キクチヒロシ ブログ

絶滅寸前の辺境クソブログ。妄想やあまのじゃく。じゃっかんのマラソン。

ハーレー持ってこい

中学生の全国大会がまっさかりで。
わが川崎市立稲田中学校陸上部からも
今年は2人が全中に出場してる。

ハードルと幅跳び。
いちおう遠いセンパイとして
心のなかでだが、すげえ応援してる。
勝負はあす。ガンバレッ!


そんなわけで、じぶんの中学時代のハナシ。
まあ、全中なんて目標にすらならないレベルだったので
全中のことは語れないが。

2部構成でイク。

第1部。おれの全中。
ん?



第1部 おれの全中

中1のとき。
センパイがたから
「夏休みの練習は地獄だぞお。
なかでも合宿はマジ、殺されるぞお」
と訊いていた。

おれは失禁するぐらい、おのののいてた。



ところが。
2コ上にパーフェクト超人なセンパイがいて。
アタリマエのように全中出場を決めた。

全中は、日程が、合宿と、かぶっちゃう。

そんなわけでその年、合宿は、ナシよ。
ということになり、おれの命、セーフ。
Yeah!
ビバ、他力本願寺!!!

ってだけのハナシ。



第2部 ハーレー持ってこい

中学のとき、いちばんキツイ練習は。
ペース走でもインターバルでもレペでもTTでも
ウサギ跳びでも柔軟体操(!)でもなく。

ハーレー、だった。



学校の駐輪場に停まってる
何の変哲もないエメラルドグリーン
というか薄緑、のボロいママチャリ。

顧問はそれを
「ハーレー・ダビッドソン」
と呼び、駅伝の試走で
伴走車として使ってた。



何の変哲もない放課後の練習。
1年に一度くらい、
前触れもなく顧問は

「おい、ハーレー持ってこい」

と言う。
すると、最上級生のエースは、おのののく。



顧問が「ハーレー持ってこい」と言うとき。

薄緑のボロいママチャリとともに、
よく工事現場でみるような
黒と黄色の毒ヘビみたいなロープ
が、用意される。

チャリの荷台にくくりつけれらた
毒ヘビみたいなロープ。
に、腰をくくりつけられる、エース。

「エース」のルビは「餌食ちゃん」で。

それで3000m、200mトラック15周の
タイムトライアルが執りおこなわれる。



チャリを操るのは、
「馬力のいちばんつおい陸上部員」。

脚の速さなんて関係、ない。
よくわかんないケドだいたい
砲丸投げの超絶パワーのもちぬしが指名される。

このときばかりは
餌食以外の長距離のひとが一丸となり
1周か2周ずつ、伴走する。
あまりにもいたたまれなくて。



中3のとき。
おれは「エース」だった。
ったって、長距離の最上級生、
おれしかいないんですもの。
下級生におれより速いヤツ、いたのにね。

おれと同じ学年のひとたち。

中1のはじめごろは10人ぐらいいたのに
あるやつは練習のキツさにネをあげ
あるやつはグレちゃって
あるやつはベンキョーにチカラを入れはじめ
またあるやつは股間をいじりすぎて。

なあんてことをしてるうちに
中2の夏ぐらいには、おれ1人になっちゃった。

もう、その座をおびやかされることのない
絶対的なエース。
ボッチの息吹。



そしてこの年も、いきなりその日はやってきた。

ふつうに練習しようとアップだのしてると
「おい、ハーレー持ってこい!」

毒ヘビのロープがおれの腰にゆわかれる。

その年はなぜか。
いちばん馬力のある砲丸投げじゃなく。

ベンジョンソンって
顧問にあだ名がつけられた
400mが専門のガチ脚力クンこと
ベンちゃんが、ハーレーを操ることになった。

逃げ場は、ねえ。。。



ちなみに1。
中2のときソウル五輪が開催され。

モノホンのベンジョンソンは
ドーピングで失格になった。

それまで「脚速い」の称号だった
「ベンジョンソン」あるいは「ベンちゃん」。
翌日、なんでだかわからんが
稲中のベンちゃんは顧問にののしられてた。
「おまえのせいだ」と。
昭和の運動部のリフジン。

いや、顧問。おまえのせいだろ。
どっちかっつうと。

なんてことはもちろん、言えない。



ちなみに2。ハーレー。

いくらスパイクを履いて臨むとはいえ
アンツーカー(土)の200mトラック。

にもかかわらず、
1コ上のセンパイも、2コ上のセンパイも
ハーレーでムチャクチャにひっぱられ。

全国大会の標準記録をラクラク突破する
ぐらいの速さでゴールしてた。
1コ上のセンパイなんか、
その年の全中優勝程度のタイムでゴールしてた。
ような気がする。

ストップウォッチを確認して
「おまえは、バカか!」
とゲラゲラ笑いながら瀕死の獲物に近づく、顧問。



センパイがたはもともと
県大会で入賞するぐらいの
実力のもちぬしではあったが。

じゃあ全国ねらえるか、というと
おれと同程度に遠い夢ぐらいだった。

にもかかわらず、デアル。
というハーレーの実績。
ますます、おれの逃げ場は、ねえ。。。



マカロニウエスタンで。
投げ縄に腕をからめとられ
牛裂きの刑みたいに疾駆する馬に
引きずられていく。

そんなニュアンスで、
融通の利かない一本気な熱血部長、
ベンちゃんの操るハーレーは
おれをぐいぐい引っぱってく。

同じ校庭で練習する
ほかの運動部のひとたちの視線が集まる。
「またアレ、やってるよ」
という、好奇というよりは
三条河原で公開処刑を見させられてるような
憐れみの目、目、目。



けっか、安定の
「出ました。今年も安定の全国レベルなタイム」。。。

マボロシの、そして当然非公認な
超絶自己ベストタイム。



そして。
ストップウォッチを確認。
「おまえは、バカか!」とゲラゲラ笑いながら
瀕死のおれさまちゃんに近づいてくる、顧問。。。