板橋cityマラソンでサブフォーを達成したってんで
大学の後輩、サクちゃんとウタゲをカマした。
走り出して4年目。
おととしの富士山マラソンから
フル4回目での快挙。
「オトナになってからのすべての出来事のなかで
いちばんうれしいことかもしれないす」
サクちゃんは、天下を獲った、ぐらいウッキウキしてた。
*
大学時代の仲間とは、毎年夏
ゆめのしまでリレーマラソンを走る。
今年もエントリーすれば、5年連続の出走。
「もうアレだね。今年からサクちゃん、
押しも押されもしないエース格だね」
「うす」
まんざらでもない、ご様子。
*
いちばんうれしい出来事
というだけのことはあって、サクちゃん
いつもにも増して、饒舌だった。
マラソンのことを、語る語る。
サクちゃん。
ショージキ、リレマラに出はじめたころは
「みんな出るからとりあえず参加するっす」
ってていどの感じだった。
じっさい、リレマラメンバーのなかでも
4、5番手ってニュアンス。
後年、フルマラソンを走るようになる。
とは、とても予想できなかった。
それだけに、今回の快挙はうれしかった。
あまつさえ、荒川のあのコンディションで
前半5キロ28分台、後半ずっと27分台
っていう、お見事なネガティブ。
*
日曜。板橋の当日。
13時すぎにサクちゃんからダイレクトメッセージが来た。
やっと4時間切れました
板橋は、9時スタート。
ってことはほんとうにゴール直後。
ウッキウキでメッセージをくれたんだろう。
「とりあえず、いちばん最初にキクチさんに伝えました」
なんて言われちゃった日にゃ、おれんなかの
「最かわいい後輩ランキングナンバーワン」
に名をつらねますわな。そりゃ。めきめき。
にもかかわらず。
メッセージをもらったオンタイムのおれは
てめえの結果に凹み度まっくすで
すぐには返事のひとつもよこさなかった。
ったく、ちいせえちいせえ。
ってのは、措く。
*
きのうのサクちゃんは
いつもにも増して、饒舌だった。
マラソンのことを、語る語る。
サクちゃん。
「おれ、小出監督の本を読んで、目覚めたんすよ!」
「やっぱただ、ジョギングしてるだけじゃ、速くなんねえんだなって」
おれ。
「お、『ぜえはあする』ってやつね!」
「おれもサクちゃんぐらいのころ、毎週、1周12キロのコースをTTしてたよ」
くそっ、エラッソーに。
上から目線だ。
でも、いいじゃねえか。
なにがいいのかよくわからんが、後輩だし。
といういきおいで
「すっかりマラソンに意識高い系になった後輩サクちゃん」
vs
「わけのわからない上から目線のおれさまちゃん」
という図式で、会話が進む。
*
(サ)「キクチさん、サブスリーっすよね。それってどんくらいのペースなんすか?」
(キ)「キロ4分15秒。いや、まだできてないんだけどねっ」
(サ)「うっひょー。それ、全力疾走っすよ。200mしかもたないっす」
(キ)「でもあれでしょ。サブフォーってキロ5分40秒。おととしの富士山マラソンは5時間じゃん。キロ7分以上。そんときにキロ5分40でフル走るとか、神じゃねえのっておもったでしょ」
(サ)「おもいましたおもいましたっ!」
(キ)「そういうのの、積み重ねっていうか輪廻みたいなもんだから」
*
(キ)「サクちゃん、次の目標はどんくらい?」
(サ)「サブ3.5って言いたいんですけど、キロ5分すよね。その壁はとてつもなく高すぎっす」
(キ)「まあ、3.5までなら素質とか関係なく、そんなに無理しないでもいけちゃうとおもうけどね」
(キ)「たしかにいきなりそれはキツイかもしんない。でもでもね、3時間45分、いや3時間50分なら、いますぐでもできるとおもうの」
(サ)「は、はあ。。。」
