わが川崎市立稲田中学校陸上部からも
今年は2人が全中に出場してる。
ハードルと幅跳び。
いちおう遠いセンパイとして
心のなかでだが、すげえ応援してる。
勝負はあす。ガンバレッ!
*
そんなわけで、じぶんの中学時代のハナシ。
まあ、全中なんて目標にすらならないレベルだったので
全中のことは語れないが。
2部構成でイク。
第1部。おれの全中。
ん?
*
■第1部 おれの全中
中1のとき。
センパイがたから
「夏休みの練習は地獄だぞお。
なかでも合宿はマジ、殺されるぞお」
と訊いていた。
おれは失禁するぐらい、おのののいてた。
*
ところが。
2コ上にパーフェクト超人なセンパイがいて。
アタリマエのように全中出場を決めた。
全中は、日程が、合宿と、かぶっちゃう。
そんなわけでその年、合宿は、ナシよ。
ということになり、おれの命、セーフ。
Yeah!
ビバ、他力本願寺!!!
ってだけのハナシ。
*
■第2部 ハーレー持ってこい
中学のとき、いちばんキツイ練習は。
ペース走でもインターバルでもレペでもTTでも
ウサギ跳びでも柔軟体操(!)でもなく。
ハーレー、だった。
*
学校の駐輪場に停まってる
何の変哲もないエメラルドグリーン
というか薄緑、のボロいママチャリ。
顧問はそれを
「ハーレー・ダビッドソン」
と呼び、駅伝の試走で
伴走車として使ってた。
*
何の変哲もない放課後の練習。
1年に一度くらい、
前触れもなく顧問は
「おい、ハーレー持ってこい」
と言う。
すると、最上級生のエースは、おのののく。
*
顧問が「ハーレー持ってこい」と言うとき。
薄緑のボロいママチャリとともに、
よく工事現場でみるような
黒と黄色の毒ヘビみたいなロープ
が、用意される。
チャリの荷台にくくりつけれらた
毒ヘビみたいなロープ。
に、腰をくくりつけられる、エース。
「エース」のルビは「餌食ちゃん」で。
それで3000m、200mトラック15周の
タイムトライアルが執りおこなわれる。
*
チャリを操るのは、
「馬力のいちばんつおい陸上部員」。
脚の速さなんて関係、ない。
よくわかんないケドだいたい
砲丸投げの超絶パワーのもちぬしが指名される。
このときばかりは
餌食以外の長距離のひとが一丸となり
1周か2周ずつ、伴走する。
あまりにもいたたまれなくて。
*
中3のとき。
おれは「エース」だった。
ったって、長距離の最上級生、
おれしかいないんですもの。
下級生におれより速いヤツ、いたのにね。
おれと同じ学年のひとたち。
中1のはじめごろは10人ぐらいいたのに
あるやつは練習のキツさにネをあげ
あるやつはグレちゃって
あるやつはベンキョーにチカラを入れはじめ
またあるやつは股間をいじりすぎて。
なあんてことをしてるうちに
中2の夏ぐらいには、おれ1人になっちゃった。
もう、その座をおびやかされることのない
絶対的なエース。
ボッチの息吹。
*
そしてこの年も、いきなりその日はやってきた。
ふつうに練習しようとアップだのしてると
「おい、ハーレー持ってこい!」
毒ヘビのロープがおれの腰にゆわかれる。
その年はなぜか。
いちばん馬力のある砲丸投げじゃなく。
ベンジョンソンって
顧問にあだ名がつけられた
400mが専門のガチ脚力クンこと
ベンちゃんが、ハーレーを操ることになった。
逃げ場は、ねえ。。。
*
ちなみに1。
中2のときソウル五輪が開催され。
モノホンのベンジョンソンは
ドーピングで失格になった。
それまで「脚速い」の称号だった
「ベンジョンソン」あるいは「ベンちゃん」。
翌日、なんでだかわからんが
稲中のベンちゃんは顧問にののしられてた。
「おまえのせいだ」と。
昭和の運動部のリフジン。
いや、顧問。おまえのせいだろ。
どっちかっつうと。
なんてことはもちろん、言えない。
*
ちなみに2。ハーレー。
いくらスパイクを履いて臨むとはいえ
アンツーカー(土)の200mトラック。
にもかかわらず、
1コ上のセンパイも、2コ上のセンパイも
ハーレーでムチャクチャにひっぱられ。
全国大会の標準記録をラクラク突破する
ぐらいの速さでゴールしてた。
1コ上のセンパイなんか、
その年の全中優勝程度のタイムでゴールしてた。
ような気がする。
ストップウォッチを確認して
「おまえは、バカか!」
とゲラゲラ笑いながら瀕死の獲物に近づく、顧問。
*
センパイがたはもともと
県大会で入賞するぐらいの
実力のもちぬしではあったが。
じゃあ全国ねらえるか、というと
おれと同程度に遠い夢ぐらいだった。
にもかかわらず、デアル。
というハーレーの実績。
ますます、おれの逃げ場は、ねえ。。。
*
マカロニウエスタンで。
投げ縄に腕をからめとられ
牛裂きの刑みたいに疾駆する馬に
引きずられていく。
そんなニュアンスで、
ベンちゃんの操るハーレーは
おれをぐいぐい引っぱってく。
同じ校庭で練習する
ほかの運動部のひとたちの視線が集まる。
「またアレ、やってるよ」
という、好奇というよりは
三条河原で公開処刑を見させられてるような
憐れみの目、目、目。
*
けっか、安定の
「出ました。今年も安定の全国レベルなタイム」。。。
マボロシの、そして当然非公認な
超絶自己ベストタイム。
*
そして。
ストップウォッチを確認。
「おまえは、バカか!」とゲラゲラ笑いながら
瀕死のおれさまちゃんに近づいてくる、顧問。。。