キクチヒロシ ブログ

絶滅寸前の辺境クソブログ。妄想やあまのじゃく。じゃっかんのマラソン。

ヴィトンのバッグ

にょうぼうは、学生の頃から
1つのルイ・ヴィトンのバッグを使い倒してた。

学生の頃からにょうぼうのことを知ってはいたが
そうあんまりよく知ってもいなかったので
「学生のくせにブランドモノかよ」
「いまさらバブルかよ」

団塊ジュニアのど真ん中と
ロスジェネのど真ん中を兼ねそなえるおれは
そう、ふつうにおもった。



卒業してしばらくして
お付き合いするようになってからも
近未来のにょうぼうは、
そのヴィトンのバッグを使い倒していた。

家が裕福でもなく
がんがんお金を稼げる仕事をしてるわけじゃない
そんなおれは
「その価値観、どうなんだろう?」
おもったりもした。

もしこの先、いっしょになったとして
ブランド志向だったりしたら、困る。
金銭的にも、好み的にも。



いっぽうで。
「よっぽど気に入ってんだなあ」
「ずいぶん、大切にしてんなあ」
「まあ、安いもんじゃないんだろうし」
おもったりも、した。



結婚して、ちょっと経って、妊娠したころ。
ヴィトンのバッグの取っ手が、ぶっ壊れた。

にょうぼうは、ヴィトンのバッグを修理に出した。
諭吉がだいぶ、すっ飛んだ。

何事にも執着しない。っていうか
万事にずぼらなにょうぼうにしては
やけにアレだ。



お腹のなかにいるのは、どうやら女の子らしい。
14年前のいまごろ、判明した。



「私が大学に入学した日に、ね」
だいぶ、おなかが大きくなってきたころ
にょうぼうがだしぬけに、言う。

「このバッグ、ママがくれたの」
「『私が何十年も大切に使ってきたものだから
あんたも、大切に使ってね』って」

「私はね、楽しみにしてるの」

「いつかコシャチが大学に入学する日に」
「このバッグをあげるの」
「『ばあばもママも大切に使ってきたものだから
あんたも、大切に使ってね』って」



「コシャチ」ってのは
ななちゃんがななちゃんって
名付けられる前に呼ばれてた呼び名。

ワケワカメ。は、ともかくとしても。

ヴィトンのバッグ。
そういういきさつだったのね。



。。。



きょう。
にょうぼうとムスメっこが
2人で買いものに行った。

新宿で、ムスメっこの洋服を買うと言う。

うまいパンケーキも食って
21時ごろ、帰ってきた。

戦利品。
ムスメっこのファッションショーがはじまる。

ん? にょうぼう?
上下4着、サンダル2足。リュック。
ずいぶんな大盤振る舞いだな?



ファッションショー。

「おともだちがずいぶんおしゃれだから、ね」

にょうぼうが言うように。
さっき「いってきまーす」ってってた
ムスメっこの服装は
いまだに小学校の延長みたいだったのに

いま買ってきた服を
わくわくしながら試着するムスメっこの服装は
「シャレオツ的に階段を3段抜かしした」
みたいなてい、だった。

なんて表現していいんだかわかんないが
目の前にいるのはもう
「ななちゃん」じゃなく
「ななこさん」って感じだ。



にょうぼうが、かつて
だいぶ先の夢として話してたこと。

確実に近づいてきてるんだな。
いやおうなく、キョライす。

まだ5、6年も先の話だが。
44のじじいだてらには、たぶん
5、6年なんて、驚くほどあっという間なのだ。

来たるべきヴィトンのバッグ継承の日は。
たしかに喜ばしいことなのかもしれないが
「じぶんの代の終わり」として
みとめたくない気にも、なるんだろう。



妄想。
にょうぼうから継承されたヴィトンのバッグをもって
大学に通うムスメっこ。

どっかの馬の骨。
「学生のくせにブランドモノかよ」
「バブルかよ」

ものがたりは、つづく?
歴史は、くりかえされるの?

いーーやーーだーーーーーー。



。。。



きょうは「泥む」。
なんたって、音(おん)が美しい。

本文にヒントはない。
ビタ一文、たりとも。

なお「ドロン」では、ない。
金八。