キクチヒロシ ブログ

絶滅寸前の辺境クソブログ。妄想やあまのじゃく。じゃっかんのマラソン。

「誰にも負けねえよ」その1

むかし話をする。

中学に入ったら野球部に入るつもりで、仮入部がはじまった初日、野球部に顔を出した。

 *

 

何でこんなことをものそうとおもったかというと、きっかけは朝ドラ「エール」。

いま収録のストックが尽きて、今月から1回目に戻って再放送をやってて。作曲家の古関裕而をモチーフにしたやつなんだけど。

 

 

古関裕而(ドラマのなかではユウイチな)は、高校を卒業すると親戚のしがらみで音楽を一度諦め、跡継ぎのいない伯父の家に養子縁組して、伯父が経営する銀行に就職することになった。

 

あ、きょうも雑なあらすじから入るわけだなキクチ。

 

 

そんで、銀行勤めをはじめてちょっと経ったある夜、街でテツオに出くわす。

 

テツオってのは小学校のガキ大将で、家は魚の行商をやってたんだけど、とにかく家が貧しくてテツオも行商を手伝ったりしてて。けっきょく夜逃げをしちゃっておわかれした。

ひさびさの再会。

 

いっぽうテツオ少年は詩が大すきで。

親に隠れて古今和歌集なんか読んでたり自作の詩を書きためてたりして。それを見つかると「こんなもん、なんの腹の足しにもならねえじゃねーか」って、取り上げられてこっぴどく叱責されたりなんかする感じで。

 

でもユウイチはテツオに「すきなことならどんな状況でもできるし、つづけるべきだ」って言ってて。

 

 

オトナになって再会したテツオは、ユウイチに詰問する。

「おめえ、おれにあんなこと言ったじゃねえか! おれはあの言葉をよすがにがんばって、新聞の配達員からのしあがって、いまは記者をやってる。おめえも音楽をあきらめんな!」と。

 

 

ってのをみての、このエントリーな。

(なお、上の雑なあらすじ。例によって、キクチのいいかげんな記憶で成り立ってるので、細部はまったくテキトーだが、たぶん大筋ははずしてないはず)

 

 

。。。

 

 

仮入部の初日。野球部に顔を出すと顧問がいう。

「私は仮入部だからって1年生をちやほやしない」

なぜかイキってて、1年生はグラウンドの隅でずっと声出しをさせられた。

 

「そんなもんかな」「まあ、本入部になってからいきなりおっかなくなるよかわかりやすくていいかもな」っつってとくだん、何もおもわなかったんだが。

 

 

かたや翌日。

体育の時間に持久走のスポーツテストがあって、走り終わると3年生担当の体育の先生が近寄ってきて言う。

 

「キクチ、何部に入るんだ? 部活は決めたのか?」

「はい。野球部に入ろうとおもいますっ」

「陸上部には入らないのか?」

 

陸上部なんか入るわけねーだろとおもいつつ、声をかけられたのがなんかうれしくてその日はおなじクラスのオーツくんといっしょに、とりあえず陸上部をのぞいてみることにした。

 

 

部活がはじまってしばらくすると、顧問が姿を現わした。

午前中に声をかけてくれた「3年生担当の体育の先生」だった。

 

 

その日の陸上部、1年生全員が1500mのTTをやることになって。

 

けっきょく、キクチはトップでゴールした。わりとぶっちぎりで。

 

顧問が寄ってきて、声をかけてくる。

「おめえキクチよお。6月の試合出るからな!」

(前半部のマルコリーニなていは、たぶんフィクションだ)

 

えっ、1年生なのにいきなり試合に出れんの!?

 

前日の野球部の「ずっと声出し」とくらべてこの待遇の差。

そのまま浮かれ気味に陸上部に入部届を出した。

 

(少年野球をやっていなかった)キクチの野球人生は、こうして仮入部の1日で幕を閉じたのであったw

 

 

当時、中学の陸上の試合は100mと1500mだけ学年ごとの種目があって、キクチはどうやら1500mに出られるらしい。

とはいえ、練習はむちゃくちゃキツいし、ペース走もインターバルもまだまだ、ぜんぜんパイセンたちについていけない。「試合に出れる」っていう目の前のニンジンにおどらされたことをただちに後悔した。

 

いっぽう、日曜はだいたい近隣の他校と合同記録会をするんだが、4月5月といろんな学校のひとと顔を合わせるなかで、同学年でキクチより速いひとはあんまり見あたらなかった。あと彼らから「どこ中の誰それはすげえ速いらしい」なんて噂もまわってきたりした。なぜか速いひとは高津区と宮前区に集結してた。

 

ってんで、川崎市内におけるキクチのポジションもうすらぼんやり見えてきて、「6月の試合、ソコソコいけんじゃね?」って感じになってきた。「ただちに後悔するような練習」の成果か、1500mの記録もスポーツテストから2ヶ月間で20秒以上伸びてきてたし。

 

 

あまつさえ、試合では選手1人につき2〜3人ずつ付き人がついてくれる。

試合に出ない2年生のパイセンが荷物を持ってくれたり、スパイクのピンを試合用のやつに替えてくれたり(練習用のアンツーカー仕様と試合用のタータン仕様は違うのね)、ユニフォームにゼッケンをつけてくれたり、すげえやさしくって。

ふだんの練習でも、練習のやり方とかシューズのこととかいろいろ教えてくれた。

 

なんつうか、1年生のくせにただ試合に出るってだけでVIP扱いみたいなことにビビった。

 

(ただし、7月の県予選が終わったしゅんかん、パイセンは豹変する)

(ぜんぜんやさしくねえでやんのw)

 

(いや、それは陰険な裏表的なしごきとかじゃなく、パイセンがたぶん「おれこのままじゃいかん、よしんばヘタしたら下級生のキクチごときに負けちゃうかも」って奮起なさったんであろう)

(実際、そのうちの1人は学年で3〜4番手って感じだったのに、3年生になったらダブルエースのかたわれとして部をぐいぐいひっぱってってた)

(中2のときにキクチの記録がじぶん比飛躍的に伸びたのは、完全にそのパイセンからいろいろ影響を受けたおかげで、いまでもわりとガチで感謝しておる) 

(カッコ部、クソ長えぇ。。。)

 

 

あ、やべえ。

長くなったので次回につづくが。

 

 

そんなんわけで、「おれって同期のなかでそうとうイケてるほう?」なんておもいあがってた。ロンのモチ、ただの独りよがりで。

 

そもそもキクチなんて陸上部的には「たまたまいたやつ」に過ぎなくって。

あまつさえ転校生で誰も知らねえし。

 

そんななか実は、短距離では地元で超有名なやつがいるらしい。

ヤッくんというらしい。

 

つづく。