ヒロシは激怒した。必ず、かの邪智暴虐の全裸を除かなければならぬと決意した。ヒロシには政治がわからぬ。ヒロシは、「村」の牧人である。ホラを吹き、チャンネーと遊んで暮して来た。けれども邪悪に対しては、人一倍に敏感であった。きょう朝7時、ヒロシは「村」を出発し、野を越え山越え、十里はなれた此の大手町の市にやって来た。ヒロシには父も、母も無い。女房も無い。電車もそれほど走って無え。東京に出たなら銭こあ貯めて東京でベコ買うだ。内気なフカキョンと二人暮ししてえ!(太宰おさむちゃん『走れヒロシ』より)なにパクッてんだよ。っていうね。
*
きょうは、ランステってやつを使ってやろうとおもった。
これでもくらいやがれって、ぐらい。
ぼっち練が皇居でおこなわれるとき。
いままでおれは、
仕事場で着替え、荷物を置き、
ジョグをして集合場所の和気清麻呂像へ向かっていた。
半蔵門の交叉点に出て
皇居を3/5周ぐらい。
だいたい20分。
*
きょうは、生まれてはじめて
ランステってやつを使おうとおもいたった。
よくわかんねえケド、
皇居を走るひとって、収入高いらしいじゃん。
あまねく。
おれを除いて。
「ひとりを除いて、みーんなおんなじ答え!」
「ガーン!」
って、クイズダービーの篠沢教授かよってぐらい。
そんな年収3京円ぽっちの超絶ビンボーが
ランステなんていう
めくるめくシャングリラに挑む。
ってだけの話。
*
ランステは神田と大手町の
まんなからへんに、ある。
おれは職場から半蔵門線に乗り、
3駅先の大手町に向かった。
大手町まで10分、
大手町からランステまで10分、
ランステからキヨマロまで10分。
ちょっと余裕を見て40分前に出れば
間に合うはずだ。
*
とーこーろーがっ。
なんである。
電車に乗ったしゅんかん
「大手町ったって、どこの出口に出りゃいいんだよ?」
の神が降臨セリ。
会社四季報と並ぶ
年鑑定期刊行物のベストセラーでおなじみの
『おれのニガテなものランキング2014』
によると。
1位 キッチリしてるチャンネー
2位 大手町の構内ラビリンス
3位 キウイ
と、ある。
あ、「四季」報ってぐらいだから
年鑑じゃねえよな。は、措く。
*
ひと言で「大手町」ったって。
地下鉄が4本も走ってる。
東陽町に行く用事があって。
「大手町から東西線に乗り換えりゃいいのね」
って余裕の構えを見せてたら
乗り換えで迷いまくり、
アポの時間に遅れ
こっぴどく叱られたことが、ある。
丸の内の企業に行く予定があって。
「大手町なんか3駅だから」
って余裕の構えを見せてたら
あさっての方向に降り、
目指す出口まで10分以上かかり
アポの時間に遅れ、
メンバー総白い目を喰らったことも、ある。
おれは、にわかに、パニクった。
あそこあ、ラビリンスだ。
迷宮組曲だ。
*
皇居でボッチ練をするとき
帰りは電車で仕事場に寄り、荷物を取る。
ただ、テキトーに見つけた地下鉄の入口に
凸乳もとい突入するだけ。
構内に入っても「半蔵門線○○m」
って標識にしたがうだけなので。
地理的な位置だとか何番出口だとかは
一切わからねえ。
だいたい、半蔵門線。
テキトーに後ろのほうに乗っちまったが
いつも、帰りはどっちだったか
おぼえてねえ。
大手町ってやつあ。
まあ、乗り換えって大手町にかぎらずだケド
電車のどこらへんに乗るかで
下車→徒歩→目的地
にかかる時間がぜんぜん違ってくる。
じゃん。
*
おれは、パニクった。
というか、こまった。
こまったこまったこまどり姉妹
なんて言ってる場合じゃないくらい。
改札にある地図を見たってさっぱりわからん。
ので、とりあえず地上に出ることにした。
地上に出りゃ、見覚えのある景色
なんかにぶち当たって
「あ、ココね」って手がかりに
ぶじ、ランクラ到着ってなるかも。
いや、なるに、違いない。
なるはずだ。
なってくれ! とばかりに。
*
そんなおれさまちゃんの願いもむなしく。
テキトーに出た地上の風景は
ビル、ビル、ビルディング、ビル。
どっちを見たって、個性のかけらもない
コンクリートの塊がおっ立ってるだけだ。
おれ、終わった。。。
マジ、ボッチだ。
進退きわまる、ボッチだ。
コンクリ群のはるか先に、皇居が見える。
きょうのおれの最終目的地は、あすこ。
だが、いまのおれの夢は、ランクラに到着すること。
皇居って夢は、遥かなる、すぎる。
*
いやね。
いま、冷静になって考えりゃ。
一度、皇居に出て、
見覚えのある風景とやらを見つけたほうが
コンクリジャングルをさまようより
てっとり早くね。なんだが。
パニクリパニクラに、そんな正論
通用しねえ。
絶賛パニクリ中。全おれ大号泣。
おめえ、スマホもってんだろ。
地図アプリってあんだろ。
それで検索すりゃ、イッパツじゃね。
逆転イッパツマンじゃね。なんだが。
パニクリパニクラに、そんな正論
通用しねえ。
*
あそこを曲がれば、何か手がかりあるかも。
めくらめっぽうに、角をみつけりゃ、曲がる。
読売新聞社がある。
箱根駅伝のスタート・ゴール。
「絆」って書いてあってランナーがゴールする
銅像が立ってる。
あ、これがあの!
