キクチヒロシ ブログ

絶滅寸前の辺境クソブログ。妄想やあまのじゃく。じゃっかんのマラソン。

きくち、パニクって血迷う

「私、あのひとと結婚することに決めたの」
カノジョが言う。よく晴れた春の日。芝生がキレイな公園で。

(ん? あのひと?)
カノジョが指さすほうに、「あのひと」がいる。

「うそーーーーんっ!」
おれはクリビツテンギョーする。
(じゃあおれ、どうすんの?)と。


確かに。
決断ができないまま、7年も引き伸ばしちまった。

つぎ会ったら言おう、つぎ会ったら言おうって、踏み出せなかった。

おとしごろだってことは、わかってたはずなのに。



カノジョはあっさりくるりとあっちを振り向き、歩いてく。

30mぐらい先に、結婚することに決めた相手らしき男。

非のうちどころのなさそうな、好青年。

近寄るカノジョを、さわやかなスマイルで迎え入れようとしてる。



(マジか! マジか!)

(こんな偏狭ブサイクなんか、カノジョを逃がしたら結婚なんかできるわけねえぞ!)

(おれなんかを相手にしてくれるチャンネーなんかこんりんざい、現れるはずねえぞ! こんりんざい)

(こんりんざいって、いま2回言ったよね、おれ)

(「なんか」がやけに、ひんぱんじゃね?)

(っていうかこのままじゃ、ななちゃん、生まれてこねえぞ!?)

そんなことが頭をかけめぐってる、かたわら。

2人はおれのほうをみて、さわやかに会釈。
手に手を取り合い、向こうへ去ってゆく。

うわー。おわったー。
おわっちまったー。
おわつちまつたー。

こんな非常事態に、中也なていかよー。
もはや、何がおわったかも判断つかねえが、確実にものすげえ終焉を迎えたー。

気がするー。



。。。



パチリ。

目が覚める。

何がうつつで何が夢か、パニクりすぎてよくわからない。

あわてて、周りを見わたす。


どうやら自宅の寝室にいるようだ。どうでもいい。

時計は、7時ちょうどを示してる。どうでもいい。

外はすっかり明るい。どうでもいい。

隣でにょうぼうが目を覚ましてる。どうでもいくない。



「ダンナ。手!」

エラッソーに。

にょうぼうは、キツネにつままままれた顔をしながら、右手を差し出してくる。

おれは両の手で、にょうぼうの右手をガッチリシェイクハンドする。

「このあたくしに、清き一票を!」ぐらい。
「レッドおれブル、翼をください!」ぐらい。
尾道三部作、ぐらい。。。

なにを血迷ってんだろう。

よりによって。

血迷ったあまり、にょうぼうの手を握っちまった。

血迷ったあまり、どうしてもアイワナホーリョハーンって感じになっちった。

ホーリョハーンなんか今世紀初、いやいや、ややもすると生涯初、かもしれない。

エンピーバリア! って感じだ。



ホーリョハーンしたら、落ちついてきた。

やっと状況が、呑み込めてきた。

ちょっと冷静になる。

ちょっと冷静になり、いまおのれが見てきた夢の世界をにょうぼうに説明する。

「っていう夢を見ちゃって。あの、あのう、わ、わけがわからなくなっちって」

説明しなけりゃ手さえ握らねえエア夫婦、ってことは、措きまする。

冷静になってねえじゃんか。



「フッフッフ」

にょうぼうが、スマイルを浮かべる。



ん? なんだなんだ? フッフッフって?

まだ「フフフ」なら、救いようがあるぞ。

だが、促音「っ」をはさむことによって、解釈の幅は無限に広がりうるぞ。

「解釈」は、「妄想」と言い換えてもいい。

ここで言う「妄想」は、「超絶マイナス思考」と言い換えられる。



まさかの、正夢? 正かの、まさ夢?

予知夢?