きょうは、村のかたがいっぱいレースに出てらっさった。
勝田とか大阪ハーフとか、新宿ハーフとか。
若潮っていうのも、あったのね。
とくに新宿ハーフは
おうちからそう遠くないので。
こっそり沿道をカマそうかな。
などと画策してたんだが。
あきらめた。
ランナーズアップデートで
みれるレースをIT的にストーキングしつつ。
*
小学校のマラソン大会だったんである。
11時10分、多摩川河川敷スタート。
おれとにょうぼうは。
10時ごろに学校へ行き。
体育館に展示されてる
工作やら書き初めやらをみつつ。
ムスメたちが多摩川にくり出す
のと時間を合わせていきゃいい。
っておもってた。
*
10時。
にょうぼうのケータイが鳴る。
着信は「狛江六小」。
にょうぼうがビビってデンワに出る。
すわ、ななちゃん。
意気込みすぎて、おなかいたくとか
なっちゃったのか?
って、横目にみてると。
おれのケータイが鳴る。
着信は「狛江六小」。
*
にょうぼうのケータイ。出ると。
「もしもし、ななちゃんだけど」
「え? え? ななちゃん!?」
「きょうね
マラソン大会が早めにスタートするんだって」
「ふーん、そうなの」
「そう!」
「みんな、ななちゃんみたいに
おうちにデンワしてんの?」
「いや、とくべつ」
「そうなの。がんばってね」
*
同時に鳴ったおれのケータイ。
ディスプレイをみると
着信は「狛江六小」。
すわ、ななちゃん。
意気込みすぎて、おなかいたくとか
なっちゃったのか?
おれもビビりながらおれのケータイに出る。
「もしもし、狛江六小の○○ですが」
うわ、担任のセンセイだ!
ビビる。
*
「ジツはマラソン大会、
スタートが30分早まっちゃいまして」
「へえ、そうなんすか。。。」
「それで。そういうことになったら、教室で
ななちゃんが涙目になってて。
『パパとママが来られない』って」
「それで連絡しなくちゃねって。。。」
*
うん。
おれは去年もそうだったように。
ムスメっこの学年の先頭集団を応援しつつ
伴走して、ムスメっこやら
おんなじ学年のトップの子とかを
叱咤激励しようとしてた。
カメラを片手に
箱根駅伝を気どって。
ムスメっこの横につけつつ
たまに追い上げてトップの子に追いつき
また、ムスメっこのとこまで下がったり。
しつつ。
*
「ああ、わざわざありがとうございます!」
おれはおれのケータイを切った。
*
ジョグをカマす
↓
シャワーを浴びる
↓
小学校で書き初めやらの展示を見る
↓
マラソン大会を見届ける
という当初の予定をくつがえし。
あわててマラソン大会のスタート地点へ向かう。
河川敷でムスメっこたちの集団と出会ったとき
ムスメっこはなんだか、心底安心したような
表情を浮かべてた。
*
。。。
*
こんなとこでアレだが。
どっかでいったような気がする
いまのムスメっことおんなじ
おれの小5のころのハナシ。
「そんなことしんねえよ」は、措く。
*
30年前。
小5のヒロシ少年。
「運動会でリレーの選手になるていど」
だったが。
「ずば抜けて脚が速いわけではない」
感じだった。
運動会的にクラスで3、4番目、ぐらい。
*
小5になると、マラソン大会が開かれる。
1500m。
その練習。
1周200mぐらいの校庭のトラックを
7周半ぐらい。
「なんでもいいから目立てばいい」
っていう、いまとは真逆な思考だった
ヒロシ少年。
スタートから超絶ダッシュをカマす。
目立ちたくて。
最初だけ目立ちさえすりゃ、いい。
いずれ、ほんとうに脚の速いやつらに
抜かされたとしても。
それはそれで、オイシイ。
「てめえ、最初だけダッシュ、カマしやがって」と。
*
スタートだけ、超絶ダッシュをカマす。
ぶっちぎりのトップ。
目立てた。
初恋の○ちゃんも、見てるはずだ。
おれ、かっけええええ!
目立つだけ目立ったから。
あとは、ガチで脚速いやつら、カマン!
抜かれるまで、できるだけ目立とうとした。
女子が整列してるあたり。
イエーイって、ハデにアピールしつつ。
*
が。待てど暮らせど。
誰も追いついてこず。
そのまま、ぶっちぎりでゴール。
おれのなかのなにかが、変わった。
「運動会の100mはともかく
マラソン大会ではトップをねらえる」
マラソン大会の本番は。
3番でゴール。
すっかり自信をつけて。
翌年はトップでゴール。
中途半端な自信をつけて
引越した先の中学で陸上部に入り
少なくとも学校のなかでは
圧倒的なトップを維持した。
*
そんなのは別に大したことじゃないんだが。
その。
小5のマラソン大会を端緒とした
「学校では圧倒的にトップ」
みたいなことは、
なんらか、じぶんの人生に影響した気がする。
*
ムスメっこはきょう。
3番でゴールした。
クラス対抗的なことがあるらしく。
それは順位合計であらそうらしく。
予行練習からそれなりに走れてたムスメっこは
クラスの稼ぎ頭として
おんなじクラスの男の子からも応援されてた。
それはいちめん、プレッシャーでもあるだろうが
いい張り合いでもあったことだろう。
3番でゴールしたムスメは
ちょっと悔しそうな顔をしてた。
それはおれは、とってもいいことだとおもった。
来年はもっとがんばれるかもしれない。
*
じぶんは小中学校時代
「マラソン大会では無敵」
というほんの一面をもって
ニガテなことに対しても
「おれはできるはず」
的なわけのわかんない自信を持つことができた。
とはいえ
ベンキョーができたわけでもないし
チャンネーには見向きもされなかったが
わけのわかんない自信は、持ちつづけられた。
ムスメっこがこれから
どういう人生をあゆむかは、わからない。
でも。
30年前におれがコンキョなく抱いてた。
そういうみたいなわけのわかんない自信
みたいなものを勝手に抱けてれば
カノジョの人生もなんらか
おもしろいことになるような気がする。
そういうのって、いいよな。
とおもった。
おもいましたとさ。