大学の同窓会の話ラスト。
ウタゲ翌日の家庭内の蠢きをば。
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翌日は朝からわりかしひんぱんにスマホが鳴ってた。
後輩さんがこしらえてくれたLINEグループに、めいめい「昨日は楽しかったです。またよろしくお願いします」的な定型ごあいさつ文を投下したり、昨日撮ってあった写真を共有したりなんかして。
キクチは写真をながめながら、前日のことを反すうしたりしつつ。
「ほかのひとたちもけっこういま、おんなじように昨日のことを反すうしてんだろうなあ」おもったりした。
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かたや、にょうぼうとキクチは翌日以降、同窓会について語ることはほぼ一切ない。
いや。
そういうふうに決めてるとか言えないことがあるとか、いやなことがあったとか言いたくないとかではまったくないのよ。
あるいは当日朝からウタゲに至るまでの時間に、夫婦間でくだらないいざこざがあった(たとえば向かうとき、あたしは鈍行で行きたいのにあんたはやたらと急行に乗りたがるのがクソムカツクとか、そんくらい取るに足らなさすぎる系の)ということもまったくない。
にもかかわらず、にょうぼうとの間で同窓会についてのトークが交わされることはない。
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それ以外の会話はふつうにはするんっすよ。
「このガパオライス、クソ美味えな!」だの。
「美味しんぼに富井副部長は不要だよな!」だの。
「ダンナ、『ショウタニオオヘイ』を発見?してからとつじょ大谷翔平のスポーツニュースに関心を示し出したよね!」だの。
(それまで夫婦間では「コインケスギ」ってのが一大ブームになってたんだけど、「ショウタニオオヘイ」ってのがニューカマーとして現れて、おおっ、そのテがあったか! ってグイグイ引き寄せられてきてるのねなう)
それでもやはり、あたかも暗黙のタブーであるかのように、同窓会についての話題はしようとも、振ろうともしない。
ふつう?、あるじゃん?
「誰それが劇的に変わらねえ(あるいは老けた)な!」「誰それっていま、○○らしいよ」を共有するだとか。
「そう、おれもそうおもった!!!」とか。
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で、よくよく思い返してみますれば。
これってわが家の通常運転で。
別にお互いにそういう話が好きじゃないというわけでもないのに、そういう話をほとんどしないのがナチュラルな状態なんだけど。
見方を変えりゃ、こういう、直近のお互いにとってそれなりにインパクトあった共通の出来事についてまったく話さないって、ものすごく不自然で薄気味悪いとも言えるのかもしれない。
って、ふとおもっただけ。
そんなんふうに、時空がビタ一文歪まないキクチ家と、スマホにすげえ来る時空を歪ませるLINEの新着通知が、コントラスト的にちょっとおもしろいなあって、ふとおもっただけ。