キクチヒロシ ブログ

絶滅寸前の辺境クソブログ。妄想やあまのじゃく。じゃっかんのマラソン。

「誰にも負けねえよ」その3

試合当日、ヤッくんはやけにてんしょんが高かった。

一度やめた陸上競技だし、本人なりにいろいろおもうところもあったのかもしれない。

 

5位に入れば2週間後の県大会に進めるし、1ヶ月後には駅伝もあるけどそれはロード。きょう敗退すれば中学最後の競技場になるかもしれない試合。

 

ってんで、予選はまあ通過するとして決勝を前にして。

それなりに気合が入ってるキクチ。

に向かって、ヤッくんが言う。

川崎市の陸上部員の聖地・等々力競技場。

の、ゴール地点前に陣取った稲中の陣地にて。

 

「きょうも『誰にも負けねえよ』だよなっ!」

 

 

あれから2年半。

ヤッくんが陸上部にいたころとは状況がいろいろ変わってる。

 

他校のひととは何度も試合を重ねてきた。

合同練習や合同記録会は試合の数倍数十倍、重ねてきた。

 

そうすっと、川崎市内、神奈川県内のじぶんのポジションもだいたいわかってくる&おのずと固まってくるもんで。

あと、試合もそうだけど練習やTTをいっしょにやると「その人の本来の地力」みたいなことがよおくわかってくるもんで。

 

 

たとえば、「このひと、学校では2番手3番手だけど、ほかの学校ならよゆうでエースを張れるぐらいの力のもちぬしだな」とか。

「試合では勝ったり負けたりできてるけど、取り組み方とか意識とか、キクチはとうていかなわねえな」とか。あるじゃないすか。

(ただ、試合になると別物で、やっぱり勝ったり負けたりできたりするフシギ)

 

 

2年半の間におもいしらされたのは。

「残念ながらキクチは負けるよっ」

川崎市内ですら優勝を争えるようなポジションではなかったし。

 

あまつさえ、最上級生になってから貧血やら膝腰の不調で記録がさっぱり伸びなくなり。1コ下の後輩にも負け出す状態で。その屈辱もすっかり板についてきちゃった感じなので。

 

すでにハッタリのカラ元気でも「誰にも負けねえよ」とは恥ずかしくて言えねえ、ぐらいの分別?はもっちゃってて。

 

ショージキ「ヤッくん、なんもわかってねえな。ノーテンキすぎるよ」ぐらいのことを、いささか逆ギレ気味におもってたりもしてた。

 

 

いっぽうで。

ヤッくんが放った2年ぶりの「誰にも負けねえよ」にハッとした。

まぶしい。

 

「おめえキクチよお、なにわかったつもりになってんだよ。半可通ぶってんじゃねえよ。」(謎のステマ・オブ・マルコリーニなていぇ)

 

どんだけ試合や記録会、練習を重ねてきたかは知んねえ。そこで感じた力関係とか、あるんだかないんだも実は不確かな速いひとたちの序列も知んねえ。この試合には関係ねえ。中1の春、イキって「誰にも負けねえよ」ほざいてたときの気持ちで、きょうも挑めよ。(長えw)

 

ヤッくんの「誰にも負けねえよ」を、キクチはそう解釈することにした。

 

まあ、結果は序列的なものとそう変わんなかったんだけどな。。。

それがキクチの人生最後の競技場での試合になっちゃったんだけどな。。。

 

 

。。。

 

 

朝ドラ「エール」のテツオの言葉を聞いて、ヤッくんをおもいだした。

ヤッくんは陸上競技からは離れてしまってはいたが、野球部でだか中学生活でだかしんねえけど、彼なりに「誰にも負けねえよ」を胸に抱きつづけててくれてたんだってことが、なんだかとてもうれしかったんだ。

 

 

「初心忘るるべからず」って言葉は、あんますきじゃなくって。

なんでかっていうと、初心をずっと忘れないということは必ずしもいいことばかりじゃないとおもうから。なまじっか忘れちゃったほうがいいことも多いって、その後しょぼく生きてるなかで痛感したから。

 

でもなんつうか、覚えておいてもいい。

「忘るるべからず」じゃなくて、「なにもむりに忘れないでおいてもいい」とか「たまに思い出すぐらいのぞんざいっぷりでもいい」みたいなニュアンス。

 

たまにあるじゃないすか。

なにげなくあるいてて、不意にむかしの黒歴史的な記憶(深刻なやつじゃなくて、ふりかえればギャグ的にやらかした的なほう)がキョライして頭をかきむしりたくなったり。

あるいは、不意にむかしすきだったチャンネーのことをおもいだして、心のずっと奥のほうがたまらなく張り裂けそうになったりするような、あの感じ。

 

あれって、往々にして苦々しいもんなんだけど、でも完全に忘却のかなたで浮かび上がってもこなかったとしたら、当時のことがまるっと歴史から抹消されてることになっちゃうじゃん。当時もおれはまじめに生きてたわけだし、それが「なかったことになる」のはちょっとアレじゃん? 的な。

 

わかりやすくたとえようとして、ますますわかりづれえパッターンぇ。。。

 

 

なお、成人式の日。

区役所がある駅前をふらふらあるいてたら、地元の有名な「開かずの踏切」の近くで、キャデラックだかなんだか、えらいゴッツいクルマを道のカーブの終わりらへんに停めて、気合い十分な感じでこっちに近づいてくるひとがいた。

 

風の噂で高校卒業後、ソッチの世界に飛び込んだとは聞いていた。

ヤッくんはヤッさんになっておったw

中1のくせにゴールでフィニッシュをキメて「モノホン」っぽかったヤッくんは、違う意味で「モノホン」になっておったw

 

※ロンのモチ、このオチを想定してて名前は出せないってんで「ヤッくん」は仮名なんだが、想定が甘くて「ヤッくんはヤッさん」は結果オーライな、5分前に気づいたまさかの符合なんだよ、マジで。

 

成人式から四半世紀以上を経たヤッくんとも、一度飲んでみてえ!

いま「誰にも負けねえよ、だよな?」って言われたら、じぶんは何をどう考えるだろうか?

 

おしまい。