もともと行こうとしてた耳鼻科
(ウェブ予約してないほう)で
おれは診察を受けたことはなかった。
が、近所では評判が悪いわけではない
というか、いいほうだし
待合室までは何度も行ったことがある。
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ムスメっこが副鼻腔炎もちで。
小学校に入ったころから、激しいときは
週2~3回、かよってたことがあったからで。
5年生になってから、行ってきなといえば
ひとりで行くようになったが、
それまでは幾度となく付き添ってた。
ムスメっこが言ってたのは
「先生がおっかない(ピアノの先生のほうが100倍おっかないケド)」
「だって、少し空けるとおこられるし、マジメに行ってても『ホントはまいにち来て吸入?吸出?したほうがいいんだけどね』っておこられるし」
と。
たしかに。
受付にいる奥さんもザ・江戸ムスメ
っていうかチャキチャキ気質で
患者にも助手のチャンネーにも
分け隔てなく(?)凄みをきかしてきてたっけ。
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この朝、いまからその耳鼻科に行ってくる
って言ったときもムスメっこ。
「あの先生、こわかったよー」
「パパ、ほんとにあすこいくのー?」
カマしてくる。
おれの反応を楽しんでる感じだ。
くそう。
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9:30の開院からほどなく
ビビり倒しながら耳鼻科に到着。
患者はまばらだから少なくとも
診てもらえないとか、すげえ待つとかは
なさそうだ。
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こんときゃ、まだ。
どこかで甘い夢を抱いてて
「原因はただの耳あかの溜まりすぎーっ」
的なネタ的結末を期待してたりもしてて。
いや、おれは耳そうじが大すきで。
リビングのおれが座る場所の
手の届くとこには常に
耳かきが置いてあるくらいなんだが。
ほら、よく言うじゃん。
そういうのにかぎって、耳あかをどんどん
奥に押し込んじゃって
けっきょく中のほうにため込んじゃってる
的なパッターン。
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受付の前で保険証を出そうと
リュックをがさごそしてると、ザ・江戸ムスメ。
「あ、初診ですかー」
「じゃあ、保険証を持ったままお入りくださーい」
その耳鼻科は待合室、短い廊下、診察室
って間仕切りなくつづいてる導線で。
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診察室に入ると。
横3人がけのソファが背中合わせで
左の真ん中にあって。
向かってあっち側のいちばん右に座ってろと言う。
診察台は右側。
右耳が聴こえないもんだから
呼ばれたときに聞き逃すまいとして
ずっと右を向いてる。
おれから見て右前方には機材が置いてあって
助手のチャンネーがいろいろ用意してるから
はたから見ればおれはチャンネーを凝視してる
あやしい43歳男性でしかないw
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っていうか。
耳鼻科に来ていきなり通されて。
名前も何も訊かれてない。
ふつう風邪ひいて病院いったとき
受付で保険証だして、紙っぺらに
症状だとかひととおりのメモ、させられんじゃん。
ねつ測りながら。
そういう、医者にとっての予備知識
なにひとつ、開陳してない。
名乗ってすら、ない。
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ただでさえ、病院ってこわくてきらいで。
あまつさえ、いままでムダに健康だったから
よっぽど熱が出たときとか
親知らずを抜くときぐらいしか
行ったことねえし。
それが、ノー情報ギブでもって
診察室内の待ち合いソファに座らされてる。
もう、なまじっかの絶叫マシンよか
恐怖度まっくす。
いや、絶叫マシン乗ったことねえし
こわくて乗れねえんだけどな。
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2、3分すっと、ザ・江戸ムスメが
「しようがねえなあ」って感じで
(いや、そんなことはないんだろうが)
保険証を取りに来たので、おとなしく渡す。
さらに2、3分すっと、先生に呼ばれる。
「どうしましたか?」
ぶっきらぼうだ。
「あ、荷物はそこの棚に置いて」
よく聴こえない。
「その、右にある棚っ」
ぶっきらぼうだ。
*
「金曜の朝、起きたときから右耳が聴こえなくて。。。」
蚊の鳴くような声で、告白をコクる。
「じゃ、まず左耳からみせて」
アタマを右に、左耳を先生に向ける。
底の抜けたすり鉢みたいのを耳に当て
耳の中を見てくる。
無言。
「じゃ、次は右耳」
従順に、逆を向く。
こえええ、どうなるんだ、おれ。
もういっそのこと。
「耳あかの溜まりすぎ! 耳そうじの仕方が悪いんだよっ!」
って、怒ってくれてもいい。
いや、むしろ怒ってくれ。
よしんば、なじってくれてもいい。
。。。
。。。
「パッと見たところ、異常は見あたらないので
聴力検査をしてみましょう」
「こちらへどうぞ」
左後ろ。
さっき座ってたところの正面。
人が1人座れる程度のスペースに導かれる。
っていうか、先生。
いきなりちょっとやさしくなった。
逆にこわいんだケド。。。
つづく。