キクチヒロシ ブログ

絶滅寸前の辺境クソブログ。妄想やあまのじゃく。じゃっかんのマラソン。

花道を斗う子らのたのもしく末代までの誇りとぞ思ふ



いい本の基準って、人によってそれぞれだとおもう。

おれ個人がもっともそうおもうのは、
「こうしちゃおれんゾ」と
読んでるとき、あるいは読んだあとに
背中を押されるというか、
いてもたってもいられなくなる感覚に駆り立てられる本。

きのう発売になった「高校野球小僧」がまさに、それ。


いや、別に高校野球モノだから、ではない。

確かに、おれは高校野球が好きで、
これを読んでいて「もっと高校野球の勉強しなくちゃな」
とはおもった。

でもそれ以上に、

いまやってる仕事がんばろうとか、
もっとちゃんと育児やろうとか、
ジョギング気合いいれようとか、

つまり、
自分の人生を生きること全般に対して、もうほんのちょっとだけ真摯になろう

とまでおもえた。



このエントリーは
2012センバツ展望号(2012/02/10)のつづき。
なんだけど、
はっきりいって「高校野球小僧」ブッチギリ。
他誌と比較になりませーん。



なんでかっていうと。

読者の身としていわせてもらうと、今号にかぎらず
「こういう記事が読みたかったのよ」
っていう、ビミョーなかゆいところにちゃんと手が届いてる。

つくる身としていわせてもらうと、
まず、企画会議が楽しそう。つくっている人が面白がってそう。
というのが透けてみえる。ゴンゴン。

ほめすぎかもしれんが、これ、イノベーションよ。



ひとつわかりやすい例をあげると、
センバツ出場校の紹介ページ、ありがちなフォーマットに拠ってない。

全選手の顔写真とか必要以上のプロフィルなんていらない。
もっというと、オールカラーじゃなくたっていいじゃん。

こういう根本的なところから、実行しちゃってる。



ほかにも、こうるさいこといっぱい書きたいんだが、
ほんとにうるっさくなりそうなので、カツアイ。



さて、中身。

もくじをみるだけで、ときめいちゃう記事がてんこ盛りなんだけど、
泣く泣く大幅にカツアイ。たとえば(↓)。

秋の登板「0」に終わったセンバツの目玉
大谷翔平(花巻東)を使えなかった秋
勝利か、育成か――佐々木洋監督、信念の采配

元高校球児のM-1ファイナリスト
野球部OB・藤田憲右(トータルテンボス)
今も残る静岡商業戦のマウンドの感触と、悔い

清峰をセンバツ優勝に導いた名コンビ
あれからのふたり
新たな相棒を得た吉田洸二(清峰監督)と清水央彦(佐世保実監督)

人気者が心の奥に秘めていた想い
岩本勉の失われた夏
――高校球界屈指の右腕、出場辞退――


もう一度いう。
もくじをみるだけで、ときめいちゃう。

記事の内容も、すばらしかった。
トータルテンボスの藤田なんて、彼の高校野球語りをもっと聞きたい。
「報知高校野球」かなんかでやってたアンジャッシュ渡部の観戦記みたいに、
連載で読んでみたい。



客はたぶん、高校野球に何の興味もないオナゴ。
を前にして、こんな感じ。だもの。



今号、おれが特にヤラレタと感じた記事は2つ。

1つは
野々村直通(開星)、最後の授業
【定年退職記念】高校野球に言い残してきたこと


ちゃんとわかってるわいな、相手が(2010/06/22)
「恩師は末代までの誇り」って言ってくれてね(2011/06/22)
につづく、野々村監督へのインタビュー。

表題は、昨夏の甲子園後、
野々村監督が描いた絵に添えられていたうた。

もう一度。
花道を 斗(たたか)う子らの たのもしく 末代までの 誇りとぞ思ふ

やべえ、泣きそうだレベル。

絵をスキャンしてここに載せたらさすがにヤバいとおもうのでしないが、
昨夏のバッテリーが描かれている。
この絵がたまらなく、やさしい。

インタビュー内容も秀逸。すべて正論。
特待生問題、先輩後輩の行きすぎた上下関係、21世紀枠、インターネットのタレコミ社会
という4題をあげてQ&A方式で野々村監督が答えるんだが、
たとえば「21世紀枠」について(↓)。
確かにいろんなことがあったけど…(苦笑)。でもね、ワシは21世紀枠は反対じゃないんですよ。あの時は21世紀枠を侮辱したという風に取られてしまったけど。勝って出ることはなかなか難しいけど、21世紀枠なら可能性があるという学校が出て来る。たとえば小規模校であったり、田舎の山奥の高校であったり、離島であったり。
(中略)
ただわからないのは、国公立大への進学率何パーセントとか、そういうエリート進学校が「模範的」として選ばれること。だって、その学校の子は、その地域で最も恵まれたエリートなわけでしょう。その学校に通っているだけで、誇りがあるわけですよ。もちろん優勝したり、結果を残して選ばれるならすごいですよ。そういった学校をわざわざ21世紀枠として拾い上げるのは、どうなんだということ。

この2年間、誌面で野々村監督を取り上げつづけた編集者。エライ!
菊地高弘という人。
なんにせよ苗字がステキだ。



うわ、このエントリー、長え。
が、もう1つだけ。



ヤラレタ、の2つめ。

ヒマワリよりも、俺の花だよ弥生のサクラ
甲子園「春将軍」列伝


最初のほうでいった
「こういう記事が読みたかったのよ」
ってこういうの。

おれは松山商業を指した「夏将軍」っていう言葉が大好きだ。
カッコよくて、ロマンがあって、品がある。

昭和44年の決勝戦はリアルタイムでは知らないが、
この言葉を聞くと
昭和61年の藤岡投手のスライダーや水口栄二の最多安打、
1996年の奇跡のバックホーム
なんて風景が、ババババーンと頭をかけめぐる。



「夏将軍」があるんなら、
「春将軍」をキーワードに1つ記事書けねえ?

みたいなアイデアが出た瞬間に、もう圧勝。
少なくとも対おれ。

おれは地元が東京、神奈川なので、
二松学舎大付とか国士舘なんてときめく。

全国的には愛知の東邦とか。

ここ数年で夏も強くなっちゃったけど、
広陵とか東海大相模もそうだ。



どっちみち長くなったので、蛇足。

1つだけがっかりしたのは、
重箱の隅をつついちゃうんだけど、1ヶ所、
出るはずの芽が出なく、うんぬん

という記述があったところ。

わりい、おれだけかもしれんが、
そんなニホンゴは、ねえ。

たった1ヶ所だけなんだけど、
それだけでテンションが一気に落ちる、
ということを、身をもって体験しましたとさ。ちゃんちゃん。