ってもう、一週間も前のハナシかよ。
職場を14時半に抜け。狛江に向かった。
小学校の個人面談。16時から。
いまの担任の先生は小4、小5と2年連続。
春の家庭訪問、秋の個人面談。
なぜかおれがコンプリート、してる。
にょうぼうを伴わず。ソロ活動で。
というのの、テンマツ。
*
「14時半に職場を抜け」といっても。
そんなのただの予定で。
そんな日にかぎってクソ忙しかったり
そろそろドロンするかなってころに、
厄介なモノが舞い込んできたりする。
けっか、職場を抜け出せたのは1445。
電車の乗り継ぎがパーフェクトにいっても
そうとうギリギリだ。
狛江駅についたのは1551。
学校まで徒歩15分はゆうにかかる。
あまつさえムスメの教室は4階。
小雨なのに、超絶ダッシュをカマし
ラストスパート的に階段を駆け登った。
ガチで、ギリギリ、セーフッ。
フーッ。
息切らし。
汗だくだくで。
雨にもほんのり濡れてる。
そんなんでチャンネーセンセーの前に
しゃあしゃあと現れる
41歳の秋な、パーパなーのだー。
って、おれは、誰だ?
*
面談では。
聞きたいことを3つ用意していた。
にょうぼうのリクエストが、1つ。
おれが気になってたことが、2つ。
とりあえずここからは
インタビュー形式でお届けする。
インタビュー形式と、いえば。
アーッ、ダーハダカおじさんのつづき。。。
いいから早く、お届けしやがれ。
わかってますって。
*
「まずですね。ななこちゃんの
スポーツテストと学力テストの結果です。
シャトルランがすばらしい!
いかにも負けず嫌いって感じですねっ!」
ムスメは特に運動神経がいいわけではない。
まあ、ザ・ごくふつうだ。
しかしどういうわけか。
シャトルランの結果だけ、やたらいい。
そういえば夏休み前。
スポーツテストをやったという日。
やたらシャトルランの話だけをしてたっけ。
*
ちなみに。
シャトルランってのは。
おれもよくわかんないので、帰宅してから調べてみた。
きょうびのスポーツテストでは。
持久走の代わりに、コレをやるらしい。
*
wikipediaセンセイを抜粋すっと、こういう(↓)。
○20m間隔で平行に引かれた2本の線の一方に立ち、合図音に合わせて他方の線へ向けて走り出し足で線をタッチする。
○次の合図音で反対方向へ向けて走り出し、スタートの線にタッチする。
○合図音に合わせてこの走行を繰り返す。
○合図音は開始当初は、折り返し時間の間隔が長いが、約1分ごとに短くなっていく。
○合図音についていけなくなり、2回連続で線にタッチできなくなったときを終了とし、最後にタッチできた回数が記録となる。
合図音とやら(↓)。
ちょっと、おもしろそうだ。
今度やってみよう。
*
戻る。
*
―前にご指摘くだすった、忘れもの多い件は?
「それが、5年生になってからしなくなったんです。
4年生のはじめのころは
“外見、ポケッとしてるケド、ジツはしっかりしてる”
という感じだったんですが。
5年生になってから、ちゃんとしてるんですよ。
ポケっとしてるって感じもなくなって」
うおお、ムスメ、やるう。
とか、小躍りしながら。
だが。
褒められっぱなしの場は。
親としてはこそばゆいだけで。
何の課題もめっかんない。
それじゃ、ムスメのためにもいくない。
カマかけ気味に。
おれが気になってたこと《その1》。
*
―おれはある意味、ちょっと不安なんです。
じぶんとくらべるのはおかしいんですケド。
おれは小5のころ、いかに親をだましてちょろまかすかとか考えてました。
たとえば、ソロバン塾を親にバレないようにいかにサボるかとか。
ムスメは宿題をちゃんとやります。
眠い目をこすって、遅くまでやったり。
うっかり寝ちゃったら早起きして取り組んでたりもします。
ピアノもスイミングも公文も、サボりません。
コレが親にバレてないようにサボってたら
それはそれでスゴイなあとおもうんですが。
ってのは、措いて。
なんていうか、ガッコではどうなんすか?
。。。
なんだこの、質問下手。
何を訊きたいのか、最後までいかないとわからない。
いや、最後までいっても、真意がわからねえなコレじゃ。
要するに。
「ムスメッコはひょっとして、
いいこちゃん的なものを演じてんじゃねえか?」
「よしんば、意識して演じてるんならいい。
でも、無意識で演じちゃってるとしたら
いつかどこかでムリがたたっちゃうはずだし。
そうなったら、それは全面的に
親がちゃんと子を見てないってことになるじゃん」
ぜんぜん要してねえ。
は、ともかく。
そういうこと。
*
「学校でも、授業中はマジメですね。
スキがないって感じです。
でもそれはけしてムリしてるとかじゃなくて
ななこちゃんの性格だとおもいますよ。
だって、休み時間は別人のように弾けてますし。
私にもいろいろお話ししてくれますもん」
*
や、やべえ。
おれのふんわりした質問の
言わんとしてるとこを汲んで
パーフェクトな回答、よこしなすった。
ガッコのセンセ、すげえ。
っていうか、子どもひとりひとりのこと
よくみてる。
ともあれ、単細胞なおれは。
ちょっとホッとした。
しかし、おれもにょうぼうも
スーパーアバウトにんげんなのに。
なんだその感じは?
