代々木八幡直前でパッと目が覚ましたら
といめんに座ってる人がすげーイケメンだった。
渡部篤郎が日焼けして筋肉つけた感じ。
*
そのイケメンっぷりに
ついガン見してしまって。
ほどなく、気づいた。
「あんまじろじろ見すぎるのも、ナンだな」
*
あまつさえ渡部篤郎似のイケメンおじさん。
黒さ、太さ、見ようによっちゃ
亀田の親父に似ていなくもない。
ちょっとつおそう、である。
もしオラつかれたらめんどくせえし。
それ以前にやっぱ、ガン見するおれはナンだし。
居眠りなていを続行することにした。
*
ものの。
どうっしても篤郎が気になっちゃって
こっそり、見てみることにした。
15秒後ぐらいに、薄目を開けると。
渡部篤郎似のイケメンおじさんだったはずのひとは
90歳ぐらいのおばあちゃんに変身してた。
マジ、クソびびった。
*
おれが居眠りなていを続行することにしたのは
代々木八幡を過ぎてだいぶ経ってからで。
薄目を開けたのは、次の参宮橋に着く前だから。
乗り降りなんか、あるはずねえし。
そういう理屈うんぬん以前に。
「とうぜん篤郎だとおもって見てみたら
90代の熟女だった」
って事実が、あんがい地味に衝撃的すぎて
熟女を二度見した。
*
まあ、あれっすよね。
魔術とか怪奇現象とか
そんな大それた話でもおもしろい話でも
あるはずはなく。
勘のいいひとっていうか
ふつうに考えれば、わかりますよね。
あつろうは
斜め向こうのちょっと離れたところに
すまして立ってましたとさ。
*
「渡部篤郎に似てイケメンで
色黒で筋肉もあってつおそうで
あまつさえ、熟女に席を譲る」
とか、どんなパーフェクトジェントルマンだよ。
朝から気分がいいぜコノヤロー。