ぼっち練のラスト。
格差社会ってあるんだねってハナシ。
そんなのぶち上げて、社会派気どりたいんだねってハナシ。
ただの出オチで、格差社会を語る気はビタ一文ないんだね
でおなじみの、ハナシ。
*
走り終わり、キヨマロに集結するていで
なんとなくいるボッチども。
コイツらみんなたぶん、ドトール行きたいんだぜ。
帰りたがるひといねえし、とか、おもう。
*
とりあえず、ランクラへ向かう。
アズ・スーン・アズ
ランクラに到着するやいなや。
さいきん「大将」って呼ばれてるケド
おめえは欽ちゃんじゃねえ、デンママンだ!
でおなじみのカレが、言う。
「きょうはシャワー浴びてから飯食いましょー」
*
すべてじぶんが主役であると疑わない
でおなじみのおれは、穴があったら入りたい気分になった。
穴とユキちゃんがあったら、
女王に、おれは、なる
って気分になった。
*
ここ何回かの皇居ボッチ練後。
シャワーなど浴びることもなく、ドトールに向かった。
みんな、そんなにフカキョンとミルクレープが食いたいんだ
っておもってた。
真実は、そんなメルヘンではなかった。
ランクラのスポット利用。
500円という大金が払えないくせに
お墓なんかではついつい
「ここからここまで」
って1区画オトナ買いしちゃう
年収3京円の超絶ビンボーなおれ。
に対して、気を遣ってくれてたんだ。
と気づいた。
*
シャワー阻害要因でおなじみのおれは
この日すっかり
「シャワー、きもてぃー!」を堪能した。
*
シャワーを浴びて、受付横のベンチに座ってると。
テレビでは大学駅伝をやってた。
「大学駅伝って院生も出場OKなんすね」
と、誰かが独りごちた。
その誰かは筋繊維が太すぎるので
院生のインセイって、
てっきりドーピング検査でどうかなったとか、ならなかったとか
ってのを指してるんだとおもった。
陰性、セーフ。
おれ、アウトー。
*
めいめいシャワーを浴び終え、何か食いに行くことになった。
おれのアタマはニクになってた。
というのも。先月のボッチ練。
ドトールがやってなくて、代わりに入ったベローチェ。
「ハムサンドなんか足りなすぎるぜ!」
「おれを兵糧攻めする気か!」
「おれは鳥取城か!」
「もしくは三木城か!」
ごおおおおっ! って感じで、
一食で米を2合食うでおなじみの、ムキムキ食いしん坊が言った。
「今度は焼肉、行きません?」
だがそれは、その場にいた3人。
もとい、独りと独りと独り、しか知らない。
*
ドトールなんか眼中ねえよ。
アウト・オブ・眼中だぜ
オレ・オブ・真冬のダウン着てるぜ、きょうは20℃以上あんのに。
って感じで、神田の商店街を進みつつ、食いものやを探す。
デンママン。
シルベスタローン風に言えば
でおなじみのデンマン、が、ぽつり、こぼす。
「おれ、きょう、ニク、食いたいっす」
*
何だコイツは。
先月食いしん坊が何か言ったからとかそういうこと、
一切言わねえでやんの。
じぶんが食いたいってこと表明して
何事もなかったように、収めようとしてやがんの。
何だコイツは。
もう一度言う。
コイツ。
おれらがコイツすげえと思ってるのの
数段、すげえところにいるぞ。おい。
柏葉英二郎が上杉達也に
須見工の新田のすごさについて諭したように
おれわば英二郎がおれ杉断つやに、諭す。
*
土曜の昼。
ビジネス街、神田の西口商店街。
いくら居酒屋だらけとはいえ
休日昼の商店街は、彦根駅の北口ぐらい、シャッター街だ。
焼肉屋なんてとんでもないハナシで
ふつうの飯屋もそうそう開いてねえ。
ほぼ一択な感じで、かろうじて開いてる日高屋に入る。
*
おれは日高屋に行くとき、かならず、ビールとギョウザを食う。
でも、一昔前に流行りかけた「立ち位置」ってもんが、ある。
そんなものを勝手にわきまえた気になって
ほんとうは食いたいんだかすらわからない、トリカラ定食を頼むことにした。
表明せず、決断した。
おれもかっけくなりたくて。
*
そこにいたのは7人だっけな、8人だっけな。
順番にオーダーしてく。
「あら、あら、あら」
