キクチヒロシ ブログ

絶滅寸前の辺境クソブログ。妄想やあまのじゃく。じゃっかんのマラソン。

今度の日曜、ウチの親、組合の旅行でいないねん(金鳥少年シリーズその2)

金鳥のラジオCM「少年シリーズ」のつづき。
⇒その1私が蚊に刺されてないか明日も見てて。大沢くん

今回は4篇のうちの、2つめ。
音声はココで。


起こし(↓)。
その2 キンチョール

大「高山さん」
高「なに? 大沢くん」
大「高山さんのとこって野菜つくってるんやんなあ」
高「きゅうり」
大「お父さんもお母さんも、夏、大変やろな、蚊、多くて」
高「まあ、うん……」
大「今度おれ、手伝いにいこかな。キンチョールもって」
高「え?」
大「おれ、めっちゃうまいねん。キンチョールで蚊を落とすの」

大「もし迷惑やったら、アレなんやけど……」
高「いいよ」

大「え!?」
高「別にいいよ」
大「え!?」
高「今度の日曜、ウチの親、組合の旅行でいないねん」
大「うん」
高「畑やなくて、私の部屋の蚊、落としてみてよ。大沢くん」
大「えっ!!!」

――蚊にはキンチョールだよ、青少年!
使用上の注意をよく読んで、正しくお使いください。


もうね。
「その1」でかんぜんに
この世界に入っちゃってるから
きゅうり
すら、意味ありげ。

かつそれを最初に、
ぶっきらぼうに持ってくるの妙。



大沢くんはたぶん高山さんのことを
さほど気にしてなかったんだろう。
「その1」までは。

それが、こう。高山さんのこと。
急にすげえ気になりはじめちゃって。

(てんしょんが上がり過ぎて
寝室のクッションを高山さんに見立てて
初チューの猛特訓をしちゃったりなんかして)

あまつさえ「その1」では
押されっぱなしだったから。
おのれの存在感もちょっと見せなきゃな
って、おもう。

キンチョールもって
ナドト
堂々とエロ本を買うのが恥ずかしいから
大して欲しくもない
少年ジャンプと村上春樹の小説
の間に挟んでレジに持ってく的な、

じぶんに対してだか他人に対してだか
よくわかんないエクスキューズをともなって。



ところが、高山さんはさらに一歩先を行ってた。
今度の日曜、ウチの親、組合の旅行でいないねん
畑やなくて、私の部屋の蚊、落としてみてよ。大沢くん
山びこ打線かよってくらい、畳みかけてくる。

よしんばチューなんか、畑でもでけるのに。

部屋に来いって、いう。

「私の部屋の蚊」って
高度だかそうじゃないんだかすらわかんない
メタファーをもって。



実際の音声を聴くと
この「その2」にかぎらず
大沢くんの「えっ!?」が、バツグン。

声のかすれぐあい、間合い。

その晩、大沢くんは家族が寝静まったあと。
忍び足で洗面所に向かい。

洗面所のタンスから
お母さんのブラジャーを持ちだし。

忍び足で部屋に戻り、クッションに巻いて。
「ブラジャーをごくナチュラルに外す千本ノック」
をカマすにちがいない。



男子中学生のイマジネーションは、凶器だ。

川原に落ちてる何でもない石ころを
世界最大のダイヤモンドに磨き上げちゃう
ぐらいの、跳躍力を持つ。

実質、まだ何も起きていないのに
大沢くんは、ダイヤを磨きはじめてる。
着々と。

もし、軽い火遊びをしてるつもりなら
高山さんは、じぶんのしてる火遊びが
アメリカかよぐらいの山の大火事に
燃え広がる可能性をはらんでる。
ということを、わかってるんだろうか?

当の大沢くんにすら
すでに鎮火不能な、燃えさかる火焔。

「火焔」って燃えさかるもんだから
「燃えさかる火焔」っておかしいな。
は、措いても。



いや、高山さんはそこらへんも
計算ずくなのかもしれない。

あるいは、盲目的な何らかによって
「山の大火事も辞さねえ」
って肚を据えちゃってんのかもしれない。
火焔バッチコイ! と。

うーむ。
最初は「男子中学生の凶暴」
を強調するつもりだったのに。
書いてるうち。
ますます「高山さん、肚据えてんじゃねえか」
って気がしてくる。

チャンネーって、こわい。



。。。



「その2」の最後の高山さんのセリフも
二人称「大沢くん」で終わってんだよね。

すごいぞ、青少年!
すごいぞ、シナリオライター!


もんだいの「その3」につづくっ。