前半のつづき。
学生時代、中高生向けの塾講師のバイトをしていた。
同じ学生バイトには、国公立とかワセダとかアタマのいい人がそろってたのに、
なぜかオレが高3生の古文、受験対策コースをやらされた。
大学のネームバリューとか関係ねえ。
やたら時給がいいことにひかれて、二つ返事するしかない。
たぶん、いまの仕事の時給換算の3倍以上。
んなことはどうでもいい。
授業ではなるべくテキストの内容と身近な話題とリンクさせたり、
おのれの大学生活の話をしてやる気を出させようとしていた。
「醍醐って、いまで言うとコンデンスミルクみたいなもんらしいよ」
という、タメになるんだかデタラメなんだかなことから、
「堀ノ内ってここらへんにあったらしいよ」
という、受験にはぜったい出ないことから、
「受験で力を使い果たして、なおかつ希望が叶わないと、反動でオレみたいになっちまうから注意。でも楽しけりゃOK」
という、タメになるんだかタダのグチなんだかなことまで。
そんなある日、感受性のスルドい高3女子たちを前に、
キクチ青年はやっちまう。
「痩せたくて痩せられない人と、太りたくて太れない人の悩みはいっしょ」
「痩せたい人は食わなきゃいい。でも太りたい人は食いたくないのに食わなきゃいけない」
などと言い出したのだ。
一点の曇りもない、いつわらざる心情の吐露。
そのころ、切実にもう少し太りたいとおもっていたんだろう。
話せば話すほど、語気には感情がこもり、舌はなめらかになってゆく。
同時に、女子高校生のみなさーんはぐんぐんぐんぐん引いてゆく。
ボヤッキーな必要はないな。。。
授業が終わったあと、冗談まじりで
「センセー、さっきのはヒドいよね~」
とか言いにくるコはまだいい。まだいいんである。
サイレントマジョリティーの本気のムカツキ度に気づかされるのは、
オレのいつわらざる心情吐露から1ヶ月あまり経ったある日のことだった。。。