。
「胸の心拍計ベルト、透けまくり」
心拍ベルトって。
走ってるひとにとっては
なんの変哲もない風景だけど。
大多数の走ってないひとにとっては
まったく未知のもので。
「ブラジャー着用的な趣向を携えた
だいぶ風変わりなおじさん」
ってことになっちまう。
*
汗べちゃべちゃ、オイニー、半ズボン、透けブラ(45歳・男性・会社員)
たった数駅とはいえ
電車に乗るには、障壁が多すぎる。
ブログでたびたび見かけるヒトサマがた。
いったいどんだけの強心臓でもって
電車ワープをカマしてんだぜ?
*
。。。
*
けっきょく開き直って
最初に来た電車に飛び乗る。
言っても、ここって東京砂漠じゃないすか。
よっぽどパンチの効いたひとじゃなきゃ
電車に乗ってるひとたちって
周りなんかにゃ、だいたい無関心なんっすよ。
ってのに、心を落ち着かせようとする。
○汗でびちゃびちゃ
○加齢臭バリバリ
○半ズボン
○じじい
大したパンチじゃねえよな?
(おれが電車乗っててこんなのきたら、
ふつうに二度見はするな)
それなりのハードパンチぇ?
*
。。。
*
そんなこんなにドギマギしつつも。
乗ったら乗ったで開き直り、
数分、地蔵になってりゃいい。
キョライす。
「地蔵ってなんだ?」
「どうすりゃ地蔵になれるんだ?」
「窓に映ってる地蔵、違和感すぎるぞ?」
*
ってのにも慣れてきて。
「ちょっとオイシイ」すらおもえて。
「せっかくだから写真とっとこう」
と、おもったときには、すでに遅し。
降車駅に着く直前で。
ホームが明るすぎるから
ガラスに映るおれなんか映ってなくて。
なんなら「東京個別指導学院の広告に
興味しんしんで写メしちゃった」
ぐらいのことになってるよ。
そういう、ワープほろ苦デビュー。