*
調子に乗って。
というか、いいハナシの流れなので。
《にょうぼうのリクエスト》。
いぶちゃんってオトモダチがいる。
保育園のときからいっしょで。
学童でもずっといっしょ。
今年はクラスもおなじになった。
家でもよく、いぶちゃんのハナシをしてくれる。
ただ《ほかにオトモダチはいるのか?》
という。
*
―休み時間は弾けてるっておっしゃいましたが。
いぶちゃんのほかに、どんな子と仲良しなんすか?
「ソレ。ちょうど2学期がはじまったときに。
クラスのみんなに書いてもらったことあるんですよ」
(紙を取り出す。
質問項目は「仲のいいおともだち」。
ジャストコレズバリだ)
「○ちゃん、△ちゃん、◇ちゃん、☆ちゃん。。。
たしかに、みんなと仲よく遊んでますね」
そうなんだ。
コレ、夜ににょうぼうに報告したら
安心すんだろうなと、おもう。
さらに。
「アレじゃないですか。
女の子って、お年ごろになると。
グループをつくりはじめるじゃないですか。
5年生はみんな仲良しな学年なんですが。
夏過ぎから、このクラスでもとうとう。
女の子のグループができはじめました。
それ自体は成長の過程ですし。
私も女性だし、経験者として
めんどくさいことがあるのは確かです。
『あ、とうとう来たか』
とおもう反面、
みんな順調に成長してるんだなって
ホッとしたのもたしかです」
ほほう。
たしかにかに。
じぶんが思春期のときもそうだった。
ような。気がする。
*
「でもその面では私は。
ななこちゃんにすごく助けられてるんです。
誰とでもふつうに接してる。
特定のグループには入ってないみたいなんですね。
でいて、孤立してるんじゃなくて。
グループ間のブリッジというか
みんなと分け隔てなく接して、
つないでくれてるんですよ」
ははーん、たしかに。
おれも徒党を組むのはニガテだし。
まあ、それはただのハブとか
ボッチとかっていう方向性だが。
にょうぼうも女子同士のグループには
属さないタイプ。
学生時代から、そういうのとは
あえて距離をとるような感じだった。
それにしても、その。
「ブリッジ」的な感じってのは、すげえな。
*
というのをオモテには出さず。
内心、ほくそ笑みつつ。
―たしかに。両親ともあんまりつるむタイプじゃないですからね。
気取る。
クールぶる。
「ああ、やっぱりそうなんですねっ」
*
やべえ、ムスメッコいい子じゃねえか。
褒められっぱなしの場は。ナド、すでに吹き飛んでる。
親としてはこそばゆいだけで。
何の課題もめっかんない。
それじゃ、ムスメのためにもいくない。
課題、いらねえ。
褒めちぎられつづけてえ。
*
ただ、アレだ。
こういうのって。
古畑任三郎とおんなじやつ、だ。
ほっとした去り際に
「ひとつだけ、いいですかあ」
って、マイナス面のキモをグワシするパターン。
前に「ちょっと忘れ物が。。。」
って言われたときも、
そんなセットプレーからの手痛い失点だった。
*
どうでもいいハナシを振りつつ。
面談をシメるようなフェードアウトを図る。
も、「あえてひとつ挙げるとすると」
出てくる気配、ねえ。
じゃあ、おれが気になってたこと《その2》
投下しちゃおうか。
*
―あのう。今年はマラソン大会やるんですか?
―4年生のとき。そこそこがんばってたじゃないすか。
シャトルランもそうですケド。
自信をつけると調子に乗ってぐんぐんがんばる子なので。
もし今年もやるのであれば。
練習させて、もっと上位を狙わせてみようかと。。。
年間予定表を見ますれば。
当初。11月だかにおこなわれる予定だった。
でも、やる様子はない。
どうなるんだろう? と。
「やりますよ! 去年とおなじコースで。
今年は、最初の予定からは変更になりましたが。
1月の終わりにやることが決まりました」
おお、そうすか!
じゃ、そろそろ、ムスメッコを鍛えだすかな。
「そうそう。
ななこちゃんがよくお話ししてくれるんですよ。
パパ、すごく速いんだよって。
お父さん、マラソン何回も走ってるんですよね?
しかも、お母さんも走ってるとか。
ステキなご家族ですねっ」
チャンネーが、おれさまちゃんに、言った。
「すごく速い」と。
面と向かって「ス・テ・キ」と。
家族を指してるとかは、知らんっ。
大コーフン。
*
「たしかに。
ななこちゃん、細いですし。
お父さんもお母さんも、すごいスリムですもんね。
遺伝、ですよね。ああ、うらやましい」
―じゃあ、センセ、今度おれさまちゃんとジョグ・トゥギャザーしてみる?
淡いココロ、No!
ここは学校だ!
目の前のチャンネーは、
ムスメッコの担任のセンセイだ!
飲み込む。
―だって、アレでしょ。
コレでむすめがふくよかだったら。
おれは隣の家の恰幅のいいオジサンを疑う。
にょうぼうに疑心暗鬼になる。
疑心暗鬼に、おれは、なるっ。
的な、大問題に発展しかねないでしょ。
シモネタ、No!
ここは学校だし!
子どもの面談には複雑すぎるネタだし!
飲み込む。
*
―ハッハッハ。
なんかこう。
架空の41歳のジェントルマンがするような。
オトナの乾いた笑いを残し。
おれは教室をあとにしたんであった。