500円貯金をやり出して、かれこれ7、8年になる。
ただ、アタシきょう気づいちゃったんです。
という、オハナシ。
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500円貯金。
正確にいうと、500円玉貯金。
買物のおつりで500円玉が手に入ると、
よけておいてこんな感じでストックする。
1ケース50枚、
弍萬伍仟圓也がいっぱいになると
小遣い口座こと、スイス銀行の
トビラ厚20cmの貸金庫(自称)に移される。
自称スイス銀行の貸金庫からは
必要に応じてお引き出しがあり、
1年のうち、
夏の家族旅行、秋の草野球合宿、
「新しいランニングシューズがほしいのねん」を
ここから拠出する。
「拠出」って言葉の意味わかんないケド
なんとなくお金っぽいので、つかっとく。
500円貯金をはじめたころは
まだゴルフにはまってて
最初に拠出したのは、ゼクシオのドライバーだった。
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「500円玉はお金にあらず!」
とにかくサイフにある500円には
いっさい手をつけない。
500円玉がケースにみるみる貯まっていく
このうえない、快感。
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快感を求めすぎた全盛期ナド、
500円以下の買物はすべて、1000円札を出して
500円玉ゲッツをもくろむ。
これがステージ1。
ステージ2。
500円以上でも800円以下なら、
たとえば会計が777円なら
1277円を出して、500円玉をせしめにゆく。
ステージ3。
合計が900円とかだと、
いらない105円のものをわざわざ足し
2000円を出して、おつりの500円玉をせしめにゆく。
ステージ4。
サイフが小銭でいっぱいになるので
それを小遣い口座に預け入れ、
あらためて1000円札を引きだし
勝ち取った1000円札を元手に、新たな500円をせしめにゆく。
スイス銀行うんぬんは、めんどくさいのでやめ。
ステージ5。
「この1000円札を500円玉2枚と交換してくれ」
にょうぼうに懇願し、シカトされる。
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こうなるともう、悪徳新興宗教のお布施みたいなもんだ。
確かに700円しか使ってないのに
小遣い口座が10000円も減ってたりする。
あれれっとおもってケースに目をやると
大量の500円玉がドヤ顔でこっちをみてる。
とか。
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そんなマインドコントロールなど
すっかり解けて
しかし、ムリのない範囲で500円貯金を続行してきた。
500円貯金は、いわばボーナス。
フトコロ痛めた感ゼロで
旅行や合宿に行けて、ランシューまで買えちゃう。
なんて、神の配剤!
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でもアタシ、きょう気づいちゃったんです。
とうとう、気づいちゃったんです。
「それって、意味なくね?」と。
神の配剤でおなじみの500円玉をつかおうと
あまった小遣い口座をつかおうと
出どころはおんなじじゃんか、と。
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500円玉貯金をつかうと確かに
ボーナストラック的なおトク感は、ある。
必要なとき以外は手をつけないので
確実にストックを持てることにも、なる。
だが、そもそも。
500円をせしめようという行為は
それじたいが消費行動で
せしめようとおもいさえしなければ
つかわないで済んだチューハイ代92円は
まるまる手元に残ることに、なる。
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500円玉をせしめるため
ほしくもない92円のチューハイを買いに
スーパーに立ち寄った5分間。
もしその5分間をほかのことにつかえば。
ひょっとしたらそれが
莫大な富につながったかもしれない。
いや、とうぜん、得ていたはずだ。
500円玉をせしめるため
飲みたくもないチューハイを飲んで
気持ちよく酔っぱらってきた気の遠くなるような長い時間。
もしチューハイを飲むことなく、なんかの有意義につかえば。
ひょっとしたらそれが
尽きせぬ名声につながったかもしれない。
いや、とうぜん、浴びまくってたはずだ。
*
いやはや。
おれはとんだ損をしてた。
でもきょうここで、
それに気づいたおれは、ホントにエライ!
われながら大したもんだ。
ほれぼれする。
莫大な富と、尽きせぬ名声は
もう得たも同然じゃんか。
世紀の大発見をした記念に。
さっき買ってきた92円のチューハイをプシュ、するぜ!