キクチヒロシ ブログ

絶滅寸前の辺境クソブログ。妄想やあまのじゃく。じゃっかんのマラソン。

早起きは3文の損得で行って来い

明日の記憶 (光文社文庫)明日の記憶 (光文社文庫)
著者:荻原 浩
販売元:光文社
発売日:2007-11-08
おすすめ度:4.5
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母親が屋久島に行くとか、で
羽田直行バスのある二子玉川駅まで送っていった。
バスは6時発。
家から駅までは、朝で道が空いてるし、余裕をみて15分。
念には念を入れて5時半に家を出る。

というのも、3日ぐらい前に母親が
「不安だから、5時半にはバス乗り場に着きたい」
に端を発したネゴの末。

不安だから早めに行くのは、単独行動なら別に構わないが、
ただでさえ「平日」「早朝」に起きなきゃいけないのに、
「超早朝」にされてはたまらんからだ。

中高年向けの旅行パック。
くわしくは知らんが、
旅行会社だってオバチャンのパニクりを見越して
余裕を持たせた時間設定をしてあるはずだ。

旅程表を見るだに、
飛行機は8時09分発、集合は7時15分とある。
これで少なく見積もっても30分は余裕をみている。
さらに1時間前倒しをかぶせようとしている母。

これも詳しくは知らんが、
広告制作の現場みたいなものをおもい浮かべてしまった。

孫請けの零細制作会社が、1万円の見積もりを出す。

それを受け取ったほぼ何もしない下請けの制作会社が、
3万円の見積もりを出して2万円ハネる。

それを受け取った名前だけの代理店は、
クライアントにガツンと100万円の見積もりを出す。

みたいな。
さておき。

せっかくした早起き。
ふだんは夜にしかやらないジョギングと筋トレをしておく。
おお。3文の得ってホントだ。

夜、そのぶんの時間が浮くし、
もし体がウズウズしたら、夜ももう1セットやりゃいい。

これでもまだ娘が起き出すまで30分ある。
こりゃ、読書だな。
冒頭にある本を読む。この本も3、4回目。

主人公の広告マンが若年性アルツハイマーになる話で、
総じてあまりハッピーな気分にはなれないが、
なんか読み返したくなっちったんである。

何度も読み返すだけあって、すごくいい小説なんだけど、
いかんせん1日のスタートたる、朝には向いていなかった。

得した3文は、オレのなかでうまく活かされないまま
ブルーな3文へと変わっていった。

人生、行って来いだ。
あれもこれもと、あんまよくばってはいけないな。

。。。

以下、ちょいネタバレだが、
その30分で読んだのは、
主人公が心の拠りどころにしていた陶芸教室で、
小銭を搾取されていたことに気づいちまったくだり。

若年性アルツハイマーと診断され、
会社でもだんだんと閑職に追われていく主人公。
そんななか、通っていた陶芸教室は、
先生の人柄もよかったので通い続けた。
先生のことを信頼し、病気のことも明かした。

陶芸教室では、形を整えた粘土を焼くとき、
「焼成代」として1つ600円をとる。

主人公は、焼成代を払った記憶がなく、
「まだですよね?」
と先生に聞く。
お金に執着してなさそうな先生は、すまなそうに
「ええ、実は……」
と言う。

ある日、
同じやりとりで「今日は払える」と
1万円札を出す主人公。

先生がおつりを取りに行っている間、
ふとサイフに挟んである備忘メモをみると
かなり前に代金は払ってあると書いてある。

先生に対して
怒りというより、悲しみを覚えた主人公は、
釣りを受け取らず、陶芸教室をあとにする。
「もう二度とここにはこないだろう」とおもいながら。

これ、朝からはキツいよなあ、やっぱし。