祝 キャトゥ!
12月2日。
さて、ゼンラデンマとウタゲでもすっかな
と身じたくを整えてたまさにそのとき
盟友キャトゥから生まれたメールが来て。
遅ればせながらきょう、
西船橋の産婦人科にいってきた。
かわいい!
心が洗われる。すっかり。
*
こういうのなんて言うの。
イノセントっていうか
無垢材っていうか。
なにひとつ持ってないのね。
エロい心も。
うまくやってやろうって心も。
なにひとつ、ビタ一文。
ミノルさん、うらまやすい。
っておもいましたとさ。
ますます。
*
こう。
こわごわ抱っこしてるわけですよ。
抱っこしてるやつは、まもなく10さい。
あの大雪の日から、もう10年。
10年前の12月29日。
夜の10時ごろ。にょうぼうが
「あ、軽くはじまったかも」
とかいって。
でもまだ余裕な感じで電車に乗って
いっしょに病院いって。
電車に乗ったったって
たった1駅なんだケド。
病院に着いたら、まだ何ともないのに
車椅子に乗せられて。
大げさだよねーとか言ってて。
おいしいねーとか言ってて。
おれはとりあえず家に帰って。
とりあえずいつでも
出撃できるよう、飲むのはひかえといて。
*
翌朝の5時半だったか。
爆睡してたら病院からデンワがあって。
自然分娩がムリっぽいので
至急、病院に来てくださいって言われて。
だいぶパニクりつつ、
原チャリで病院に向かって。
「落ち着け、おれ」って言い聞かせながら
あえてゆっくりゆっくり運転して。
雪が尋常じゃなく降り始めてて。
*
うまく子宮がひらかないらしくて。
レントゲンを見してもらったら。
ちょうどヘリのとこに
赤ん坊の顎がひっかかってて、
いかにも苦しそうな体勢になってる。
「エンペラー切開を許可します」
みたいなサインをさせられるんだケド。
ついでにこう
「何が起ころうとあたしは文句ぶうたれません」
みたいな念書を書かされたりして。
「もしもの場合は母体と子ども、どちらを優先しますか」
って、究極の選択みたいのもさせられて。
*
ダクターは「いちおう、ですから」
形式上のことだからって、いうんだケド。
いちおうじゃねえよ何万おうだよって。
*
サインして
にょうぼうの顔をちらっとみにいったあと。
廊下でビクビクビクビクしながら
待ってて。
結果的になんの問題もなかったんだケド
予定の時間よりだいぶ遅れて
ひととおりが終わったらしくて。
とにかくその待ち時間が、
永遠につづくんじゃないかぐらい長くて。
ホントは予定より20分遅れただけで。
とるものもとりあえず
にょうぼうの顔みにいって。
とつぜん目の前に現れた
おのれの分身もみにいって。
*
こういう。
おれのムスメが生まれたときのハナシって
ぜんぜん特殊ではなくて。
もっとたいへんなおもいをして
生まれてくるひとだっているだろう。
多かれ少なかれはともかく
ひとはみな
そんなんふうにして生まれてくる。
祝福されて生まれてくる。
ただ生まれてきたってだけなのに
ひとをすごくしあわせにする。
アタマがいいとか悪いとか
容姿がととのってるとかいないとか
ギャグセンスがあるとかないとか
モテるとかモテないとか
ケンカがつおいとかよわいとか
性格いいとかそうでもないとか
どう、でも、いい。
いきなりおれの目の前に現れた
物体をながめながら
「あ、こいつのためなら
ラクショーでおれ、命懸けられるわ」
っておもったりなんかして。
*
なあんてことを、帰りの総武線で
しみじみ、おもいだしてたわけですよ。
*
キャトゥ、おめでとう!
浮かれすぎてて、好感しかもてないぞ。
でもな、ほんとうにタイヘンなのはこれからだぜ。
でもそのタイヘンさはほんの数ヶ月で。
ぜったいに損をしない株みたいなもんで。
ちょっとニコッと笑ったり
ちょっと首がすわったり
するだけで、膨大なリターンがもらえるんだぜ。
うんこなんか、余裕で触れるんだぜ。
*
いやあ、うちのムスメさん。
よくぞここまでおっきくなってくれたもんだよ。
きょうは、心が洗われたよ。
おれもすっかり、イノセンスだよ。