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(2011-08-18)
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特集自体は、下のもくじを見ればわかるようにまあ、ベッタベタ。
なんだけど、もはやお彼岸に墓参りをするようなもん。
横浜高校の記事もいいんだが、
巻頭の江川と桑田との対談がなにしろスゴイ。
ライターは石田雄太。
とくに江川の発言がなかなかなので、いくつか引用してみる。
*
まずはもくじから。
【第一部 甲子園三国志】あえても一度いう。
〔春夏連覇組の'85年と'87年〕 PL学園 「KKの背中を追え」
〔'82年早実戦と'83年PL戦〕 池田 「怪童たちが見た天国と地獄」
〔王貞治、荒木大輔が語る〕 早稲田実業 「早実三代」
【第二部 大いなる序章】
〔松坂大輔と二人の背番号1〕 横浜 「幻のエースは永遠に」
〔2004年決勝vs.済美〕 駒大苫小牧 「尽きせぬ闘志がこじ開けた扉」
【第三部 熱風の記憶】
〔二つの奇跡を辿る〕 佐賀北&佐賀商業 「重なり合う旋風の轍」
〔44勝で優勝ゼロの謎に迫る〕 熊本工業 「無冠の古豪が貫く流儀」
【第四部 2011年夏の軌跡】
〔常識を超え続けた60年〕 常総学院 「木内幸男、名将最後の哄笑」
〔シリーズ 3.11を越えて〕 気仙沼向洋 「津波と野球と青空と」
ベッタベタ。。。
*
江川と桑田の対談から1つめ。
江川 ・・・(略)・・・初めて出たのが、3年春のセンバツでした。そのとき僕、記者の方に「初めて見た甲子園はどうですか」って聞かれて、「意外に小さいですね」って答えてるんです。これって、江川の性質そのものだとおもう。
桑田 えっ、甲子園がですか?
江川 いや、もちろんホントは、ものすごく大きな球場だなって思ったんですよ。地方球場しか知りませんでしたし。
桑田 なのに、「小さい」と……。
江川 高校生なりに、その答えが記事になるんじゃないかと思ったんです。それを他の高校生も見るわけでしょ。もし僕が甲子園をすごいと言ってたら、「コイツ、意外に気が小さいぞ」とかなんとか、いろいろ思われちゃうじゃないですか。・・・(略)・・・
ピッチャーとして圧倒的な才能があるのに、
案外気が小さいのに、
逆に憎まれ口を聞かずにおれない、
という。
確か現役のころ、ツーアウトから三振をとったとき、
小首をかしげながらベンチに引き上げてた。
「何が不満なんじゃい!」と映る、あの感じ。
いいとか悪いとか、得してるとか損してるとかじゃなく、
もう生き方とか人生観とかいう範ちゅうのハナシなんだろうから、
まったく仕方がない。
*
江川と桑田の対談から2つめ。
江川 僕もね、甲子園の神様はいると思ってるんです。2年生のとき、4試合続けてノーヒットノーランをやって、それでも甲子園に出られなかった。そのときは、神様にお願いしましたからね。もう、甲子園で優勝したいなんて望まない。出られるだけでいいんですって。来年は最後だから、春と夏の大会に出してほしいとお願いしたわけですよ。土を持って帰れればそれでいいと……。表題が含まれてる部分。
――でも、3年夏の栃木県大会では、江川さんは5試合をすべてゼロ封、それもノーヒットノーランが3試合、1安打ピッチングが2試合。これはもう、神様の力なんかあてにしなくても出られるに決まってますよね。
江川 それでも出られるかどうか、わからないのが甲子園。僕、甲子園と阪神甲子園球場は違うと思っているんです。甲子園っていうのは春と夏、どこからかやってきます。神様が甲子園を置いておく場所があって、そこからピューッとやってくる。で、高校野球が終わると、またフッといなくなる。そこには阪神が本拠地としている阪神甲子園球場が元通り。春と夏だけ、神様が高校生のために甲子園という聖地を届けて下さると……僕は今でも、ずっとそう思ってます。
