ぼやぼやしたぽえむ。
10年ぐらい前までぐらいかな。
とても懇意にしていただいてたライターさんがいて。
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あ、そんなこと言うと「その人が死んじゃって彼について振り返る的なエントリー」臭がぷんぷんにおうが、そうでない。
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そのライターさんはもともとボス(キクチの2回り上の年男w)の人脈だから、親世代ぐらいのひとなんだけど。
取材が終わるごとに飲みましょうってなって、彼が住んでた(る)三軒茶屋に繰り出して。
あのう、あるじゃないすか、三茶の新宿ゴールデン街みたいな昭和の飲み屋トライアングル地帯。そこで、美人なママさんがいるバーだけをハシゴするツアーとか、さんざん連れまわしていただいたりして。
子世代なことに甘えて、当時の仕事とか人生に関する悩みをさんざん聞いてもらったりもしてた。
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ってのは、わりといらねえ情報なんだが。
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彼は大分の佐伯ってとこで育って。
実家は開業医で、いま弟さんが継いでるように医者家系で。
彼も中学だか高校から久留米大附設っていう、福岡にある超進学校に進んだ。
九州とか、あまつさえ大分の土地感覚がよくわかんないので「佐伯」で地図検索してみたら大分の南部。福岡のどこですら通学できる感じではないので下宿だか寮に入ってたんだろう。
久留米大附設ってのも、実はよくわからないんだが。
「たとえばホリエモンが後輩にあたる」っつってたから、よっぽどのもんなんだろうね。
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「こう見えても子どものころ、地元では神童って呼ばれてたからね」
「『医者の○○さん家の息子さんだから、そりゃ当然だわ』みたいな」
よしんば、仮にその彼の言に多かれ少なかれ誇張が含まれてたとしても。
中学だか高校から実家を離れてまでして九州随一の進学校に飛び込む。
という事実からして、少なく見積もっても「地元では神童」ではあったんだとおもう。
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「ところがね」
こういう言い方は決定的に間違ってるのかもしれないが。
そのまま佐伯にいればあがめ続けられたであろう神童は。
「ただの人」になるどころか、ものすごい挫折感を覚えてしまう。
九州中から神童が集まったなかでは、彼はただの劣等生でしかなかった。
彼は何度も医学部受験をはねかえされ、
けっきょく、東京のそう有名ではない大学の文学部を卒業し、いまにいたる。
(と、彼とは違う学校ではあるものの)
(「東京のそう有名ではない大学の文学部」出身なキクチがほざくあたりw)
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医学部と文学部の優劣?はよくわからんが。
医者家系の彼が文学部に進んだというのは、おそらく所期の将来設計からはだいぶん外れたには違いないはずで。
何を言いたいかというと。
ひょっとしたらそれは。
彼が中学だか高校で、本来、見る必要がなかった世界を見てしまったがゆえ。
ってことも、多からずとも少なからずともあったんじゃねえのかなっておもう。
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「医者を継ぐ」という見地では、オフコースしてしまった人生。
「腕のいいライターになった」という見地では、まんざらでもない道のり。
総トータル的に、彼にとって何が正解であったのかは知る由もないケド。
そこまでは彼に訊くことはできなかったが。
将来が大きく変わったということに変わりはない。
わけで。
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センター試験?共通テスト?当日の朝。
刃物を持って受験生に襲いかかるというとんでもねえ事件を起こしたひとに尽きせぬ憤りはあるものの。
要因の一つに、彼も本来なら見なくてよかった世界を見て、その広さを思い知っちゃったってこともあったのかもしれない。
とおもうと、ちょっと複雑な気持ちになる。
同情なんてとてもできないけど、複雑な気持ちにはなる。
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。。。
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それとは比較すべくもない、卑近な例だが。
3年前、ムスメっこが狛江市の代表になって東京都の中学生の市区町村対抗駅伝を走ることになったということがあった。
「ムスメっこ、やったぜ!」
親として誉れにおもうのとおなじぐらいかそれ以上に。
「ひょっとするとムスメっこは、見る必要がなかった世界を見て、好きで得意だった『走ること』が嫌いになっちゃうんじゃないか。そうなったらどうしよう」
おもった。
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ムスメっこは陸上部ではない。
学年100人ちょいの小さな、あまつさえ陸上部がない学校でたまたま1番で。
さらに、狛江には中学が4つしかなくて。
さらにさらに、そのいずれも陸上部らしい陸上部はない。
というなかでの甘めな?代表選出。
狛江市自体、過去の大会結果を見ると「それなり」の結果でしかない風土である。
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かたや、都道府県レベルってなると。
陸上部には信じられないくらい速いひとはいくらでもいるもので。
たとえば速さとは単純に比例しないかもだが、市区町村レベルで単純に人口をみても。
(10万に満たない狛江市に対して)政令指定都市ぐらいの自治体もある。
要するに。
「学校単位では速いね!」
「陸上部でもないのに市代表に選ばれたね!」
が、得意で好きなことにトッピングされて。
そこまでで十分、本人的には箔が付く(?)のに。
なまじっか、そのもう一つ上位の世界を覗くことになっちゃったばかりに。
「自信」も「好き」も「得意」も一瞬で吹き飛んじゃうんじゃないか。
ならば、そんなんいらなくね?
必要ある?
ってことの心配のほうがデカかった。
「むしろ事後、ムスメっこが走ることに対してマイナスな感情を抱かないようにどうやってフォローできるかこそが、親たるおれさまちゃんの役割デアル」
ナドト、肩肘張っちゃったりしてね。
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結果はそれなりだったが(区間順位はさほどだったものの、ムスメっこなりにベストを尽くせたし、練習のときより速いタイムで走れもした)
市内の他校にもおともだちができたようだったし。
走り終わったあと、おんなじ学校から選ばれたコと「ユニフォーム姿で写真撮ってー!」って言ってくるほどだったので。
少なくとも、走ることに対して自信喪失にも嫌いにもなってないようで。
そのことに、心底よかったねっておもった。
おもいましたとさ。
つい先日のできごと(↓)。
ムスメっこ、3学期の体育は持久走らしい。下駄箱を覗いたらテンポネクストがしらっとなくなっていた。
— キクチヒロシ (@rFsPIZFyucNM3Z2) 2022年1月14日