(キ)「だって、あの陽射しにあの風でラクショーのネガティブでサブフォーだぜ。3時間50分は5分30。もっと条件のいい、たとえばつくばとかかすみがうらとかなら、そんくらいで走れるチカラはすでにあるじゃん」
(キ)「だいたいキロ7分から5分40って、途方もないペースアップじゃん。ソレ、サクちゃんできたじゃん? たしかにキロ5、一気にキロ40秒縮めるのはキビシイかもしんないケド、キロ10秒、20秒なら、現実的な目標としてけっしてむつかしくないとおもうのねん」
*
(サ)「だとすると、やっぱ坂道ダッシュとかしたほうがいいんすかね」
(キ)「おれはね、って、てめえのこと言うのナンだけど、オネカンっていう坂道を全力で上って下るみたいなことしたら、一気に地力が上がった気がした。それはひつようかもね」
(サ)「おれ、やってみるっす! うっす!」
(キ)「そうこう言ってるうちに、いまのいきおいならすぐ、3.5って感じになるよ」
(サ)「そうすかね!」
(キ)「うん、できちゃえば、キロ5はわりとすぐに慣れられるはず」
(キ)「まずは適切に心肺を追い込むこと」
(キ)「あと、ゆっくりでもいいから一度にそれなりの距離を踏んどくこと」
(キ)「たとえば、土曜に10k全力、日曜に3時間LSDとかね」
(キ)「平日にいちんちぐらい、ちゃんと走っとくとか」
(サ)「やっぱそういうことっすよね。うすっ」
(キ)「でも、あれだよ。小出監督に心酔ったって、あの本に書いてあるメニューはオニ、だからね。『5kTTを2本』とか、そんなん、おれぜってームリだし」
*
。。。
*
あらためて書き起こしてみると。
おれは何なんだ。
ってのは、措いても。
実際のトークは、中身はこんなものでありこそすれ
上からってよりは、サクちゃんの燃える炎を
もっと燃えさからせてあげたい。
みたいな気持ちでもって、話させてもらった。
っていう、自己弁護をベンゴベンゴ
音が鳴る感じだ。
*
で、そうそう。
そういうことを喋りつつ
「おれ、わりとまっとうなこと言ってるよね」
って、どんどん口が滑らかになりながら
同時に、アタマのなかで考えてたこと。
「これ、ぜんぶ、おのれに置き換えてみ?」
うーむ。
うーむ。
*
「10kとか短いキョリをちゃんと追い込む」
「ゆっくりでもいいから、一度にそれなりの距離を踏んどく」
「平日に、いちんちぐらい、ちゃんと走っとく」
あまつさえ。
「あとキロ10秒とかってのは、なんとかなる」
ボへー! ゲホゲホゴホ。。。
ワインドアップで大きく振りかぶって。
地肩のつおさを誇示するような感じで
青空に向かって意気揚々と放り投げたブーメラン。
キレイな。
あまりにもキレイすぎる放物線を描いて
戻って来やがり。
おれの脳天に「サクッ」て、突き刺さりやがった。
*
そもそも、だ。
おれがものの見事に撃沈して
さいごのほう、泣きながら走ってた板橋で
目の前のサクちゃんは、冷静にレースを運び
バッチリネガティブをキメてんだぜ。
orz
オーツくん。
*
脳天に突き刺さったブーメランを引っこ抜き
アタマから血をピューピュー噴き出させながら
おもった。
「よおく、わかったよな」
「おまえこそ、それを、やるんだぜ」
う、う、うすっ!
恐怖におののののつつ
なんだか気を引き締める。
*
よおし、あと3週間、やってやろう!
いかんなく、気合いをこめた。
酩酊もてつだって、気持ちが大きくなってる。
でも、やってやるぜ!
気合いをこめすぎたのか、ちょっとねむくなってきた。
帰りの電車。
ちょっとだけ、仮眠。
↓
寝入っちまった。
↓
目覚めた。
↓
10駅先の町田。
↓
うおお、やっちまった。ピーナッツ。。。
去年のGWのデジャブ?
とりあえず。
飲んで、電車に乗ったら。
ぜっったいに、座っちゃダメだよ。