がまんだがまんだボッチッチ
11月ぼっち練の3回目。
1回目。2回目。
たのぼっちとくるぼっちが融合した
勇者ぼっち。
おれらをまさかの周回遅れに。
するとおもむろに。
ゼンラと容れものが、あとを追いかける。
カメラを掲げて。
おれは、何てことしてくれちゃうんだ。
とおもった。
勇者も、ゼンラも、容れものも。
*
3周目に入ってから。
おれのおなかはイカンガーだった。
イヤな予感しか、しない。
ジツを申しますと
前の晩からイカンガーだった。
原因不明の、快速急行藤沢行き。
えっ、成城学園も登戸も飛ばして、新百合まで行っちゃうの?
っていう。ぐらいの、絶望感。
キヨマロに向かう朝も、おなかは
4回ぐらい新百合へ直行していた。
*
ちょっと危惧はしていたものの
ここまでは何ともなかったところに
いきなりのイカンガー。
とはいえ、
3周目のはんぶん、半蔵門ぐらいのころは
まだぜんぜん、
やりすごせる感じだった。
んだが。
桜田門への下りが下りに作用したのか。
とにかく「ああ、ダメですね」
って感じになった。
*
キロ7ぐらいのスピード、振動なら、
あと3、4kmは耐えがたきを耐え忍べる。
と、スパコンは再計算の結果を弾き出した。
だが、スピードアップは、ダメだ。
いくら周回遅れになったからって
ネタ的においしいからって、
追いかけてって写真を撮ろうなんてこたあ
エコじゃない。
そんなこんなんでも
まだじゃっかんの余裕は、ある。
キヨマロで休憩すると踏んでたので
そのついでなていで
トイレに駆け込むことにした。
「トイレに寄るので
ちょっと先行きますね」
と、何でもないふうをまとい、独りごちて。
*
逆接の接続詞、多くね。
読みづらい、というか見苦しいケド
まあ、措く。
*
キヨマロから最寄りの
竹橋の交叉点にあるトイレまでは
ゆっくり、
それまでとおなじキロ7ぐらいで行った。
そこに行きさえすれば
夢の国が待ってる。
120分LSD的にはまだ90分ちょっと。
でも、ソコ、おれのグランドフィナーレだ。
*
ようこそ。夢の国へ。
トイレの入口にはオジサーンが立ってた。
おれにはそのオジサンオズボーンが
夢の国に迎え入れてくれる
ねずみちゃんのようにおもえた。
「ボク、オジッキーだよ」
裏声で囁きかけてくれてるような気がした。
オジッキーに軽く会釈をして
入り口から夢の国をのぞき込むと。
おれが駆け込むはずであった
たった1つしかない夢の国へのトビラは
閉ざされてた。
アタマが真っ白になる。
いや、ヘタすると草色の半パンが
臭い色になる。
おめえナニ
うめえこと言ってるつもりになってんだ
ってのは措いて、
ふり返ると、オジッキーは
おれを夢の国に迎え入れてくれる
かのように見えたオジッキーは
地獄からの使者だった。
口の端をゆがめ
「てめえの前におれが入るんじゃい。
ぶわっはっはは!」
と、鎌を振り上げる、堅牢の門番だった。
*
「あいつを救いだすには
ココにとどまってる時間は、おれには、ない」
坂を上り、次なる聖地、
半蔵門交叉点手前のヘヴンを目指すことにした。
一度安心させといて
ものすごい緊張を強いる
ホラー映画のコッテコテパターン。
マジ、ホラーだ。
余裕は、ない。
キロ7とか言ってるバヤイじゃ、ねえ。
キロ5.5ぐらいにスピードがあがる。
*
坂の中腹、乾門手前の交番のカーブで
後ろをふり返る。
このテンパリっぷりを
ゼンラと容れものに見られるわけにはゆかない。
もし見られたら、
おれはただちに月に帰らなければならない。
あるいは、バードマンに動物に変身させられる。
おれの視界には両ぼっちは入らなかった。
やれやれ。
おれは安心して半蔵門ヘヴンを目指した。
ジツは。
そんなテンマツは後ろから
ちゃあんと目撃されてて
おれのペースが上がったもんだから
あわてて「後ろにいるぜ」って告げに
追いかけててくれた。
なあんてことは、つゆ知らず。
*
目撃はされていない。
後顧の憂いがなくなった
(とおもいこんでた)おれは
もう、前だけを見て進めばよかった。
ただ、ちょっと油断をすると
