初めてのランステだったんで
すっかり迷っちゃいました~」
ピンクのTシャツ、一糸のピンTをまとった
全裸ドライヤーボッチが現れた。
ありゃあ、ピンTボッチなんて、なまやさしいもんじゃねえ。
ゼンラぼっちだ。
*
あれっ?
さっき、走り出してったひとは?
影武者?
影ぼっち?
影全裸?
*
2人で、もとい
独りと独りで走ることは
アタマのかたすみで想定していた。
ちょっとだけ。
それにそなえて、アレを用意していた。
*
ともあれ
おれにはひとつ、気がかりなことがあった。
ゼンラぼっちは前日
こんなことをぬかしていた。
明日は30キロ走りたいなぁー。明確な目的意識。
ベクトルがマラソンに向かってる
明確で健全な、目的意識。
*
前回のぼっち練inJIMBA。
あっ、なんか
「ゲレンデでシュプールinNAEBA」
みたいなシャレオツにしようとしたケド
様相がぜんぜん違うな。
陣馬山のぼっちトレイル。
おれの目的は、
「後世のゼンラぼっち、にお会いすること」
ただ一点だった。
あとはみんなになんとなく合わせて
ナアナアに山上って下りゃいいんでしょ。
だった。
ところが、上りぼっちってのがいた。
急登をキュートにピャーって上ってった。
遅れて坂の頂点にたどり着くと
「きょうの目的は
上り坂をちゃんと追い込むことだったんす」
度肝を抜かれるとともに
こういうひとがマラソン速くなるんだろうなあ
とおもった。
*
ネタバレになっちゃうんだケド
まあいいや。
このあと、東のムキムキぼっちってのが
登場しまーす。
なんだが、東ムキぼっち。
「きょうはキロ5の30kmをやりに来まして」
なんていう。
それでピャーって駆けってった。
目的意識。
度肝を抜かれるとともに
こういうひとがマラソン速くなるんだろうなあ
とおもった。
そして、今回のゼンラぼっち。
*
ちなみに、おれの今回の目的は
「とりあえず走っとくこと」。
9月も半ばになったというのに
月間走行距離は驚がくの3.5km。
しかもウタゲからの帰り道、酔いどれゆるゆるジョグだ。
それからすら、一週間のブランク。
ボッチ練をきっかけにちゃんと走ろう。
きょうはきっかけになりさえすりゃ、いい。
走るのイヤんなっちゃわない程度に
ユルユル行こう。と。
*
「30キロ走りたいなぁー。」
おれのタスクは
それに巻き込まれないようにする。
一点だった。
とりあえずけん制球を投げてみる。
モチ、独り言で。
「どんくらいのペースで行きます?
ゼンラボッチさんに合わせますよ」
おれの独り言は中2、いや宙に浮いたまま
なんとなく、走り出す。
*
わりと和気あいあいと、走り出す。
「いやあ、ガチボッチになったかもって、アセりましたよ~」
「後輩は、そういう事情ならおれは行くわけにはいかないっすよねえって」
独り言をとばしあう。
ピコッ。
1km経過をガーミンヌが知らせる。
6分ぐらい。
よーし、これならなんとかイケそうだ。
おれは心のなかで拳を握りしめた。
「なかなかいいペースっすよ!
このまま行きましょう。こ・の・ま・ま」
もっとも聞いてもらいたい
独り言を、漏らす。
*
こんなこともあった。
そのまま、独り言に花が咲き
2周目の後半。
桜田門をくぐったあたりで。
「おれ、持ちタイムだとだいたいいつもCゾーンとかからスタートなんすケド。。。」
ゼンラぼっちはおれの独り言を傍受した。
「えっ、陸連登録してないんすか?」
おれはゼンラぼっちの独り言を傍受した。
えっ? えっ?
おれはパニクった。
「村びとって、陸連登録がデフォルトなの?」
*
ブログ村のマラソンカテゴリーのひとたち。
たしかに、変態さんばっかりだ。
福岡とか別大をターゲットにする異次元のひともいる。
でも、それは一握りのはず。
月に300kmとか400kmとか
走ってる、おれからみれば変態さんは
アタリマエのようにいるものの
「ゆるく楽しく走ってまーす」
みたいなひともいっぱいいる。
全裸で髪を乾かすばかりか
それを自撮りして、ブログにアップするひともいる。
ひょっとして、ああいうひとも
そういうひとも、
おれの横で独り言をとばしてるひとも
みーんな、陸連登録?