やれ「ほかの球場も使えば日程がもっとラクになる」
とかいうが、そういうことじゃない。
本質的に。
というのは、こういうわけだからなんだよね。
という、おれにとっての満点回答。
だいたい、2年夏に4試合連続ノーヒットノーラン
3年夏にノーヒットノーラン3試合、あと2試合が1安打ピッチて、
江川どんだけ怪物なんだ。
*
江川と桑田の対談から3つめ。
――最近の高校野球をご覧になって、何か感じていることはありますか。いやはやビックリ。
江川 これは私見ですけど、試合が終わった後、選手が握手するのは嫌いです。戦い終わって握手をするという考え方は正しいのかもしれません。時代の流れもあるだろうし、我々の時代とは違うということもわかっている。でも、僕はどうしてもあれがダメなんです。
桑田 今は試合が終わったら、ほとんどのチームが握手をしますよね。
江川 負けた悔しさを持って帰って欲しいんですよ。全力で戦って負けたら、悔しくて悔しくて、手なんか出せない。だって負けるというのは自分たちが劣ってるということですからね。世の中に出れば丸くなるから、大人は握手できちゃうかもしれない。でも高校生には悔しさをむき出しにしてほしいし、僕はあれをさわやかだとは思いたくないんです。
江川卓って、こういう人だとは知らなかったし、
感情にからめた物言いをするのみたことなかった。
この人も根本的に野球が好きでたまらないし
ただでさえ天才なのに、
もっとうまくなりてえ、もっと強くなりてえのカタマリだったんだと
よくわかる。
*
今回は完全に江川寄りだが、
もちろん桑田の発言だって
取り上げたいほどすばらしいのがけっこうある。
ただ、全部とりあげると
もはや引用じゃなくてこの対談の謄写になっちゃう。
そんなわけで、ココマデ。
*
さて。
おれが「最近の高校野球をご覧になって」
感じていることが2つある。
高校野球にかぎらずなんだけど、とくに高校野球で見受けられる。
1つは、優勝したあとマウンドに集まってイチバーンてやること。
もう1つは、キャッチャー(たまにピッチャーも)がハーフスイングかどうかを
主審に「塁審に聞け」って指さすこと。
いずれも違和感。
*
「イチバーン」は、相手に対しての礼を失した行為だとおもう。
キミたち、勝ったんだぜ。
うれしいのはわかるけど、
「オレたちゃ勝ったぜ」の誇示がトゥーマッチ。
WBCだか北京五輪で韓国が日本に勝ったとき、
韓国チームがマウンドに対極旗を突っ立てた。
とニアリイコール。
ナインがマウンドに集まって抱き合うだけで、
うれしさもわかるし、ホマレな感じもじゅうぶん伝わるんだから、
そこまででいい。
それをトドメまで刺しちゃイカンだろ。
という。
失礼なうえに品性のかけらも感じられない。
「てっぺんとる」という、
あるんだかないんだかわからん日本語ぐらい。
今夏の日大三高は、「イチバーン」をやらなかったし
「てっぺんとる」もいわなかった。
これぞ王者、なんだが、これとてずいぶん久々だ。
*
「塁審に聞けの指さし」は、そもそも越権行為。
ハーフスイングかどうかを判断するのは主審の役割。
主審が判断しかねたとき、はじめて塁審に確認する、というのが筋道だろう。
たぶん。
それを
「テメーどーなんだ!?」
とばかりに選手がジャッジを待たず塁審を指さす。
あまつさえ指さしながら、「まわってんじゃね?」て指をクルクルまわす。
さらに、
これがどんだけ傲慢な所業か、
プレイヤー自身はたぶん気づいてない。
*
10代のころって、誰でもおのれに「黒歴史」を抱えてるもんだ。
自分ではカッコいいとおもってやってたけど、
あとからは思い出すだけで顔から火が出そうになる、アレ。
何年かのちでもいいから、元高校球児が当時を思い出して、
「あれは黒歴史だよなあ」
ておもうようになってくれればいい。