キクチヒロシ ブログ

絶滅寸前の辺境クソブログ。妄想やあまのじゃく。じゃっかんのマラソン。

回収してねえ伏線の宝庫じゃん



キホン、ノンポリなおれだが、
最近の唯一の“思想”は、編集原理主義。

自分がこんな仕事をしてるから、というわけではなく。



いや、
人間の行動ってけっきょく、
「集めて、編んで、いい感じにする」
で成り立ってるじゃないすか。

食いものの「料理」「調理」だって、
スポーツや戦(いくさ)の「フォーメーション」だって、
勉強法だってビジネススキルにかんすることだって、
いい自動車の部品をつくるだって、
親戚間のいざこざの取りまとめるだって、
毎朝、数種類の新聞をチェックしておくだって、ぜーんぶ、

「編集」じゃないすか。
言いまわしは違えど。



さて、
上の流れとぜんぜん関係ないんだが、
おととし再開された『キン肉マン』のことを、いまさら。

きょう新刊が発売されたし、ということもあり。



表題は、いまやってる連載をひらめいた瞬間、
たぶん、担当編集者が放ったであろうひと言。

あくまでも、たぶん。

こう、なんかいい企画ねえかなあと
むかしのキン肉マンをパラパラ読み直したりなんかしてるうち、
ふと「あ、コレ、回収してねえ伏線の宝庫じゃん」って
気づいちゃった。とか。

あくまでもたぶん、なんであるが。



というわけで、
おととしの末ぐらいからウェブで連載されている
キン肉マンが、異常におもしろい。
とりわけ、ジャンプ全盛期に小学生時代を過ごした身としては。

カンタンにアウトラインをフォローしておくと。
○時期設定は、むかしの連載終了後(王位争奪編)わりとすぐあとから。
○一部、新規キャラも登場するがキホン、既存キャラで魅せる。

ん? なんかいやに事務的だな。フォローになってないぞ。
客観的になろうとして、こりゃ大失敗。



仕切り直す。

ジャンプ全盛期に小学生で、リアルタイムで興奮していた身として、
いまのキン肉マンを異常におもしろいとおもえるいちばんのポイントは、

ちゃんと続編してる
からだとおもう。

登場するキャラ含め
あのころのキン肉マンが持ってた空気感や肌触りが
ちゃんと引き継がれてるんである。

「あ、この雰囲気!」って
なんだか懐かしい感じになるんである。



異常におもしろいとおもえる理由は、その上で、
○超人1人ひとりを深く描いているから。
○伏線の回収の仕方まで、いかにもゆでたまご的な空気感と肌触りだから。
だとおもう。

(にしても、きょうのおれの言いまわし、
なんでこうわかりづらいんだろう。。。)



超人1人ひとりの個性を深く描けているのは、
30年ほどにわたるブランクがうまく作用してる。

ブランクが結果的に
「読者のなかで、キャラに対するイメージをほどよく醸成する装置」
となった。

30年近く経ってるからこそ、
キン肉マンならキン肉マンを、ロビンマスクならロビンマスクを
内面も含め、より深く描きやすくなってる。

とおもう。



たとえばブロッケンJr。

この42巻でブロッケンJrは、
相手に「万年未完の大器」「善戦超人」などと揶揄される。
そして、いろいろ葛藤しながらも、一皮むけた戦いをする。

この
「あー、そういえば未完の大器、善戦って
ポジションだったよね」
とおもわせる(おもい出させる)、懐かしい感じ。

加えて、ブロッケンJrがいろいろと葛藤しつつ
乗り越えてく、この感じ。



その途上で、
ラーメンマンの内面もたんねんに描かれる。
(ラーメンマンはブロッケンJrにとって、
オヤジであるブロッケンマンを殺した仇でもあり、
はるかに実力が上の師匠みたいな立場でもある)

「これ、(舞台設定がまったく違うスピンオフである)
『闘将 拉麺男』のほうのエピソードじゃね?」

みたいなのもあるが、
ゆでたまごにそんなツッコミをするのは、
野暮ってもんなんだろう。



あるいは、アトランティスとか魔雲天。
悪魔超人のなかでさえ影がうすかった彼らの
戦い方、生きざまがていねいに描かれてたりなんかする。

かつておれは、
『キン肉マンII世』で、空気感や肌触りの
『初代』とのあまりの違いにガッカリした。

今回のも、もうおなじようにガッカリしたくないから
あえて触れないようにしていた。
それが、一気に引き込まれちゃったのが、
アトランティスの戦いぶりから、
だった。

もう、引き込まれちゃって引き込まれちゃって
いても立ってもいられなくなった。



伏線の回収。
といえば、アトランティスのコレ(↓)。
【速報】「キン肉マン」作者 ゆでたまごが27年前の伏線の回収に成功

半分ギャグみたいな、
この「だってゆでたまごなんだもん」な感じもたまらなさの1つなんだよね。

アトランティスにとってのロビンも、魔雲天にとってのテリーも
「かつてギリギリの命のやり取りをした、かけがえのない相手」
として存在している。
こんな明らかにご都合主義な後付設定も、たまらないんだよね。

「だよね」などと。
だれに問いかけてんのかは、知らん。



こうやって、舞台装置を何ひとつ壊すことなく、
伏線をバリバリ回収していく
というのが、いまのキン肉マンの展開の軸。

正直、
伏線に仕立てて、回収するに足るエピソードを掘り起こして、
各超人をバックグラウンド含めより深く描けていさえすれば、
ストーリーなんか、どうでもいい。

ぐらい。