じぶんと異なる価値観に出くわしたときにってハナシ。
3連休。草野球チームの合宿で長野へ。
ほぼ新潟との県境。ナウマン象で有名な野尻湖畔に泊まった。
台風が日本を直撃したため、野球はけっきょく1日目しかできなかった。
おれが「中学時代、試合のときはほぼ全部雨でおなじみの」
なことは、まだチームメイトにはナイショだ。
ということはどうでもいいので、措く。
*
合宿の2日目。
そんなわけで野球をやらずに、長野でいちばん有名な寺に詣でた。
牛に引かれてく、あすこ。
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駅から参道を歩き、阿吽の像なんかがあるあたりまでは
「おお、すげえ」
なんて言いながら調子よく歩いてたんだが。
途中でミョーに引いて
テンションががた落ちとなった。
*
テンションがた落ち事件は、本堂にて。
本堂に入ると、真ん中ぐらいまではフリーパスだが、
さらに中に入ってお参りをするには、入場料がかかるらしい。
おれは有料なところには入らずに、
入口にある賽銭箱に1億万円硬貨1枚を投げ入れて
お参りしていた。
すると、坊主だか職員だかが
シラっとこんなようなことを言いながら歩いていく。
「このお寺は(信仰にかかわらず)すべての神仏を受け入れます。
ぜひここではなく、中に入って拝みましょう」
*
うん。あからさま過ぎる商魂。
ふつうそういうのって、言わずに言うよね。
もしくはゼニ取るんなら、ハナっから取るよね。
なにその、安いフーゾクみたいなやり口。
牛に引かれずに、商魂に引いちゃった。
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ひょっとしておれ。
うまいこと言ったとおもってねえ?
*
気を取り直して寺のほかの見世物に向かって歩いてると、
チームメイトの中に1人、あきらかにテンションがた落ちな人がいる。
話しかけると、
「何かいまの、品がなさすぎません?」と。
「燃える商魂。ですな」と。
*
厄払いコーナーに着く。
彼はおれの1コ上。
つまり、今年が前厄だ。
「厄払いしました?」と訊くと、
「してません」と。
「そんなの関係ねえ」と。
何をヘンクツ言ってんだろうとおもった。
*
彼は、「神仏のたぐいを一切信じてない」という。
おれも彼とおなじく神仏のたぐいを信じてない派だが、
正月は初詣に行き、
喜んでムスメの七五三をやり、
クリスマスにはケーキを買い、
チャンネーと神社に行ったらおみくじ引いてキャッキャキャッキャ言い、
チャンネーにフラれたらヤケ酒を飲む。
来年はたぶん、厄除けだか厄払いだかしに行く。
という、言ってみればごく一般的な日本人。
じっさい多数派なんだろう、おれみたいのが。
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ヤケ酒のくだりはシカトしてくれ。頼む!
*
よくよく訊いてみると、彼は
「子どものころ、七五三もやってないですもん」と言う。
おっと。
「神仏のたぐいを信じてない」的には
そっちのがスジが一本とおってる。
こりゃホンモノだ。
ミョーにナットクした。
*
やっと本題。
*
世の中には
彼のような、スジがとおった「一切信じてない」も
おれのような、じぶんに都合よく「一切信じてない」も
はたまた「がっつり信じてる」もいる。
神仏にかぎらず、
じぶんと違う考えを否定したり攻撃したりせず、
かといってタブーのように避けるでもなく、
「じぶんと異なる価値観の人も当然いる」ということだけを認識しておく。
このスタンスを続けるって、なんかカッコイイ。
彼の「七五三もやってない」から妄想を広げて、
うすぼんやりとそんなことを考えてしまった。
*
でも。
このスタンスを続けるって、ムズカしい。
とかく、
「○○教を信じないと地獄に落ちる」とか、
「犬が好きじゃないなんて、シンジラレナーイ」とか、
「喫煙者は人間に非ず」とか。
やりたがる。ヤリタガール。
ふだんは温厚ないい人なのに、
どういうわけか、いきなり猛然とケンカを売りはじめる。
あるいは、見たこともないようなイヤーな顔をする。
なんて場面に出くわす。
あれ、何なんだろう。
*
ツレアイの嫌いなところは
いくらでも言えるしじっさい言ってるくせに、
好きなところは
よく考えないと見つけられないし、まず言わない。
みたいなことがある。
あれ、何なんだろう。
もともとホレテハレテ、結婚したのに。
いやこれ、あくまでただの一般論として。
*
ニンゲンだもの、
好き嫌いや合う合わないは、ある。
じぶんと相容れないものを攻撃したい、やっつけたい
という気持ちがあっても、仕方ない。
それを
みんな、やめようぜ。やめりゃ、世界が平和になるぜ。
なんて言う気はさらさらない。
じぶんと違う価値観に出くわしたとき、
否定したり攻撃するでもなく、
タブーのように話題を避けるでもない。
ただ、いろんな価値観の人がいると認識だけしておく。
それってなんか、カッコよくね。
と。