なんだが、おれは読売新聞社なんか
初お目見えだ。
大手町にあるとは知ってたが
それが大手町のどのへんにあって
どこをどう行きゃランクラに通じる
なんて、わかんねえ。
「絆って言ってりゃ、いいってもんじゃねえぞ」
銅像に八つ当たりしながら、歩を進める。
たどりつけるかすらわからない、歩を。
*
ここらへん、あれね。
写真とか撮っときゃ、おもしろいのにね。
1枚も繰り出されないってことは、
それはアレよ、「コレ、ブログ的にオイシイ」
とおもえる余裕すらなかった。
ってことよ。
*
困り果ててつぶやいちゃってんのね。
キクチヒロシ@kikuchiroshiだからおめえ。大きなくくりでここが大手町。以上の細かいことがわからん。。。
2014/11/02 07:31:14
スマホ取り出してつぶやくアレがあんなら
隣にある地図アプリ開けや、っていうね。
*
そんなこんなでさまよいつづけて
なんとか見覚えのあるところにぶち当たった。
よし! コレで、おれまだ、生きれる。
あすこの角を曲がれば、ランクラ。
ってとき。
角の向こうからゴオオオって地鳴りがする。
いつもは取り込まれちゃうんじゃないかって
おそれおのののく、筋肉繊維の蠢き音。
きょうのおれには、なんだか懐かしく
でいて、なにより心強く感じられた。
ムキムキぼっち、そのひとである。
上品きわまるオクサマとトゥギャザーで
「やべえ遅刻だ」って感じで
清麻呂目指して、筋肉を動かしてた。
手に手をとりあい。
指に指をからませあいつつ。
肩に肩をもたれかかせあいつつ。
*
だいぶ、遅れちった。
ボッチどもはもう、走りだしてるんだろう。
もうおれが焦るひつようは、
ビタ一文、ねえ。
悠々と着替え、ゆっくり歩を進め、
にくらしいホド大胆不敵に、
清麻呂へ向かった。
*
んだが。
清麻呂のたもとに
およそぼっち練とはおもえない
人だかりがある。
中心に、ゼンラぼっち。
ぎょえー。
おれは、急いで来ましたってていで
気象庁前の信号をダッシュで渡る。
すげえ、なんだこの人数。
しかもなんかみんな
プロシードさんぽくなっちった。
さいきん、この辺境クソブログ
プロシードさん率、やけに高くね。
きょうの冒頭といい。
つったって、プロシードさんなんか
ぜんぜんお会いしてねえんだぜ、さいきん。
きょうだって、もちろんお会いしてねえ。
ニアミスは多いみたいケド。
きのうのぼっち練、プ=出、キ=欠
きょうのぼっち練、プ=欠、キ=出
てなぐあいで。
多摩川でニアミスし
オネカンでニアミスし
新宿でニアミスしてる。
手に手をとりあい。
指に指をからませあいつつ。
肩に肩をもたれかかせあいつつ。
*
そんなこんなで、ぼっち練
スタートすらしてねえわ、
きょうの主役、ランクラにすら
まったく触れてねえわ
なんてことは措いて、つづくっ。
※集合写真(プロシード加工なし)
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