電車を3本乗り継ぎ、
ムスメっこが進学する学校へ
入学金を払い込むために向かう。
*
おれは道中、なんでもないふう
を装おうとすんだけど。
明らかに顔がひきつってんの
じぶんでもよおくわかるていどで。
よしんばカモフラージュしようと
やけに喋り倒してボロを出すのは
あれだなってんで、黙ってるもんだから
その沈黙が雄弁に「ボロを出しとる」
二者択二ぇw
*
口を開いたかとおもえば、
「点数の開示を受けといたほうがいい」とか。
*
あのう。
受かろうと落ちようと、申請すると
入試の点数を教えてくれる
っていう仕組みがあるらしくて。
おれはムスメっこがなんで落ちたのか
まったく受け入れられなかったし。
いちおう「シュートで終わる」的に
コトの後始末をちゃんとしておけば
今後のために何らか役立つのかも。
おもったんだが。
1日経ってちょっと冷静になると
「そんなん、何の意味もねえ」
*
点数を知ったからといっても
判定がくつがえることはないわけだし。
点数を知ったからといっても
それが何点であろうが、まったく意味はない。
「ムスメっこは全力を尽くした」
という事実は、点数をつけることじゃないし
「この点数で落ちたのか」とか
「この点数じゃしようがないな」とか
今後のためにビタ一文役立たねえ。
まあ、これについてはまたそのうち。
やんねえフラグぇ。
*
黙ってるうち、ピンときた。
世紀の大発見。
キクチがこんなに落ち込んでるのは
「受かってないわけがない」
「落ちることは微塵も想定してなかった」
からなわけで。
要するに、想定と現実との落差で。
ああ、それがいけなかったんだあ!
おれもムスメっこみたいに
「落ちてる前提で考えとく」すれば
いま隣にいるムスメっこのように
平然としていられたのにい!
って気づいた。
その思考回路がワケワカメだし
だいたい、ムスメっこが外見どおり
まったく平然としてるわけねえじゃん。
というもろもろがわかんないぐらい
錯乱の大メダパニ祭り。
*
というのは余談で。
*
その、ムスメっこが進学する学校へ
入学金を払いに行く手順ってのは。
受かった数日後にその学校に行き、
一式もらってきた書類に書いてあって。
金額と締め切り時間
だけが書いてあったので
「事務室の窓口で払い込む」
ということを疑っていなかった。
よくわかんないけど、ふつう。
振込なりなんなりだったら、
その近くに目立つように
口座番号とか書いてあるもんじゃね?
それがなかったから
「事務室の窓口で払い込むもんだ」
思い込んだ。
*
前日の夜。
「私立の入学金は用意した?」
にょうぼうが訊いてくるから
「いや、それはそうなってから
おろせばいいんじゃん」
って答えたら。
「もし明日、ATMとかの不具合が起きて
間に合わなかったら、どうするのよ!」
ってすげえ怒られたんだけど。
*
なにしろおれ、
ムスメっこが都立落ちるとは
ゆめゆめ考えてなかったわけだし。
大金持ち歩くの、そわそわしてやだし。
前日、いちおう私立の手順を
読み込んでたはずのにょうぼうが
「学校に払い込みにいく」ことを
みじんも疑ってもねえわけじゃん。
*
いいかげんもう、オチが見えましたよね。
でも、わかってもまだなにかと
わからないフリをしといたほうがいい。
おもいやりって、大切。
*
ムスメっこの学校の最寄駅に着くと
目の前に制服を着た男子中学生と
その母親があるいてて。
はっはーん。
この子もムスメっことおんなじルートだな。
おもって。
ミョーなシンパシーを感じつつ
改札をくぐり。
駅前のATMでお金を下ろし、
学校に向かった。
まだ、わからないフリ。わからないフリ。
おもいやりって、大切。
*
学校は商店街を抜けた先にある。
ムスメっこはしきりに
「人、少ないよね」言う。
そら、そうよ。
平日の昼間だし、雨降ってるし
ウイルスがなんだの不要不急の外出はなんだの
喧伝してるからじゃん。
バカ父親、信じ込みやすい性質なんだよ。
(おもいやりって、大切)
*
学校の正門に着く。
人っ子ひとりいない。
いくらなんでもおかしくね?
ってんで、正門に入らず
冊子をふたたび広げる。
念のため、ムスメっこはタブレットを開き
学校のウェブサイトだけでなく
出願のときに登録した
パスワードでログインしてみる。
*
冊子とおんなじデザインの
申込手順を書いてあるページ。
の、下に。
払込情報。
カードのばあい。
振り込みのばあい。
コンビニ支払いのばあい。
バッチシ、書いてあるじゃねーか。
*
それで、途中にファミマがあったよね
ってんで、払い込んだんだけど。
一件は落着して。
ムスメっこは高校生になれるんだろうけど。
*
ふつうに考えてみろよ。
わざわざ学校にゲンナマを払い込むって
あるわけねえじゃん。
いまは令和の世だし。
だいたい、労力とか考えても
わざわざみんな学校に赴くって
どう考えてもおかしいし。
事務室だって、過労すぎる。
*
ふつうに考えられなかったぇ。。。
*
そうやって。
通勤路の4分の3ぐらいぶん、
わざわざおうち方面に戻って
堂々とそこのコンビニでお金を払い込み
意気揚々と職場に向かったんであるが。
おめえキクチよお。
なんでふつうに考えられなかったんだよ。
*
っていうぐらい。
1日経ってもなんかまだ
夢のなかにいるようにふわふわしてて。
ムスメっことにょうぼうは
チャキチャキ動いてて。
きょうなんか、ムスメっこのおともだちが
泊まりに来て、うきゃうきゃやってるのに。
おれ一人だけ、
あからさまに落ち込んでて。
おれのメンタルが弱すぎるのか、
ムスメっことにょうぼうがつおいのか
すら、よくわかんない。
(↑弱さの上塗りしてますかねしてますかね?)
*
。。。
*
そうやって、ムスメっこの
高校受験は終わったわけだが。
ムスメっこは、中2の夏から
学校をいくつも見に行って
そのなかの2番目に行きたかった学校に
入らせてもらえることになったんだよ!
それって、すげくね?
あまつさえ予期せぬ反骨のバネも仕込んで。
もう、洋々たる未来しか見えない。
*
ななちゃん、
1年間せいいっぱいがんばったな。
おめでとう!!!
高校に行ってもいつもニコニコ。
おともだちをたくさんつくって
中学のときみたく、楽しくすごそう!
君は、いまもこれからもずっと変わらず
おれの自慢のムスメっこだ。