スプーンおばさんなていで、おれはどんどん小さくなってく。
みんな、飯しか頼まない。
ここは、寺か。
ビールを頼んじゃいけなけりゃ
ピクッとでも動いたら、でっかいガリガリ君の棒みたいのでビシーッて肩叩かれたりもするのか。
*
デンマンが
「・・・とビール」とオーダー。
きょうの「・」の数は3つらしい。
「ああ、ここは飲んじゃいけない場なのかとおもいましたよお」
マラソン大会のスタート前にこういうヤツいるよね
ってぐらいのお追従笑いをかます。
安心してビール、とトリカラ定食をオーダー。
オーダーもビリッケツだ。
*
ビールが運ばれてくる。
水と水と水とビールと水と水と、乾杯する。
もう、申しわけない気持ちで
あっぱい、いっぱい、うっぱい、えっぱい、だ。
その先は、けしていっちゃならねえ。
長老がおれを引きとめる。
*
恥ずかしいときー。
恥ずかしいときー。
ネタをかましたのにみんなスルーで
いてもたってもいられなくて、ネタを講義しちゃうときー。
「いまのはですねっ
【レモン】ってのと、【いレモン】ってのが
オモローポイントでしてね」
みたいな。
*
ぜんっぜん関係ないケド。
むかーし。クライアントに「世界」が口ぐせのひとがいた。
なんか、どんな無謀なことでも
「世界」をかますとぜんぶ許されるとおもってるし
じっさい、許しちゃったりする。
「すんませんキクチさん、
コレ、1週間でなんとかって世界で
アポも取材もこれからって世界で
ホントはじぶんがそれする世界なんすけど
できればそれもお願いしたいって世界で
3000字って世界で
チャチャチャーっとまとめてほしいなって世界なんすけどね」
もう。どんだけパラレルワールド存在セリなんだよ、っていう。
*
「あれですよね。やっぱりこういうバヤイ、トリカラは義務ですっていうか」
誰も触れてくれないので
おれ、トリカラ定食、頼んだんだよーアピール。
「あ、なるほどー」
って、関心ありませんありありな、棒読み反応。
スルー、講義、薄いレスポンス
3拍子そろった現役時代の秋山監督。
ホームラン打って、バク宙なんかキメたりして。
おれは、女王に、なる。
ふたたび。
*
酒の一杯も飲まねえくせに、ぼっちどものトークは弾む。
「親指の爪がムラサキに内出血しちゃうんす」
ってハナシになった。
「シューズって大きさも大切ですけど
幅がフィットしてるほうがもっと大事なんですよね」
たのとくるが融合した勇者の言うことは、きょうも正しすぎる。
*
勇者はこのあと、呪宴もといジュエン
って激安ショップに行くって言う。
「ガレッジセールに出てるシューズ、すげえ安いですよね。
きょうは買わないですけど」
って言う。
誰かが
「でも、あんまデカイサイズだとガレッジセールには出てないですよね」
って言う。
*
コレは、どう考えても、クル展開だ。
おれ太郎くんは、そっと目くばせする。
「行けっ、鉄人!」と。
ムキ人28号は即座に察する。
いっしゅんコッチ見てニヤッとして、動き出した。
「大将は28.5っすよ! ないんじゃないすか?」
鉄人はこうして、いつもぼくらの期待にこたえてくれる。
「8っすよーーーーーっ!」
おれは心のなかで応答しようとした。
「コロ・・・」
いやいやいや。
蜂須賀じゃないと小六じゃないでしょ。
蜂っすよじゃ、ナニ六なんすか!?
*
ああ、もうなんかね。
ぼっち練とか
こういうスルドイ洞察力
を見せつけるひともいるっていうのに。
なんだこのおれの。
「ネタになりさえすりゃ、よしんば走らなくてもいい」
みたいな感じ。
*
まあ、おなかがイカンガーだったことをすっかり忘れて
トリカラ定食を食って、ビールを2杯飲んだ。
おれはイカンガーを忘れてたが
イカンガーはおれを忘れてなかった
片時も、ってわけで。
解散して中央線に乗って、四ツ谷で下りたあと、
アイツも下りてきて。
ギザギザハートの子守唄かってぐらい
触るものみな傷つけるいきおいで
目につくトイレみな、駆け込んだんだけどね。
*
そんなわけで。
11月のボッチ練。おしまい。