多摩川の右岸(川崎側)をジョグしてると
カレはかならず現れる。
季節の移り変わりの機微を楽しむ。
なあんていう風流は持ち合わせてないケド
カレのコスチュームがおれに
季節の移り変わりの機微を伝えてくれる。
ダーハダカおじさん
そのひとである。
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走りはじめて、こんどのGWで丸4年。
左岸の狛江に住んでるので
最初は左岸を2~3kmぐらいから。
夏ごろには15~20kmまで
距離を伸ばしていった。
そんくらいの距離になると
橋を渡って対岸に進出する。
何回か川崎側に進出するうち
「このひと、いつもいるなあ」に気づく。
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初老の男性。
ラグビーパンツのようなチョー白い、きわめて丈の短いパンツ。
上半身は生まれたまんま。
褐色の肌。
ギリシア彫刻のような二枚目。
フォームはお世辞にもキレイとは言えないが
とにかく、午前中にいつも出くわす。
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最初、多摩川の主。
と名づけた。
ぬし。あるいはしゅ。
主イエス。アイ・キャン。。。
いや違え。
何か長え。
ダーハダカおじさん、だろと。
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あくまで推定だが
ダーハダカおじさんはまいんち走ってる。
おれが多摩川を走るのは、週末。
あとたまに
「うんこをもらしたから」
「お化けに遭ったから」
と理由をつけて仕事をサボるウイークデー。
右岸には、かならず、ダーハダカおじさん。
「窓の、下には、神田川」なていで。
ん、なんだかきょうは調子いいぞ。
おれ、ダーハダカおじさんのこと、大すきなんだろうな。
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ということで統計のことはわからないケド
統計学的に
「ダーハダカおじさんはまいんち走ってる」
と推定できる。
そんなわけで、
ダーハダカおじさんにとってのおれはオンノブゼムかもしれんが
おれの多摩川ジョグにおけるダーハダカおじさんは、100だ。
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おれに季節の変わり目を伝えてくれるダーハダカおじさん。
ダーハダカおじさんがダーハダカなうちは、夏。
ダーハダカおじさんがTシャツを着ると、もうすぐ冬。
ダーハダカおじさんが長袖を着ると、冬将軍到来。
ダーハダカおじさんが長袖を脱ぐと、もうすぐ春。
生まれたまんまの上半身をカイチンしたとき、
高校野球でいえば松山商業ぐらいの夏将軍が訪れる。
ダーハダカおじさん暦では、夏は半年ほど。
半年ぐらい、ダーハダカ。
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ダーハダカおじさんの下半身は
1年中白いラグビーパンツ。
ぐらいのチョー短い短パン。
そして、上半身に一糸まとうとき
かならず白。
もう、デカい十字架を背負って織田信長のところにいった
伊達政宗状態。
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ダーハダカおじさんとすれ違うのはだいたい
第三京浜と丸子橋の間。
てっきりそのへんを
ちょこっと走ってるのかとおもったが
あるときは二子で、
またあるときは中野島でも、すれ違う。
ガス橋あたりで拝謁したこともある。
テリは、そうとう、広範だ。
土地勘がないとなんのこっちゃ、
ですな。
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おれだけの、ダーハダカおじさん。
でもどうしても、誰かと共有したくて。
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1月の中旬。
知り合いが東京マラソンに当選し、
初フルに挑むことになった。
絶好のカモ、もといチャンス到来。
アドバイスを求められ
一緒に走ろうと誘われたんで
「30km走を経験しとくと、自信になりますよん」
と多摩川右岸のジョグをそそのかす。
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ダーハダカおじさんが現れるか
なんて心配するひつようは、皆無。
「コースにダーハダカおじさんが現れる」
のではなくそもそも
「わたくしどもがダーハダカおじさんのもとに詣でる」
なのだから。
けっか
めでたく、追い抜き、折り返してすれ違う。
二度の僥倖。
知り合いがグロッキーなのなど
おかまいなしに、
ダーハダカおじさんのことを話しまくる。
おもえば
すれ違ってばかりで、追い抜いたのははじめて。
わたくしどもがキロ7分ぐらいで軽々抜かしてったので、
いつもキロ8分ぐらいなんだとおもう。
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ダーハダカおじさんの素性は
いっさいわからない。
健康のためにしては走りすぎてる気もするし
モチベーションが高すぎる。
レースのためにしては、ペースが遅すぎる。
ひょっとしたら
「朝と夕の二部練で午前中はLSD」
というプランのシリアスランナー
なのかもしれない。
が、それにしては
フォームが個性的すぎる。
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何度か話しかけてみよっかなあ
とおもったこともある。
話しかけないまでも挨拶すれば
そのうち顔見知りぐらいにはなれるかもしれない。
ただ。
おれさまちゃんは、
超絶人見知りちゃんだ。
酒を飲まなきゃぜんぜんダメだし
酒を飲んだら飲んだで、別の意味でぜんぜんダメだ。
ほろ酔いの無敵感がありさえすれば
とたんに図々しくなるケド
ふだんはショージキ、できれば誰とも話したくない。
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とはいえ
ジョグ前に一杯ひっかけてくわけにもいかない。
もし話しかけたとして
取って喰われちゃったりでもしたら
いったい誰が責任をとってくれる?
ご挨拶の実現は、まだまだ遠い。
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きょう、ひさびさに多摩川を走った。
河川敷から10秒のところに住んでんのに
さいきん飽きちゃって
多摩丘陵や砧公園をめざす
ようになっちゃった。
きょう。
春の大一番かすみがうら、まで2週間。
もう、起伏で脚をいじめるより、
平坦でペースを維持したほうがいい。
と、ひさびさの多摩川河川敷。
第三京浜を超えると、ダーハダカおじさん。
「あ、ダーハダカおじさん」
と、ワクワクひとりごちる。
装束は、白いタンクトップだった。
タンクトップ、というかランニング。
「ランシャツ」ではない。「ランニング」。
たま。ぐらいの「着いたー」。。。
風流を持ち合わせてないおれでもわかる。
もうすぐまた、アツい夏が、来る。