(キ)ダーハダカおじさんのつづきです。
―え? コレ、まだつづけるんすか?
(キ)だって二子橋を越えたんですよ。
まだ、おじさんには逢えていない。さあ、ここからってとこです。
話のつながり的には、3のつづきですな。
⇒その1、その2、その3、その4
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(キ)たしかに、もうだいぶ時が流れてしまいました。
あのとき初めてお会いしたスズキさん。
あ、ブログはやってらっしゃらないかたなんですケドね。
きょう、富士登山競走なんて酔狂なモノ出て完走したんですからね。
おめでとうございますってのはロンのモチとしても「アレからもうそんなに経ったんだあ」って。
おもわざるをえない。ざるをえ、なわけですよ。
ダーハダカおじさん探しのあのメンバーから、富士登山競走完走者が出た。
かなりの人材輩出団体ですよね、これは。
「富士登山競走を完走したいならコチラ」
って、すっかり虎の穴状態ですわ。
「わしが育てた」
ぐらいの。
ふたむかし前のリクルートか、日商岩井か、ぐらいの輩出っぷり。
―そう、アノときは「とうとう夏が来ちゃったなあ」って暑さでしたが、いまや暑いのアタリマエ、おもったより速く走れなくてアタリマエ、トモダチナラアタリマエー。アルシンド来たれりって感じですもんね。
(キ)超絶セレブのマルさんなんか、アレですよ。
「ダーハダカおじさん」で初めてお会いしてですね。
くり返しになりますが。
スタート前、和泉多摩川駅前で集合してたら。
明らかにコチラに向かってくる見知らぬご夫婦がいる。
直感で「マルさん?」ってウヒョーってなったわけですよ。
あたしのなかじゃ。
「ブログはいつも拝読してる。お会いしてみたいケド、お会いできそうな糸口がまっったくない」
存在自体が都市伝説説、あるいはゴーストライター雇ってる説さえ流れてたんです。
そのかたが、予告なしで目の前に現れた。
トーゼン、wktkするわけです。
超ウルトラスーパーミラクルwktk、です。
でもトーゼン、超絶人見知りって看板を背負ってる身として。
「こんにちは」と「またお会いしましょう」しかお話しできませんでした。
―そうそう。ムネコフさんと「変なこと言ったら給湯室に呼ばれっぞ」なんてコソコソバナシしてるだけで。
(キ)ムネコフさんが、連呼するわけですよ。コソコソ。
「マルさんのダンナさんって名乗ってるケドあれですよね、どちらかというとマルさんのダンナさんが真性マルさんのほうですよねっ」と。
アタマいいひとの考えることは、むつかしくてあたしにゃわかりませんが。
カレのいうことは、細胞レベルで首肯できました。
でも、ここからなんですよ。
―あっ、いきなりダーハダカおじさんの登場!?
(キ)いやいやそう急くでない。
あたしがもし紙芝居のおじさんだったら、そう言いますね。
ともあれ。
そんな都市伝説説さえ流れたマルさん。
流れたのは、あくまでおれのなかでなんですケドね。
一週間もしないうちに、アワスリーでまたお会いできたわけです。
あたしはキンチョーしまくりちよこです。
しまったしまった、って感じです。
「こ、この前は、ど、どうも」
って、あいかわらずよそよそしくしか接しられない。
とーこーろーがっ。ですよ。
二言ぐらいしかお話ししてない。
時間換算すれば、せいぜい10秒そこらでしょう。
それが、アワスリー。
「あのさー、キクチヒロシー」
って、もうフルネーム敬称略でぐいぐいクルわけですよ。
「キークーチーヒーローシー!」
って、呼び捨てられるわけです。
フォルテシモなうえに、超クレシェンドなわけです。
2つぐらい向こうから。
「2つぐらい向こうってどんくらい?」
は措いても。
なんだ? コノなれなれしさは。
なんだなんだ、このフレンドリーさは!
って、はかりしれない衝撃を受けますよ、そりゃ。
まあ、そんくらいがあのときの最後の記憶だってのも、どっかで言ったような気がするんですケドね。
―きょうはコレでお茶を濁して終わらせようとしてません?
いいえ。
そんくらい、時が流れたなって軽くたとえたかっただけなんです。
―じゃ、まあきょうはコレで終わりにしますかね。
(キ)それはあまりにあまりだ、ってもんです。
オブラディ・オブラダ、ってもんです。
ダジャレがおもろくもうまくもないことは措いても、むかし、飼ってた2匹の金魚に「デスモント」と「モリー」って名づけた。そんくらいオブラディオブラダが気になってたのは、まぎれもない真実なんです。高3のころでしたかね。
*
あのう。
ダーハダカおじさんの頻出区域、二子橋と丸子橋の間の区間にさしかかったわけです。
―おっ、いきなりはじまりやがった。
最初は「ここからですよー」なんて言う。
二子橋でお別れしたマルさんご夫妻には申しわけないですが、サブちゃん並みの漁場が来たわけです。
でもですね。
あたしはジツは、うすうす気づいてた。
「ちょっと。スタート時間が遅かったかもね」
―ん?
