キクチヒロシ ブログ

絶滅寸前の辺境クソブログ。妄想やあまのじゃく。じゃっかんのマラソン。

「好きになるのに理由はあるのでしょうか」といって微笑んだ。


4章の途中まで来た。

それなりに「まあおもしろい」んだが、まだ「すげえおもしろい」には至っていない。
とりあえず早く江戸川乱歩なりに出遭わないかなあ、
などとおもいつつ、読み進めている。

ちなみに、この本にかんするほかのエントリー。
太田光の天才ぶりが発揮されとる(2010/10/22)
しかし、考える場合はどうだ。 (2010/11/02)



きょうの表題は、筆者の力量がすげえなあとおもったところ。



卿子(けいこ)というのは、星新一の学生時代の「元カノ」。
一時、親に紹介するぐらいまで盛り上がりをみせたものの、いろいろあって、結局結ばれることはなかった。
と、いちおう補足のうえ、筆者が後日、卿子に取材したときのもようを、以下引用。

卿子にとって、親一は初恋の男性だったのだろうか。
「そうかもしれませんね」
卿子は頷いた。

「初恋だったのでしょう。お互い好きになって、ダンスはいつもあの方と踊っていました。ドライではないけど、ウェットでもない。今の人たちにはわからないでしょうけど、清い交際でした。とにかく地味で暗い時代でしたから、みんなで集まってわいわいいって、本当に楽しかったですね」

卿子は親一のどんなところに引かれたのだろう。われながら愚問と思いつつ訊ねたところ、
「好きになるのに理由はあるのでしょうか」
といって微笑んだ。(表記はママ)

時代背景、卿子の想い、過去を懐かしむさま、聡明さ。。。
ラスト3行ですべていい尽している。
これより記述が少ないとなんだかわからないし、
多いと筆者の余計な主観を入れざるをえず、情景描写としての純度が落ちる。

ただ、これで描写を終えるって、相当な勇気が要る作業。
このブログでも、力説したいことほど文章が長くなっちゃったりする。
いつもこりゃイカンとおもいつつ、なんだが、
これがまた、なかなかできることではない。