たとえば、グルメリポーターはけして
「おいしい」とは言わない。
「おいしい」とは言わずに、ほかの言葉や表情、しぐさで表す。
おいしいものをリポートしてんだから、おいしいことが前提
ということもあるんだろうし、
あえて遣わないほうが、おいしさをより豊かに伝えられる
ということもあるんだろう。
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「週刊ベースボール」の今週号
堀内恒夫がコラムで言っているのはまさにそれ。
実際に甲子園のグラウンドに立ったことがなくても、
どんだけ広いかが、ぞんぶんに伝わる。
たぶん『キャプテン』の近藤みたいに、
相手のベンチと応援団をちら見したあとに、
鼻をふくらましながら投げ込んだんだろうなとか、
イマジネーションがぐわわわっと広がる。
あやややマチャミが、なんでか強気なケンカを売るていで
「おいしい!」
という必要なんてまったく、ないな。
センターを守っていた私は、いつも地元の球場でやるように、ボールを捕ると、バックネットに向かって思い切り投げた。肩には自信があった。バックネットの真ん中あたりにぶつけて、相手ベンチ、スタンドの応援団にアピールをするのが楽しみだった。しかし、どんなに頑張っても私の投げたボールはバックネットには届かなかった。甲子園球場の広さを思い知らされた瞬間だった。
堀内が甲府商1年のとき、高校時代に1回だけ
甲子園に出られたときのエピソード。
まあ引用部の最後に「広さ」とか言っちゃってんだけど、
これはまた別のハナシ。
最後にさりげなく説明的に種明かしする、という
これはこれで、けっこうなテクニックなんである。