(キ)第三京浜を越えたあたりで、「きょうはないな」って自信が確信に変わりました。
全行程のまだはんぶんも行ってないうちに、です。
でもいまさら「きょうはありませんな」なんて、言えない。
そんな空気をみなさん、ピピッと感じ取りなさるわけです。
その感じが、つらかった。
「言葉攻めはもういいから、ひとおもいに殺せー。殺してくれー!」
叫びたかった。
にもかかわらず。
誰も「ダーハダカおじさん、きょう逢えないんじゃないすか?」
とは言わない。
音声に出してそう言ってしまうことによって
ダーハダカおじさんの存在はおろか
休日の朝にわざわざ多摩川くんだりまで来た、参加者のみなさん自身の存在。
そこまでを疑う事態になってしまうからです。
―あなただけではなく、みなさんも「いる」「逢える」と信じ込むことによって、矜持を保ってた。
(キ)そうです。それがあたしに突き刺さるんです。
とりあえず半裸でジョギングをしてるひとがいれば
いちいち「あれすか?」って訊いてきなさる。
とうぜん、ダーハダカおじさんそのひとではないので
「違います」って答える。
でも、かたっぱしです。
「あれすか?」「違います」
「あれでは?」「ザンネンながら。。。」
スーパーマリオの4-2ぐらい、無限ループです。
―もう誰も、引くに引けない。
(キ)あたしのしてることは、間違ってはいないんです。
いや、総トータル的に「逢える時間に設定しろや」って根本的な過ちを犯してはいるものの。
「あれはダーハダカおじさんではありません」
影武者判定に間違いはないんです。
だって、違うんですもの。
途中でどれだけ「あ、あれです!」ってテキトーに認定しちゃおうかとおもったか。
あるじゃないすか。
500円を貸してあげたのはおれなのに。
500円を返さないアイツが悪いはずなのに。
何度も「返せ」って言ってるうちに、コッチが悪いことしてるような気がしてくる。
「500円ぐらいでナニ、セコイこと言ってるの、キクチ」
場がそういうムードで支配される。
みたいなこと。
すっかり、おれがイタイひとなんです。
「かたくなに認定しねえな、コイツ」なんです。
イタイひとです。
ダーハダカおじさんを探しにいったキクチヒロシ探検隊。
隊長みずから、ターイタイおじさんになっちゃったわけです。
でいて、みなさんやさしい。
ひとおもいに心の臓を突き刺して、ラクにしてほしいのに。
針のむしろ、なら、うまいこと急所に刺さって逝けるかもしれない。
でも安全ピンの先っぽでチクチクチクチク、全身を甘刺しされてる。
そんな感じです。地獄の責め苦です。
―まあ身から出た錆なんですケドね。
そこなんです。
「500円貸したのに」と決定的に違うのは
けっきょくあたしが全面的に否、ということなんです。
丸子橋に着いた時点で完全終了でした。
だって。
あたしたちはキロ6分半ぐらいで進んでる。
ダーハダカおじさん(が実在するならば)、キロ8分ぐらい。
折り返し地点までに逢えなかったら、
速度の速いあたしたちが追いつかれるということは、ないわけです。
ロジックを申せば。
―LSD的にも、後半グダグダになったんですよね。
そこはもはや、すっとばしたいとおもってるんです。
たしかに、陽射しがつおかった。
たしかに、気温が異常に高かった。
でも、ダーハダカおじさんに逢えてさえいれば。
みなさん「うおおおおおっ!」ってなったはず。
「うおおおおおっ!」のいきおいで
歩き出すひとも、脱水症状になってしまうひとも、はぐれてしまうひとも出なかったはずなんです。
喪失感のたまもの。
ティグリス河とユーフラテス河と。
盆と正月と誕生日とクリスマスが肥沃な三角地帯で一気にはち合わせた。
ぐらいの、ロストだったわけです。
―じゃ、ダーハダカおじさんシリーズもこれでオシマイ、と。
ソレなんですけど。
もう1回だけ、つづけたいんですよね。
いわば「安全ピン甘刺しシリーズ・イン・アフター」
安全ピンのむしろは、まだまだ終わりませんでした。
あと、あの。
ダーハダカおじさんツアー自体。
また秋口にリベンジするつもりです。
10月の上旬か中旬を想定してるんですが
まあ、今回のコレがありましたから
あたしの単独登頂になる可能性大、なんですけどね。