*
まあオチは
「いやあ、キクチさんは当然
陸連登録してるもんだとおもって」
って。
書き出すとそうでもないんだが。
心底、ビビりましたとさ。
*
こんなこともあった。
「きのうのエントリー、
あれはキメのほう、すか?
テキトーのほう、すか?」
独り言を、傍受した。
「あ、あれは、い、いちおう
キ、キメキメのつもりで。。。」
独り言、傍受された。
やべえ、ゼンラぼっち、
ものごとの本質とおれの恥部を
えぐってきやがる。
*
まずいな。
このエントリーとあと1回ぐらいで
ぼっち練at皇居
シメようとおもったんだケド。
ビッグサプライズ、登場してねえ。
駆け引きも、まだまだ終わってねえ。
じゃっかん、あわててみる。
上でちょっと伏線を張った「アレ」は
このエントリーでは藪の中方面で。
*
2周目が終わるころ
「給水、いいすか?」
とゼンラぼっちが独り言。
「いいっすよ」
と、おれライオン独り言。
ゼンラぼっち。
清麻呂の足下にある、
ペットボトルを取りに向かう。
あと、4周もあんのかあ。
まあ、ペースもそこそこだし
いろいろ話ができて
もとい、いろいろ独り言をとばせて
楽しいし、いいかな。
ぼやっと待ってると、
「あ、どうも~、おつかれさまです!」
とゼンラぼっち。
男性に挨拶してる。
*
ひょっとして、噂の後輩さん?
それにしては、ゼンラぼっち敬語?
ゼンラぼっちが挨拶してるひとは
筋肉でシャツがはちきれんばかりだった。
パッツンパッツンボッチ?
ピッチピチぼっち?
「東のムキムキぼっちさんです。
こちらはキクチさんです」
ゼンラボッチが間に立ち、
ムキムキぼっちにおれを紹介し
おれにムキムキぼっちを紹介してくれた。
「いやあ、時間に来たら誰もいなくて。
そのうち誰か見つかるかなあって
ピンクのシャツ見つけて追いかけまくりましたよ。
それでも見つからなくて
でもとりあえず走ってたら、
ゼンラぼっちさんのピンTが見えたので、
よかったー、と。
おれ、やっと、30kmのはんぶん終わりましたよー」
おっとっと、周回遅れ。
*
ムキムキぼっち。
これがまいんちのように
オニのようなペースで
バーチーのビーチーを走ってるひとか!
ブログは以前から拝見していた。
プロフィ写真の後ろ姿。
おれの義弟はずっとアメフトをやってた。
身内を、こんなふうに言うのヘンだけど
大学時代はスター選手としてならしてた。
にょうぼうの実家に帰ると
よく、ニクタイを誇示するかのように
上半身ダーハダカで、家の中をウロウロしてる。
その後ろ姿がムキムキぼっちさんと
勝手にダブっていた。
なので、義弟のようなキレナガ眼を
想像してたんだが。
生ムキムキぼっちさんは
後ろからアタマをぶっ叩いたら
こぼれ落ちそうなくらい、
ジョグしててヤブ蚊の大群に遭遇したら
おれの5兆倍ぐらいヤブ蚊が入って
うひょひょひょ、やーめーろーよー
ってなるぐらい、
まんまるなおめめをした、
さわやかハンサムさんだった。
*
初期のドラクエ。
毒の沼地でラーの鏡をあてたら
新しい仲間がみつかって、ウヒョー!
そんな感じで、3人で走り出した。
*
なんだが、ムキムキぼっち。
ミョーにペースが速い。
チラチラ後ろをふりかえり
こっちのぼっち2人、いや
独りのぼっちと独りのぼっちを
気にしてくれてるようだが
徐々に間隔が空いてく。
最初はいままでよりちょっとペースを上げ
ムキムキについてこうとした
ゼンラと、おれ。
でも、これはマズイ!
速すぎる。キロ5ぐらいだ。
*
(ここはガチで言葉を交わすこともなく。
って、いままでがやらせみたいじゃないすか)
まさしく阿吽の呼吸で
元のキロ6ぐらいのペースに戻し、
安定の変わらぬ、並走。
それを確認して
ますますペースアップするムキムキぼっち。
どんどん遠ざかるムキムキぼっち。
「見えなくなっちゃいましたね」
ある意味、安堵の息を漏らす、ゼンラぼっち。
「ほんと、見えなくなっちゃいましたね」
ある意味、安堵の息を漏らす、おれ。
*
こうして3人のぼっち練。
いや、独りと独りと独りのぼっち練。
後半に突入したんであった。
つづく。