だっふんだーの神が容赦なく降りてきそう。
もはや、波があってさーとか、
そういうステージではない。
おれの活躍筋は、大括約。
字が逆とか、もう気づかない、ぐらい。
千鳥ケ淵の交叉点へ抜ける、
地味な上りと下り。
おれのおなかは、下りっぱなしだ。
途中にある簡易交番みたいなのの
おまわりさんに
「だっふんだーは罰せられますか?」
と訊くよゆうなど、とうぜん、ない。
*
千鳥ケ淵の交叉点から、
内堀通りに出る。
すべての建物が、聖地ヘヴンに見える。
でもまやかしもんばっかりで
ホンモノのヘヴンはなかなか現れない。
聖地ってのは、そういうもんだ。
「この額に浮いてるのは、脂汗だな」
ってわかる。
歩道のちょっとした段差が、マイ腸を
直撃する。
こんなどうでもいいネタ。
何でこんなに長ったらしくなるかというと
そのときの記憶の断片が
すべてアタマに焼き付いているから
なんである。
終わったからこそ笑い話で済むが
リアルタイムでは、必死だ。
これを耐え切れるならば
韓流ドラマの時代劇で出てくる
棒っきれで内またをグーッってやる
あの拷問にだって、耐えられそうだ。
ぐらい。
あれって何が苦しいんだろう、ぐらい。
*
レンガの建物が目に入る。
今度こそ、おれの聖地ヘヴンだ。
あの聖地は竹橋の夢の国なんかと違って
天国へのトビラがいくつもある。
ふと、もし、紙がなかったら?
アタマをよぎる。
持ち合わせのティッシュは、ない。
いざとなったら、あいつを使えば、いい。
いやダメだ。
これはこの世に10枚しかないもの。
ヤフオクに出さないといけない。
いやいやいやいや。
もしものときは、Tシャツで拭ってしまえばいい。
着替えはランステにしかないので
あとは上半身ダーハダカで乗り切るしかない。
「一生懸命走りゃ、
暑くてシャツなんか着てらんないよね」
ってオーラで押しまくれば、乗り切れるはずだ。
*
そんなこともキユーで
天国へのトビラはぶじ開かれ
ペーパーもちゃんと管理されてた。
おれは至福のときを過ごした。
一度とめると
5分で省電モードに入るガーミンヌが
2度「省電しますよー」
ってシグナルをよこす、ぐらい。
*
ぶじグランドフィナーレを終えたおれは
意気揚々と駆け出した。
さっき、サブ3の勇者ぼっちは
走り終えたあと、流しをしていた。
おれもそれを見習って
流しがてら、5000mのPBペースで
1.5kmぐらいを走ることにした。
残りの1kmは、ダウン代わりに
ふたたびキロ7分で。
*
皇居の1周は、5kmにちょっと足りない。
せっかくなので
キヨマロをちょっと通りすぎ、
距離のつじつまを合わせる。
キヨマロに戻ると
途中で帰ったボッチを除いて
みなさんボッチがすでに走り終えていた。
朝の集合もビリッケツ登場なら
走り終えるのも、ビリッケツ。
だっふんだーを耐え抜いた、だけにケツ。
っていう、
このクソおもしろくもねえ、この感じ。
*
「あれ? 途中でペースあげました?」
と、訊ねてくる。
どうやら、すぐ後ろを走っていた容れものボッチ。
半蔵門の手前でおれが急にいなくなったのは
おれがペースアップしたからだ
とおもったらしい。
そのわりに、おれの到着が遅い。
どうしてなんだって顔をしてる。
「この皇居には、キクチ専用の秘密の抜け穴があるに違いない」
ゼンラぼっちが、100%の確信をもって
わけのわからないことを言う。
*
たしかに聖地ヘヴンで一戦まじえたあと、
流し的なものをかました。
「ええ、ペース上げましたよ」
と、いう。
なんでこんなに話が噛み合うんだろう
とおもいつつ。
*
そのわりに、ぼっちたちのアタマの上には
クエスチョンマークが浮かんでる。
おれには噛み合ってるようにおもえても
ほかの誰一人、合点が行かなかったようだ。
そりゃ、そうだ。
まあ、テンマツを書き起こしてみると
ただ長いだけで、
そう起伏も感じられないエントリーだな。
見事なほどに。
*
こうしてぶじ「ぼっち練」を終えた一味は
一路、アフターへ向かうのだった。
11月のぼっち練一連。
あと一回だけ、つづくっ。