横浜×PLにかんする本をはじめて読んだ。
08年に単行本が出て、文庫化時にさらに近況を加筆。
試合から10年たった、当時の選手たちの「あの試合」観と
その後の人生の歩みを紹介してる本。
というていで、
両チームのメンバーの言葉を借りて
松坂大輔のずば抜け度とひとがらを浮き彫りにした本
だとおれはおもう。
松坂が現在、メジャーの舞台で苦境に立っているとか、どうでもいい。
この本を読んで、
いままで「スゴいピッチャー」という目だけでしか観ていなかった松坂大輔を
好きになった。
*
表題はその松坂大輔が、PLの元エース・上重聡にかけた言葉。
しかし合格後、上重は人づてに「松坂が怒っている」と聞いた。アナウンサー試験の受験を松坂に相談していなかったのである。連絡をとった。
「おまえ、なに野球あきらめてんだよ。野球を粗末にするな」
という松坂の声が返ってきた。初めて二人だけで食事に行った。
「そこで体も心も限界に来ていることを説明してわかってもらいました。松坂からは『野球部は最後まで一生懸命やってくれ』と約束させられました」
その年、松坂は最多勝、最多奪三振、沢村賞など投手部門のビッグタイトルを手中にし、いよいよ球界を代表する投手になろうとしていた時期であった。そんな時期に高校時代からの友人の進路を心配し、街にのこのこ一人で出てくる。そこに松坂の飾らない気質、人の良さが表れている。
しかし、できすぎた友人とは、ときとして人を不幸にする。上重も松坂と出会ってしまった不幸があるのではないか。
松坂大輔のひとがらは、この一節に集約されてるといえるし、
いろいろな人に対して万事こんな調子で接している。
言葉は粗野なんだが、ものすごく温かい。
表題の「野球を粗末にするな」なんて、
そんな言葉を松坂から聞けただけでも
この本を読んだ甲斐があった
ほんとうにそうおもう。
*
まあ、引用の末尾にもあるように
松坂以外の選手たちにとっては、
松坂大輔という怪物に出逢ってしまったこと、
この延長17回の伝説的な死闘を経験してしまったことが、
その後の人生の歩みかたにビミョーな影を落としちゃったりもする。
アナウンサーに転身(?)した上重しかり、
ノーヒットに終わったPLの4番古畑しかり、
延長17回2死ランナーなしからエラーしたPLのショート本橋しかり、
その直後に決勝ホームランを打った常磐しかり、
横浜で唯一2年生レギュラーだった松本勉しかり、
「松坂後」に横浜の背番号1を背負った斉藤、袴塚しかり。。。
それもこれも含め、
10年間という間(ま)を置いたことで
さまざまな想いも一巡して、
挫折や忸怩がいい感じで熟れて
ふり返って語れる程度に昇華されている。
ここらへんがつくり手の妙。
*
ちなみに。
高校野球関連の本は本屋で見つけたらほとんど買うか、
買わないまでも軽く目をとおすぐらいはしている。
にもかかわらず
横浜×PLに関する文献は避けつづけてきた。
なんつうか、13年前に(TVでだけど)自分の目で見、感じたことだけが
おれにとってリアルで、
他者の視点なり解釈なりでそれに上書きされるのが
イヤだったんである。
24歳から37歳まで、おれことオッサンのカラダから
そんな青くさいアマノジャク汁が出てて、
いまもなお出つづけてるんである。
「まずーい、もういっぱいいっぱい」
なんである。。。
この本の第1弾であるこれ(↓)だって、
ずいぶん前に買ったまま、まだ読んでない。

著者:アサヒグラフ特別取材班
販売元:朝日新聞社
(2000-07)
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