キクチヒロシ ブログ

絶滅寸前の辺境クソブログ。妄想やあまのじゃく。じゃっかんのマラソン。

つづけつづけること―映画「蔦監督」をみてきた

前エントリーのつづき。みたいなもの。



映画を観て、書きたいことはたくさんあるんだが
何を書くのが適当であるか
しかもネタバレにならない程度で。

と、ない脳みそを搾った結果
なるべく手短かにいってみようとおもう。

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この映画があると知って。
前エントリーでほざいたとおり
血湧き、肉踊ったわけだが、

ひとつ懸念してたことがあった。
「どれだけ知らない情報が出てくるか」
ということであった。



池田高校の話って、すでに。
さまざまなメディアで語り尽くされてる感がある。

なので、言いかたが間違えてるかもしれんが
いまさら特攻上がりでうんぬんとか
山あいの子どもたちに大海をうんぬんとか
さわやかイレブンがうんぬんとか
水野畠山がすごかったとか
そういうのはここではいいよっておもってた。

映画監督は、蔦監督のお孫さん。
「であるからこそ」目線の新情報を知りたい。

たとえば、ウェブサイトだかに
「よくおもってなかったひとの告白も取り上げた」
的なことが書いてあったので
それがどういうことで、どう扱われるか
ということに、非常にキョーミを示してた。



前者(監督は蔦監督のお孫さん)でいえば
蔦監督というよかキミ子夫人に
多くスポットライトが当てられている
というところが、ものすごくよかった。

キミ子夫人というのは
いままであまたある
蔦監督ドキュメントモノをみてても
話しかた、語り口がものすごくロジカルで
聡明な女性だなあと関心があった。
それが存分にみられた。

youtubeから拾うと、たとえばこういう。
4分45秒からのと、7分過ぎの。



ちなみに、次エントリーでは
7分過ぎのことについてほざこうとおもってる。

上映後の挨拶でもおっしゃってたが
蔦文也というより蔦文也&キミ子の物語。
むしろ主役は奥さんじゃね?
という感じになってた。

夫唱婦随とか、甘っちょろいもんではない
女傑。

ひとつネタバレになってしまうが
この映画は、キミ子夫人の生命の
終わりとともに、終わる。

晩年、痴呆が進み、耳も遠くなったなか
ありし日の蔦監督のことを話しはじめ
どんどん雄弁になっていく。

「監督はとにかくいいひとすぎた」
とくり返し言ってたのが、印象的だ。



後者(蔦監督をよくおもってなかったひとの告白も取り上げた)
については、サプライズだった。
「え? そこ?」という。

白川進(蔦監督の参謀というかパートナー)
というひとが
「(桑田清原がいた)PLに破れたとき
(前人未踏の夏春夏三連覇を逃したとき)
ほんとうに燃え尽きたんだとおもう」
と言っていて(ネタバレ、ね)。

そのあとも数年はセンバツで優勝したり
まだ強かったので
いやいやいやいや、っておもったんだが
たしかに、ナットクできた。



じゅうぶん長えじゃねえか、このエントリー。

しかもこの辺境クソブログ。
読んでくださるとしたらマラソン関連のひとが
大半だから、たぶんまったくキョーミねえぞ。

もうちょい、つづける。



そんな感じで。
全編、期待を寸分も裏切られることなく、
それどころか、という感じで楽しめた。



水野の代のキャプテン、江上に。
「おまえはアマチュアでがんばれ。
間違えてもプロに行こうとおもうな」

と言いつづけてたってあたりのエピソードも
グッと来るものがあった。

あ、江上ってのは前年の夏、
早実の荒木大輔をめった打ちにする端緒の
ツーランをかっとばした強打者。
いわゆる「荒木大輔、鼻つまむ」を
やらせたひと。



「水野はカレーが嫌いだった」
ってことから展開するキミ子夫人の持論も
魅力的だった。



これもネタバレっぽいが、冒頭。
梶田のことを語るキミ子夫人のシーンから
この映画、本編がはじまるってとこで
一気に引き込まれた。

梶田っていうのは、86年の
センバツ優勝投手、ね。

池田高校が語られるうえで、ふつう
いちばん最初に出てくるタイプのひとではない。
にもかかわらずな、あたり。

っていうか、ここで取り上げてんの
夫人の言ばっかじゃねえか。
おれ、どんだけキミ子夫人、大すきなんだ。



。。。



表題のことを忘れそうになった。

「蔦監督のすごいところ」だか
「蔦監督から学んだところ」
だかって質問に対する、教え子のこたえ。

甲子園に出るまで20年。
それから甲子園で優勝するまで10余年。
壁にはね返されたりいろいろしながら

蔦文也というひとは池田高校の監督を
「つづけつづける」。
30数年、気が遠くなるような
とてつもない年月。

それだけ「つづけつづけ」れば、
金属バット普及による「ツキ」が向いてくる。
(たしか「時代が追いついてくるということもある」って言ってたのかな)

ことがあるかもしれないし、
ないかもしれない。

でも「つづけつづけ」なければ
ツキが向いてくることもなかったわけで。
その信念の揺るがなさというか
意志の貫通力って、じぶんみたいな凡人にだって
どこか見習えるとこあるんじゃねえかな、と。

あ、「ことがあるかもしれないし」以下は
おれが勝手におもったこと、ね。



この映画では出てこなかったが
ごくふつうの公立高校であるからには
教師は数年に一度、異動する。

蔦監督は、本人がかけあったんだか
教育委員会(?)のはからいだったんだか知らんが

普通科、定時制・・・
という「異動」をくり返すことによって
池田高校の教師・監督でありつづけた。

ってエピソードをどこかで読んだことがある。

そういう、いい意味で
いい加減で大らかな昭和という時代。

そんなノスタルジーにも浸りながら
いまの時代だったらこういうひと
ぜってえ出てこないだろうなあとおもいつつ。

逆に、もし蔦監督がいまバリバリだったら
どういう野球をみせてくれるのかなあと
想いを馳せつつ。

映画館を出て、
「出先から戻りました」ってていで
いそいそと職場に戻ったんであった。

つづく。



そうそう。この映画。
東京での上映は明日(4/15金)まで。

公式サイトによると。
4/16~22は、名古屋で
5月には大阪で公開される。らしい。

らしい、ですぞ!

無料。
というのも、高野連の映像って
商用目的で使っちゃいけないんだから
なんだとさ。

むつかしいことはわっかんねえケド
こういう縛り、だっせえ。

じゃあ「熱闘甲子園」のDVDは
どういうリクツなんだよ? っていうね。
おれ、カネ出して買ってるぜ、っていうね。



なお、もう遅いかもしれないがヒント的には。

上映は12:15から。
10:10から整理券がくばられる。
東京の劇場、キャパは80人強。
ほぼ10:10には整理券の配付が終了する。

おれが行列に並んだのは9:20。
28番目、だった。
そんくらいだとまだわりかし席が自由に選べて
5列目中央ぐらいの絶好のポジションをとれた。
とれました、とさ。